写真 重い生理痛や子宮内膜症など女性特有の不調や病気の改善に役立つ低用量ピル。最近は種類も増えており、産婦人科医の宋美玄さん(49)は不調改善に向けた活用を勧める。宋さんは「保険適用されるピルを使うという選択肢があることも知り、女性が自身の体や性の在り方を選べる社会になってほしい」と訴える。
ピルは継続服用によって女性ホルモン量を安定させ、排卵を抑制する。避妊以外にも、生理痛の軽減や経血量減が期待できる。生理前の精神的な不調やにきび、不妊につながる子宮内膜症の症状も軽くする上、子宮体がんや卵巣がんにかかるリスクも減らせるとされる。
ピルを巡っては、避妊を目的とした処方は自由診療扱いとなるため、保険適用外のピルが出される。一方、医師が重い生理痛や子宮内膜症といった病気の治療が必要と判断した場合は、保険適用のピルが出される。
ただ宋さんによると、医療機関によっては女性が重い生理痛などの症状を訴えても病気扱いとはせず、単に「症状改善」のためとして保険適用外のピルを出す施設もある。自由診療扱いにして利益率を上げるためとみられるという。
宋さんは、保険適用外のピルを使う場合の患者負担額は月2000〜3000円ほどなのに対し、適用薬なら同440〜2350円ほどに収まると話す。宋さんが院長を務める「丸の内の森レディースクリニック」(東京都千代田区)には、別の医療機関で適用外の薬を処方された患者が適用薬を求めて訪れるケースもあるという。
「医師は保険が適用されるピルの存在についても、きちんと説明すべきだ」と指摘する宋さん。生活の質維持のためにピルは有効と強調した上で「女性が自分の体や性の在り方について選択できるという考え方を常識にしたい」と力を込める。
【編集後記】ピルという言葉を記事で使う際、「ピル(経口避妊薬)」と書くべきかどうか悩んだ。これまでの記事ではそう書いてあることが多い。ただ、そう書くと「ピルは避妊のために飲むもの」という偏見をさらに広め、女性をピルから遠ざけると思った。
「生理は体にとって自然なものではない」と宋さんが言ったことにも驚いた。妊娠を望むタイミング以外では不要とも話す。多くの女性がもっと気軽に、生理に伴う心身の不調から解放されることを願う。(時事通信神戸総局記者・池畑真衣)。

ピル活用の選択肢を発信する産婦人科医の宋美玄さん=2024年11月、東京都千代田区