「患者は1年風呂ナシ」“過疎地の精神病院”の実態を職員が暴露。「行政も見て見ぬフリをしています」

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2025年03月08日 16:30  日刊SPA!

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マイリさん
精神科病院における医療の質や患者の人権をめぐる問題は、後を絶ちません。
2023年に報道された東京都八王子市の滝山病院では、虐待に加えて不適切な治療や診断の疑いも指摘され、精神科医療の閉鎖性がもたらす問題が明らかになりました。

さらに、最近では青森県八戸市のみちのく記念病院で、患者間殺人隠蔽いんぺい事件が発生したことが報道され、波紋が広がっています。

こうした事件の背景には、病院の閉鎖的な体制だけでなく、実情を知っていても地域が声を上げづらい実態があります。ずさんな管理体制の精神科は、報道されていないだけで日本各地にまだまだ存在します。

今回は、自身が勤める精神科病院で異常な実態を目の当たりにしているというマイリさん(仮名・32歳)にお話を伺いました。

◆お風呂に1年間入れていない患者さんが普通にいる

マイリさん:私はA病院の事務方として1年半ほど働いています。もともとこの病院がある地域にはゆかりがなく、夫の仕事の都合で引っ越してきました。新卒からずっと精神科で働いており仕事内容も好きなので、この地域でも精神科への就職を希望していました。

求職中に知り合った人にこの病院のことを聞いても、評判はよくありませんでした。しかし、前職の経験や同じく精神科で働く友人の話から「精神科は比較的ホワイト」というイメージがあり、そのときは信じられなかったんです。

また、この地域は日本の中でもかなり田舎で、通勤圏内の精神科は限られます。ほかに病院を探すとなると県外に出なければなりません。いろいろな条件を考慮したうえで、この病院で働くことになりました。

――入社して病院に違和感を感じたのはいつ頃ですか?

マイリさん:病院への違和感は、入社してすぐに感じました。まず、私の教育係のスタッフから、お風呂にずっと入れていない患者さんがいると聞きました。本来であれば、患者さんは週に2回は入浴するルールになっています。

もちろん患者さんの中には入浴を拒む方もいますが、清潔保持や健康管理のためになんとか入浴させるのがプロの仕事です。しかし、この病院では入浴をしたがらない患者さんは放置されており、1年間もお風呂に入れていない人もいるんです。

――教育係の方は、その状況に危機感を覚えていないのでしょうか?

マイリさん:教育係の人はさまざまな病院で経験を積んだ方で、この状況をよくないことと認識していました。気づいてはいても、院内の体制がよくないので自分ではどうしようもできないのでしょう。それを見て、私自身もこの病院の体制に不安を感じるようになりました。

しかも、病棟を見回りしても、看護師がどこにも見当たらないんです。田舎の精神科は高齢者が多いので、事故が起きないよう食事やトイレ、生活動作全般をよく見ていなければならないのに…

◆認知症のスタッフを雇い続けたら虐待が起こった

――病院なのに看護師がいないとは…

マイリさん:スタッフにとっても環境がよくないため、看護師不足が深刻なんです。

そのため、看護師は病棟の患者さんに時間を割かないようにと考え始め、おむつ交換はカーテンをせずに丸見え状態、ズボンを履かせずおむつ姿のままなのは日常茶飯事です。一時的に入れた尿カテーテルも、体調がよくなり必要がなくなってもずっと入れっぱなしです。

――人権侵害が常態化していると。

マイリさん:そうなんです。看護師不足になると、働いてくれれば誰でもいいとの考えから、人事も甘くなります。以前、在籍中に認知症の診断が下ったスタッフがいたのですが、人手が足りないからと雇い続けました。

そのスタッフは感情のコントロールができなくなっていき、言うことを聞いてくれない患者さんを叩いたり首を絞めたりすることもあって…ほかにも、性的虐待もあったみたいです。

◆院長の一存で患者の命が決まってしまう

――尊厳もケアの概念もない状況ですね…院長もこのような状況を把握しているはずですよね?体制を改める考えはないのでしょうか。

マイリさん:そもそも、院長がやばいのでこの状況なんです。簡単にいうと、物事を気分で決める人です。たとえば、院内で患者さんが窒息するといった一刻を争う状況は、精神科でも少なくありません。見守りを行う看護師が院長に速やかに報告し、処置に当たる必要があります。

しかし、うちでは院長の顔色がすべてなので、緊急時であっても院長が別な仕事をしていれば気を遣って報告しません。看護師として真っ当に働くことができないので、貴重な人材が辞めていくのでしょう。

――院長が医師として機能しないとは…病院としてあるまじき実態ですね。

マイリさん:看護師が患者さんのためを思って発言する内容も、一切聞き入れません。たとえば、入院中の患者さんの具合が悪くなると、精神科ではカバーしきれないことも多く、ほかの科を受診させることは普通です。

しかし、院長にはプライドがあるためそれを許しません。適切な処置を受ければ延命できた患者さんが、容態が悪化し亡くなってしまうこともありました。

――人の命を救うのが医師の仕事のはずなのに、自分のプライドのほうが大事だとは…

マイリさん:逆に、患者さんのご家族が希望しない処置をすることもしばしばです。ご家族の意向で積極的な延命治療はしなくてよいと確認していても、衰弱すれば不要な点滴や経管栄養を入れ続け、身体はパンパンに膨れ上がります。

そのほうが、病院は儲かりますからね。心臓が止まってもマッサージやAEDで身体を痛めます。

それに、未だに感染症を過度に警戒して家族との最期の面会も許可しませんね。ご家族が安心して患者さんを看取ることを許さない院長です。

◆家族経営による弊害も大きい

――院長を注意する人はいないのでしょうか。

マイリさん:家族経営なので、注意がまかり通らないんです。

以前、レクで院長の親族が作ったおでんを患者さんに出したことがあったんです。飲み込みが難しい高齢者には、食材をカットして提供するのが基本です。

しかし、カットした食材を見た院長の親族が「私たちが徹夜で作ったおでんを刻みやがって!」としゃしゃり出て来ました。患者さんの安全よりも、自分たちのプライドのほうが大事なんでしょう。次の日からは「地獄に落ちろ!呪ってやる!」などの暴言も吐かれました。

院長の周りがこのような調子なので、この病院は絶対に改善しません。ちなみに、内部通告も院長がキレるので絶対できません。監査で指摘されても、言い訳ばかりで直すつもりは一切なし。日本の北朝鮮といっても過言ではないですね。

◆行政も見て見ぬふりー“最後の受け皿”状態の精神科

――そんなずさんな管理体制でも、なぜ病院が存続できるのでしょうか。

マイリさん:この病院がやばいことは、地元ではかなり有名です。行政も実態を知っているはずですが、田舎にとって精神科はなくてはならない存在なので、大目に見られているらしいです。

田舎の精神科は身寄りのない人、施設を断られ行き場に困っている人の最後の受け皿でもあります。

適切な治療をしてもらえて、ご飯も出てきて、生活保護でも入院できる。そのような場所がなくなってしまうと、行政としても対応に窮するのでしょうね。

◆患者と家族、スタッフが安心できる病院になってほしい

――マイリさんは、今後もA病院で働き続ける意思はあるのでしょうか。

マイリさん:実は、この状況に耐えきれず転職を決意しました。この職場に入ってから精神科での仕事が嫌いになりそうでしたが、めげずにいろんな資格を取ったんです。その結果、別な精神科から内定をいただき、晴れて退職することになりました。

通勤時間は今よりかかりますが、私はこの仕事が好きなので続けられることを嬉しく思います。

――おめでとうございます!きっと、マイリさんのような倫理観のある真面目な人材はほかに流れてしまうのでしょう。

マイリさん:長年貢献しているスタッフも、院長からの理不尽な扱いに疲弊し辞めていきます。しかも、すぐには辞めさせてもらえないので、一度入職したら退職するまで本当に大変です。辞めたくても、年齢や家庭を考慮して働き続けるスタッフで成り立っている病院です。

どんな患者さんにも、大切に思う家族や身寄りがいるはずです。そして、多くのスタッフはその思いに応えようと、過酷な状況に耐えながら日々努力しています。

経営者は病院だからと慢心せず、行政も現実に目を向け、地域が一丸となって安心して任せられる医療体制にしていく必要があると思います。

<取材・文/キムまる子>

【キムまる子】
OLを辞めて韓国留学を経験。アラサーならではの恋愛やお悩みをシェアするライター。韓国文化と恋愛についての記事を中心に執筆中。趣味はひとり酒。

このニュースに関するつぶやき

  • こういう病院は患者を何年も入院させているのでしょう!
    • イイネ!16
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