左から叶精二氏、島本須美、才田俊次、佐藤好春。「東京アニメアワードフェスティバル2025(TAAF2025)」のスペシャルプログラム「日本アニメーション創業50周年記念 世界名作劇場より『小公女セーラ』&トークショー」が、本日3月8日に東京・池袋シネマロサで開催された。イベントでは1985年放送のアニメ「小公女セーラ」の第2話「エミリー人形」、第34話「嵐の中のつぐない」を上映後、セーラ役の島本須美、キャラクターデザイン・才田俊次、アニメーター・佐藤好春が登壇しトークを繰り広げた。
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上映後、島本が来場者に「みんなひどかったよね?」と語りかけると、会場からは笑いが起きる。トークショーのためにアニメを全話観直してきたと言う島本は「久しぶりに観て、何回も泣きました。かわいそうで泣いて、優しくされて泣いて。うれしい涙のほうが多かったかな」と話し、「いじめの多い作品を今放送するのは難しいと思いますけど、絶対にいじめる側にはなるまい、助ける人になろうと思って観ていました」と語った。
当時の収録現場の状況について質問されると、「最初の頃は色があったのですが、いつしか青い線、赤い線だけになり、カット変わりもわからない状態で、どんどん絵がなくなっていきました。台本である程度のストーリーや気持ちがつながっていく声優さんのほうが向いていたような現場だったと思います」と振り返る。そのような現場でどのようにイメージを膨らませていたかと問われ、「ミンチン先生の中西(妙子)さんやラビニア役の山田栄子ちゃんをはじめ、達者な人たちがたくさんいて、しっかりお芝居してくださるので、それを受けて私は『いじめられていればいいや』と(笑)」と笑いながら述べた。そして「栄子ちゃんは本来すっごく優しい人で。ラビニアとしてセーラをいじめながら、収録後には『(セーラが)すっごいかわいそう』って泣いていたんです(笑)」と裏話を披露した。
作画スタジオ・オープロダクション所属の才田は、これまで「赤毛のアン」や「母をたずねて三千里」などのアニメの原画を手がけ、現在は「ちびまる子ちゃん」の作画監督などを担当。「小公女セーラ」ではキャラクターデザインと一部作画を担当した。キャラクターデザインでは、これまであまりお姫様のようなキャラクターを得意としていなかったこともあり、セーラのデザインに苦労したと語る。「(作ったデザインを)少女マンガが得意な会社の女の子たちに見せても、『これは江戸時代の庄屋さんの娘レベルです』と言われて。どこが問題かと聞いたら、おでこを出しましょう、と。いいヒントになりました」とセーラの誕生秘話について話した。ラビニアについては“絶対に美形に描きたい”という執念を持っていたと明かし、「じゃなきゃ最後までもたないだろうと思っていました」と述懐する。また才田は「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」「赤毛のアン」などの第1話作画に関わることが多く、MCから毎度先陣を切って行くのは大変なのではないかと問われる。すると「最初がいいんですよ」と話し、「(作画で)こけたら大変ですけど、前に人がいたら比べてしまうので、比べなくて済むのが意外といいんですね」と説明した。
日本アニメーションに所属し、「少女ポリアンナ物語」で初のキャラクターデザインを担当した佐藤。その後スタジオジブリに移籍し「となりのトトロ」の作画監督を務めたほか、スタジオ4℃のアニメ部門設立などに携わってきた。「小公女セーラ」では途中まで原画を担当。「僕が日本アニメーションに入ったときが『赤毛のアン』の放送中。才田さんの原画やオープロの村田(耕一)さんのようなうまい人たちの影響を受けながら勉強していました。今一緒にしゃべれていることに緊張しています」と緊張した様子を見せる。佐藤は「となりのトトロ」でのエピソードも披露。制作当時、ネコバスが走っている場面のセル画の制作を手伝っていたと言う佐藤は「宮崎(駿)さんがセル画の表面に絵の具でタッチを入れていて、そのお手本通りに何十枚も描いていたんですよね。ずっと2人で作業していて。当時ジブリは会社じゃないから、(作業が)終わると人がいなくなっちゃって寂しくなる。だからそうやって仕事を増やされたんじゃないかなと(笑)」と笑顔で話した。
「小公女セーラ」出演後、日本アニメーションの作品では「ピーターパンの冒険」のティンク役を担当していた島本。ピーターパン役の日高のり子とは「小公女セーラ」のオーディションもともに受けていたことを明かす。そして日高が浅倉南役を演じる「タッチ」のオーディションにも参加していたことを告白。「『セーラ』をやってたから絶対に『タッチ』は決まらない!と思っていましたが……のり子ちゃんが『セーラ』をやっていたら私にも『タッチ』のチャンスはあったかな?とか思います(笑)」と話した。
話題は「小公女セーラ」の制作現場に移る。島本が黒川文男監督とシナリオライターの中西隆三が泊まり込んでいたという話を聞いたと話すと、佐藤が「スタジオに泊まり込んでいたのは本当です」と回答。「ソファコーナーがあって、次第に炊飯器が増えていって。2人でご飯を食べていましたね」と説明すると、島本が「ご飯を食べながら(セーラへの)いじめの内容を考えていたんですね(笑)」と笑いながら話し、会場に笑いを誘った。
※日高のり子の高ははしごだかが正式表記。