DCユナイテッドに在籍する木島萌生 [写真]=DC UNITED メジャーリーグサッカー(MLS)のDCユナイテッドに所属する日本人MF木島萌生(きじま・ほうせい)が11日、日本メディアの合同取材に応じた。
現在22歳の木島は12歳で渡米。アスリートを育成する教育機関で、プロテニスプレーヤーの錦織圭も在籍したIMGアカデミーに進む。サッカーに言語、勉学に励み、そのままノース・カロライナ州のウェイクフォレスト大学に進学し、2023年12月にMLSスーパードラフトで1巡目の全体17位指名でセントルイス・シティに加入。2025シーズン開幕前には今シーズンから新規参入となるサンディエゴFCに拡張ドラフトで指名されるが、一般配分金がサンディエゴFCに支払われる形でDCユナイテッドに移籍し、開幕から3戦連続先発している。直近9日のカンザスシティ戦では決勝点となる加入後初ゴールも決めた。
異色のキャリアを歩む木島は、「小さい頃からモノを蹴る癖があって。もともとは水泳をやっていたんですが、サッカーに移りました」と9歳でサッカーキャリアをスタート。「錦織選手がIMGで修行していたということでキャンプに行ってみようと」参加したところ、「学校に通わないかと言われ」、12歳という若さで渡米を決断する。母親からは「絶対ダメでしょ」とアメリカで選手としての成功は難しいのではと反対されたが、父親からの後押しもあり、アメリカ行きを決める。とはいえ、「両親はともにグローバルな考え方で。お母さんが小さい頃から英語で話してくれていたこともあり、英語がしゃべれて。日本では(英語が)上達しないだろうから、アメリカに行った方がいいだろうという考えを持っていました。幼稚園からはずっとインターナショナルスクールで、日本の学校には通ったことがなく、日々英語をしゃべっていました」と、アメリカ行き自体は両親の念頭にあったようだ。木島自身も「お母さんには見返してやった気持ちがちょっとあります」と笑いつつ、「ありがたいのが一番です」と感謝している。
IMGアカデミーは「大学生活と似ている」とのことで、「当時はサッカーのプログラム自体が人気ではなく、サッカーだけだと男女で100〜150人くらいでした。学校も食堂もフィールドも同じ敷地内で、歩くだけで学校も練習も行ける。選手としても、勉強の部分でも成長できる環境だと思います」と振り返る。
プロサッカー選手になることは15歳で目標となったが、「当時は『今のままでは足りない』と思っていて、練習と勉強に励んで、いい大学に入れるように頑張った」とのことで、ウェイクフォレスト大学に進学すると、「そこでの成長が大きかった」として、サッカーのヘッドコーチであるボビー・ムース監督の指導が飛躍につながったと続けた。大学では歴史を専攻。日本史専攻ではなかったとのことだが、日本やアジアの歴史についても学び、「侍、大和魂といったものがサッカーに取り入れられるかという考えで学んでいました。日々のメンタリティや態度、リスペクトといった面で取り入れています」と、いい影響があったようだ。
勉強に励む姿勢はサッカーへの理解にもつながっているとのことで、「大学に入ってから試合分析にハマって。戦術的に偽サイドバックが好きで。大学も左サイドバックで最初にプレーして、そこから真ん中をやるようになったんです。ジョゼップ・グアルディオラ監督がバイエルン時代に産んだものですが、見ると興奮しちゃって(笑)。サッカーを進化させるアイデアをいつでも探していて。今は元フルミネンセのフェルナンド・ジニス監督のやり方を研究して、1月にはご本人にも会って話すことができました」と、プレーヤーとして積み上げになっている。
その研究熱心ぶりがつながった例として、昨シーズンのリオネル・メッシらを擁するインテル・マイアミとの対戦を挙げ、「メッシ選手はもちろん、めちゃくちゃうまくて」としつつ、「小さい頃からグアルディオラ監督がバルセロナにいたときの試合を見て勉強していた覚えがあるんですけど、セルヒオ・ブスケツ選手、ルイス・スアレス選手、ジョルディ・アルバ選手もそうですが、各選手がボールを受けたとき、次の動きが読みやすくなったというか。ブスケツ選手だったら、よく右にターンする振りをして左にカットしてくる動きがあったんですけど、それを読んで取ったり、メッシ選手も左利きなので、もちろんクオリティが高いんですが、左に行きたがるところを見て、抜かれたときもありましたけど、ボールを取れたときがあって、自分的にもびっくりしました」と、偉大な選手たちと対峙した時のエピソードを明かしている。
MLSは近年、日本人選手の活躍も増えてきた。木島は「日本人、どこの国から来ているかは関係なく、うまい選手がいると試合後に質問したりする」と前置きした上で、昨シーズンにLAギャラクシー所属DF吉田麻也とのユニフォーム交換をしたことを「言葉が出ないくらい感動した」と表現。「吉田選手はリーダーシップが強みで、話を聞くと左サイドがスペイン語、右サイドが日本語、真ん中が英語(で選手とコミュニケーション)。いろいろな言語を学ぶことに興味があると言っていて、すごく学びましたし、吉田選手が僕に話してくれたことがうれしかったです」と、元日本代表主将との交流にも刺激があったようだ。
「才能はなく、努力のみでここまで来たと思います」という木島の目標は「まずDCユナイテッドで活躍することです。(ヨーロッパでのプレーも)個人的にはもちろん夢はありますが、まだまだ実力も足りないので」と、クラブと自身のプレーに集中し、その先に「もちろん夢。まだまだですが、将来入れるチャンスがあれば、貢献したいです」という日本代表も見据えている。
【動画】木島萌生がDCユナイテッドで初得点!