「飼い主が倒れて入院」家に取り残された柴犬を保護…ご飯は2、3日に1回、散歩なし 保護団体「居ても立っても居られず、引き取った」

1

2025年03月13日 15:30  まいどなニュース

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

まいどなニュース

飼い主さんに再会できるかな…(「lien(リアン)」さん提供、Instagramよりキャプチャ撮影)

「飼い主が脳こうそくで倒れ家に残されている犬がいる」

【写真】飼い主が倒れて入院、家にひとりぼっちで取り残された柴犬

1月15日、飼い主さんが脳こうそくで倒れて入院し、家にひとりぼっちで取り残された柴犬を引き取ってほしいと、入院中の病院の相談員から「lien(リアン)」さん(@restartdoglien)のところに連絡が入りました。リアンさんは、埼玉県や茨城県の動物愛護センターから処分される犬を引き取り、新たな飼い主に譲渡をする活動に取り組む犬保護団体。今回の依頼は、リアンさん以外の団体にも打診されており、「もし引取先がなかったら連絡ください」と返事をしていたといいます。

「返事をした次の日に、とある団体さんたちからは『引き取るなら○十万』『お預かりで月に○万円』などと言われたと伺いました。ただ飼い主さんは一人暮らしの高齢者であり、お金もなく困っているとのこと。また柴犬はご飯を2、3日に一回しか食べさせてもらえず。しかも散歩もなしで、家の中に取り残されていると聞いて居ても立っても居られず…家の鍵を持っているという会社の方に『引き取りは無料でいいので現地を見させてください』と連絡しました」

入院から2週間後、現場の家へ 室内は何カ月も掃除をしていないよう…カレンダーも昨年のまま

連絡後、すぐに現場の家へ。鍵を開けてもらうと、柴犬が取り残された室内は目を見張る光景でした。

「この時入院して2週間と聞いていましたが、私が家に入った時には部屋の中は何カ月も掃除などしていないようでした。カレンダーも昨年のままで、たぶん飼い主さんはずい分前から体調が悪かったのかもしれません。しかし一人暮らしですし仕事を休むわけにもいかず、そのまま放っておいて倒れた可能性も。保護時、ケンタは玄関を開けるとすぐにやってきて不思議そうに見ていました」

柴犬の名前は、ケンタくん。ご飯をあげていたという飼い主さんの会社の同僚によると「10年前くらいから飼ってるんじゃないか」といい、年齢ははっきり分からないそう。倒れて病院に運ばれた時に意識があった飼い主さんから会社の同僚にお世話を頼まれたとか。

「今回ケンタが取り残されたと分かったのは、飼い主さんが出勤せず、会社の方が警察官と一緒に家に入り、本人が倒れているのを発見した時です。救急車で運ばれ、そのまま入院に。飼い主さんは会社の方にお世話をお願いしたものの、病院で相談員にケンタのことをどうにかできないかと相談したらしいです。そこで私のところに引き取りの話がきて、家に足を運んだんです。柴犬は難しい子が多くかむ子もいるので慎重に対応しましたが、幸い穏やかないい子でした。この子ならこのまま連れて帰れると思い、リードをつけ、クレートに入れて連れて帰りました」

飼い主の退院の目途立たず、柴犬はボランティアの家で預かり

リアンさんのところに引き取られたケンタくん。今はリアンさんのお散歩ボランティアさんの家で預かってもらっているそうです。

「お散歩ボランティアさんのところでお預かりしてもらったのは、ストレスサインが出るようになったためです。もともと1匹飼いの子なので我が家の多頭環境はケンタにあまりよくない影響を与えてしまい、ストレスになりました。その方はケンタの事情も十分知っててお預かりしてくれています。

また飼い主さんは退院の目処がいまだに立たず、もう飼えないことは自分でも分かってきているようです。ただ退院したらケンタに一回会いたいと。ずっと一緒に暮らしてきた子とある日突然こんなことになり、このままお別れするのは気持ちの整理がつかないのでしょう。

今後飼い主さんが戻してほしいということはないと思いますが…遠いところに譲渡してしまうと、退院しても会えないという気持ちから手放せないのかなと思います。わがままなのは分かっていますがケンタに会えるという気持ちがリハビリに役立つと思いますし、一度ちゃんとお別れをしたいという気持ちも分かるので、しばらくケンタは里親募集せず、ただ預かるだけの子になります。これは保護活動なのかはわかりませんし、普通の保護団体はやらないことだと思います。その枠に1匹でも引き取れれば助かる子がいるからです。

しかしケンタも行き場所のない子ですし、飼い主さんにお金はありません。お金がない飼い主さんの飼っていた犬の面倒を見れないと突き放すことはできません。犬に罪はないので…保護犬といえないと言われればそれまでですが、経緯など関係なく目の前にいる子に手を差し伸べられる場所があるなら助けてあげたいと思っています」

今回のように一人暮らしの高齢者が急な入院になったり、死亡したりしてペットが置き去りになってしまうケースに後が絶ちません。犠牲になるのはいつも動物。そんな状況について、リアンさんはこう訴えます。

「リアンでも一人暮らしの飼い主が施設に入り飼えなくなったケースの子をたびたび保護しています。今の60代、70代は若いですが、皆さん声を揃えて『まさか自分がこんなに早く病気になるとは思ってもいなかった』といいます。高齢者の一人暮らしは寂しいです。動物と一緒に暮らせば生きがいになります。しかしその子のことが本当に大切ならやはり自分に何かあった時のことを考えてもらいたいなと思います。

またお散歩仲間が多いとか、お友だちと口約束で後見人がいるつもりの方が多く、飼い主に何かあるなんてみんな思ってないから。実際に飼い主が倒れてどうしようとなった時、子どもたちにも家庭がありますし、散歩友だちはそれぞれ犬を飼っている人たちですから、実際に引き取るとなると、ちゅうちょするもの。そうなってからいちばん被害を受けるのは犬なんです。

先日引き取ったパグの飲茶(やむちゃ)もそう。一人暮らしの飼い主が入院して外につなぎっぱなしでした。退院できると思っていたらしいですが、3カ月経ってそのまま施設に入ることになり、病院の相談員から連絡が来てその子も引き取りました。今一度、動物を飼っている一人暮らしの方はもしもの時を考えていただきたいと思います」

   ◇  ◇

ケンタくんを引き取ったことは、リアンさんがInstagramに投稿。たくさんのコメントが寄せられるなど注目を集めました。

「この子も歳をとってるように見えます。飼い主さんと一緒に歳を重ねてきたんだなと。脳梗塞は予測できるものではないので飼い主さんを責めることはできないですよね」
「最近、ペットショップが保護団体と名乗って、売れ残ったワンコ達を譲渡金という名でお金を多く取る悪徳業者もいるようで哀しいばかりです」
「リアンさんの活動に頭が下がります 本当に ワンちゃんには 何の罪もないですものね 保護された柴ちゃん なんて優しい 安心したお顔をしているんでしょう ありがとうございます」
「この寒い中3日に1回のご飯は辛すぎます 穏やかな顔してますね。安心したんでしょうね。リアンさん、いつも本当にありがとうございます」

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

動画・画像が表示されない場合はこちら

    前日のランキングへ

    ニュース設定