
ウコンなどに含まれる“クルクミン”は、古くからさまざまな健康効果が期待できると言われてきています。万能スパイスともいわれるクルクミンですが、具体的にはどのような健康効果をもたらしてくれるのか、YouTubeチャンネルの登録者数が48万人を誇る、医師でヘルスコーチの石黒成治先生に教えてもらいました。
“クルクミン”は糖尿病を改善する!?
ウコンに含まれている“クルクミン”は、抗炎症効果や抗酸化効果があるということが古くから知られていますし、それ以外にも多くの健康効果が報告されています。
メトホルミンという糖尿病薬を内服している糖尿病患者272人に対して、クルクミンのサプリメント1500mgを足すことで血糖コントロールの変化が起こるのかを1年間経過観察する研究が行われました。
すると、クルクミンを追加することで、体重が減少し、ヘモグロビンA1cが改善して空腹時の血糖も良くなり、空腹時のインスリンの値も改善しました。
これらは、糖尿病の改善がかなり期待できるデータだといえます。
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また、脂肪細胞から出る良いホルモンであるアディポネクチンが上昇し、糖尿病患者さんは過剰に分泌されることも多い満腹ホルモンのレプチンは激減していました。
この効果は、ほかの糖尿病治療薬の効果と比較しても遜色ないほど変化を引き起こしていて、糖尿病と診断されている人であれば、むしろ糖尿病薬として使ってもいいレベルでした。
そして、1年間の副作用がほぼないレベルだったので、安心して使えるものでもあります。
クルクミンは老化を遅らせる可能性も……
クルクミンの健康効果として、現在はアンチエイジングの分野が注目されています。
長寿に影響を与える主要なシグナル伝達たんぱくに哺乳類ラパマイシン標的たんぱく質(mTOR)というものがあります。
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mTORはたんぱく質を構成したり、細胞を増殖したり、オートファジーを抑制したりします。 オートファジーとは細胞の中の不要な成分を分解するプロセスで、mTORはこういったものをコントロールしているのです。
これらのプロセスが活性化してしまうと、細胞の老化が促進したり、細胞ががん化したり、損傷した細胞がどんどん蓄積したりしてしまう可能性が……。
この活性が低下すると、逆にオートファジーが活性化するため、酵母や線虫、ショウジョウバエなどのモデル生物の実験では、mTORをブロックすることで寿命が延長することが報告されています。
つまり、細胞の中の機能の老化を抑制して若返らせる可能性があるということです。
人でもmTOR経路の抑制は老化プロセスを遅らせるという研究もあるのですが、クルクミンがmTORを抑制させる効果があるということが報告されています。
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“脳の神経変性”の治療効果も期待できる
さらに、クルクミンには脳を老化から保護する作用があることも最近注目されています。
脳の中にミクログリアという細胞があり、神経細胞の正常な働きをサポートして、脳の中を安定化させるために重要な役割を果たしています。
正常な状態ではミクログリアは脳の保護的な働きをしますが、活性化してしまうと脳の酸化ストレスを増加させて神経の炎症を誘発してしまいます。
ミクログリアが活性化する状態は、アルツハイマー病やパーキンソン病、ALSなどの神経変性疾患によく認められる病態です。
クルクミンはミクログリアの活性化を抑える作用があるので、神経の炎症が抑えられて、脳の神経変性に対して治療効果が発揮できることが注目されているのです。
血糖コントロールがあまりうまくいっていない人や糖尿病の治療をしている人などは、たくさんの合成された薬を飲むより、安全性や信頼感が高いクルクミンを試してみるといいのではないでしょうか。
(TEXT:山田周平)
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画像提供:Adobe Stock
石黒成治先生
消化器外科医、ヘルスコーチ。
1973年、名古屋市生まれ。1997年、名古屋大学医学部卒。国立がん研究センター中央病院で大腸癌外科治療のトレーニングを受ける。その後、名古屋大学医学部附属病院、愛知県がんセンター中央病院、愛知医科大学病院に勤務する。2018年から予防医療を行うヘルスコーチとしての活動を開始。腸内環境の改善法、薬に頼らない健康法の普及を目的に、メールマガジン、YouTube、Instagram、Facebookなどで知識、情報を分かりやすく発信している。Dr Ishiguro YouTubeチャンネル登録者数は48万人超(2025年1月時点)。