サッカー日本代表の構造的欠陥 久保建英がレアル・ソシエダで見せている本来の力を出しきれない原因は何か?

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2025年03月26日 18:10  webスポルティーバ

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 2026年W杯アジア最終予選、日本はサウジアラビアと0−0とスコアレスドローに終わっている。退屈で、スペクタクル性に乏しいゲームだった......。

 日本は前戦、バーレーンを2−0で下し、W杯出場を"世界一番乗り"で決めていた。勝ち負けが云々されるゲームではない。20歳の高井幸大のような若手が的確なパスを打ち込むなど、好プレーを見せる収穫もあった。

 サウジアラビアも「プレーを放棄した」戦い方で、ゴールを生み出すのは難しい状況だった。こんな戦いを恥も外聞もなく90分するチームがW杯のピッチに立つのはふさわしくない。語る価値もないチームだった。

 しかしながら、それを打ち破ることができなかったのが、「世界一」を目標として公言した森保ジャパンの実像なのである。

「これだけ押し込んで、3−0でおかしくもない試合展開で0−0だったのは反省で......」

 試合後、バーレーン戦に続いて2試合連続でゲームMVPのプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出された久保建英は語り、以下のように続けている。

「(試合前から)引いてくるのかな、とは思っていたんですが......ほぼ"ベタ引き"で、"サッカーを捨てる"じゃないですけど、カウンターらしいカウンターもなくて、ハーフコートマッチというか、練習のようでやりにくさはありました。そのなかで、最後のところまではいけていたし、ポケットまでは取れていたんですが、その後のクロスのところとか、決めきることができませんでした」

 久保はサウジアラビア戦でも、才能の片鱗を見せていた。だからこそ、ゲームMVPに選出されたのだろうが、本来の彼の実力はこんなものではない。彼が主戦場とするスペイン、ラ・リーガにおいては、サウジアラビアのそれは「ブロック」と呼ぶにも値しないほど貧弱であり、本当は暴風が敵をなぎ倒すようなプレーができたはずだ。

 なぜ、久保は才能を出しきれなかったのか。

 サウジアラビア戦の久保は、シャドーのポジションを任されていた。3−4−2−1というツリー型のフォーメーションのなか、1トップの背後を影のように動き、サイドや中盤と連係し、攻撃を活性化させる役割だ。彼はシャドーを担うだけの能力がある。

 しかし、チームにはいくつか構造的欠陥が見えた。

【選手の持ち味を殺す起用法】

 まず、ツリー型の1トップの選手は、ボールを引き出し、収め、展開し、ギャップを生み出す技術、戦術の高さが必要であるが、率直に言って、前田大然は適切な人材ではない。

 裏にボールを引き出す爆発的な動きはあるし、自らボールを強奪して得点か、というシーンもあったが、ポスト役にはなれず、"前線のプレーメーカー"になるタイプではないのだ。

 もうひとつ、右ウイングバックを任された菅原由勢がブレーキになっていた。菅原は、サイドバックとしては日本人トップの選手である。後方から奇襲的にインサイドを破るなど、攻撃をカバー、フォローするところでは力を出せる。しかし、サイドに張ってボールを受けても、マークにつかれてしまうとドリブルで崩せる選手ではない。結果、ボールを戻すしかなかった。

 森保一監督が選び、頑迷に続けた編成自体が、機能不全の理由だ。

 久保は組織としての不具合を解消しようと奮闘していた。

 前半26分、インサイドでボールを受け、左足を振って、やや強引にシュートしたシーンは、「相手がプレスに来なかったし、一発、遠目からシュートを打っておこうと」と本人が振り返っているが、どこか業を煮やした格好か。

 35分には遠藤航がドリブルで突っ込んだ後、敵に奪われたボールを田中碧がカットし、拾った久保はすかさず左ウイングバックの中村敬斗に展開した。そのシュートはバーを越えたが、際どい場面は作っていた。

 ただし、攻撃は単発的だった。

 久保がサイドに張って、シンプルに縦へ突破を仕掛けたほうが得点の匂いがした。クロスのキックが合わなかったが、サウジアラビアは後手に回っていた。それを徹底したら、こじ開けることはできただろう。

「僕がサイドに張りすぎないようにしていたんですが。結果として、自分がサイドに張っていたほうが、チャンスはできていました。後半は、前半以上に(中が)ごちゃごちゃとしてしまって」

 久保は言葉を選びながら、実感を込めていた。彼がサイドに張って、ボールを受けたら、たとえ相手にふたりがかりで来られたとしても脅威を与えられた。なぜ、シンプルに菅原がサイドバックで、久保がサイドアタッカーではなかったのか。簡単なことを難しくするような起用法で、どちらの持ち味も殺していた。

 久保はレアル・ソシエダで、トップ下やトップでもプレーできる姿を証明してきた。当然、シャドーで周りと関われるだけのインテリジェンスもテクニックもある。ただ、それは周りと関わって力を発揮するポジションだけに、構造的な欠陥があった場合、全力を出しきれないのだ。

 バーレーン戦の久保は、鎌田大地と近い位置でプレーし、持ち味を出して構造的問題を解決していた。しかし、あくまで個人の"力技"だった。連係面や選手の適性などの問題は置き去りで、勝利のなかに病巣は潜んでいた。

 久保が半分の力も出せていない。それが森保ジャパンの現状である。

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