「3Dプリントで作った霜降り肉」はうまいのか 大阪万博で“培養肉の未来”を見てきた

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2025年04月12日 15:41  ITmedia NEWS

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4月13日に開幕する大阪・関西万博(編集部撮影)

 お米を炊飯器にセットするような感覚で、食用肉を“3Dプリント”する――4月13日に開幕する「2025年日本国際博覧会」(大阪・関西万博)の「大阪ヘルスケアパビリオン」で、そんな未来の光景が展示される。出展するのは、大阪大学大学院工学研究科のほか、伊藤ハム米久ホールディングスやTOPPANホールディングスなど6社が参画する「培養肉未来コンソーシアム」だ。4月9日に開かれた、報道関係者向けの内覧会で話を聞いた。


【画像】「家庭で作る霜降り肉」や、その作製プロセス(計6枚)


●「模様」もカスタム可能


 培養肉は、人口増加に伴い懸念されるタンパク質の供給不足や、温室効果ガス排出による環境問題への解決策として、国内外で研究が進められている。


 今回展示される培養肉は、和牛から採取した肉塊をもとに製造したものだ。はじめに筋肉・脂肪・血管の細胞をそれぞれ培養して増やし、3Dバイオプリント技術で直径1mm以下の線維状態に形成。これらを組み合わせることで、牛肉を再現している。


 大きな特徴が、筋肉や脂肪の割合を自由に調整できる点だ。ヘルスケアパビリオンには、サシ(脂肪)が均一に入った霜降りステーキ肉のほか、赤身・脂身を格子状に組み立てた肉が展示されていた。後者については「パーティー用」といったシーンを想定しているとのことで、研究に携わる伊藤ハム米久HDの野嶽一将氏(大阪大学駐在)は、「将来的には文字を入れたり、誕生日ケーキのように顔写真の模様を入れることも可能です。その後焼いてしまうので、おすすめはしづらいのですが……」と説明する。


●家庭での実用化目指す


 作製には「細胞を増やし始めてから約半年、増やした細胞の組み立てに約1カ月」を要したとのこと。ただし、「今は手作業で組み立てているので時間がかかっていますが、将来的には『夜にミートメーカーのボタンを押しておけば、翌朝にはお肉が出来上がっている』という未来を、2050年ぐらいまでに実現したい」と野嶽氏は話す。


 ブースには、実用化を目指しているという家庭向け「ミートメーカー」のコンセプトモデルも展示されていた。「赤身か霜降りか」「どの栄養素をどの程度加えるか」といった“作りたいお肉の仕様”を指定できるようになっており、健康状態や好みに合わせたステーキ肉を自由に用意できる「未来のキッチン」が表現されている。


●果たしてお味は……?


 とはいえ、気になるのはやはりその味だ。野嶽氏によれば、試食した人からは「『人工物』としてイメージされる味ではなく、明らかに生肉の味だ」という評価は得ているという。ただし、「食感が弱い」「味が薄い」「匂いが弱い」といった課題があり、今後もブラッシュアップを重ねるとのこと。「努力して作っていますが、まだ『安い肉』の味だったようです」


 食品衛生法における枠組みが整っていないことから、まだ一般向けには提供できないというものの、同コンソーシアムは培養肉について、31年の商業化実現を目標に掲げている。大阪・関西万博においては、7月8日にヘルスケアパビリオン内の「リボーンステージ」で、「焼いた培養肉の香り」を体験できるイベントも予定されている。“家庭で肉を作る”未来は、想像以上に間近に迫っている――そんな実感を得られる展示といえそうだ。



このニュースに関するつぶやき

  • 日本人の食へのこだわりは強いから本物の食感の再現も早めに実現出来てしまえるかもね。
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