情報の一元管理について解説【外食業界のリアル・19】外食業界では管理すべき情報が多く、グルメ媒体やオウンドメディア、GBP(Googleビジネスプロフィール)などの反映箇所も多岐に渡るため、一元管理が求められることが多い。一方、媒体やエリア特性などによってターゲット属性が異なるため、同じ情報を掲載しても響きにくいということも起きている。今回は情報の一元管理とローカライズ(個別最適化)について語りたいと思う。
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●飲食店の管理している情報とは
飲食店が管理しなければならない情報は多岐に渡るが、大きく分けると「店舗情報」と「商品情報」の二つとなる。
店舗情報は住所や電話番号、営業時間、席数、席タイプなどの店舗自体に関するものとなる。その中でも一番注意が必要なのが、営業時間である。お盆や年末年始などはイレギュラーな営業時間になるほか、施設やビルのメンテナンスや工事などによって突発的に休みになることも少なくない。掲載場所によっては祝日や祝前日などの記載ルールが異なることもあるので注意が必要だ。
また、グルメ媒体やGBP、オウンドメディアでは店舗の紹介文やメタ情報(検索結果に表示される概要「ディスクリプション」など)も管理が必要となる。グルメ媒体ごとに抱えるユーザー属性も異なるため、記載する紹介文や訴求すべきポイントも変えなくてはならないし、媒体によって掲載される項目や文字数なども変わってくるため、各媒体で最適化していくためには複数のパターンを管理していくこととなる。
商品情報はコースや単品、ドリンクなどのメニューに関するものとなる。グランドメニューのように通年で変わらない商品もあるが、旬な食材や料理を取り入れた限定コース/メニューが季節ごと、もしくは月ごとに用意することが多い。マーケティングに力を入れている飲食店では同じコースであっても媒体ごとに最適化したタイトルを付けるケースがあるため、運用は複雑となっていく。
また、商品では使用する写真も非常に重要となる。どんなメニューなのかをユーザーに伝えるためには写真が一番わかりやすく、シズる感のあるものは来店の動機にもなり得る。GBPでは登録する商品画像を多くすることを推奨していることもあって、より多くの写真が必要となり、その管理も煩雑となっていく。
飲食店では店舗情報と商品情報を管理し、各グルメ媒体やGBP(Googleビジネスプロフィール)、自社サイトなどへ反映し、変更のたびに更新していくような運用をしている。予約台帳やモバイルオーダーなどのツールにも反映する必要があるため、店舗数が増えると管理の難易度はどんどん上がっていく。さらにユーザーからのレビュー・口コミに対しても返信や管理(店舗へのフィードバック等)も大切であり、店舗の運用負荷は高まるばかりである。そのため、店舗情報や口コミ管理のための専用のツールを導入するケースが近年増えている。
●外食で求められるローカライズとは
外食業界では複数エリアでチェーン展開する企業も多いが、同一プロモーションでは成果が出にくい。なぜならば店舗の立地条件やエリア特性によって売り方が変わってくるためだ。ビルの空中階にある店舗であれば当日のウォークイン(予約なしの来店)は限られるために予約で席を埋めなくてはいけないし、繁華街の路面店や商業施設内の店舗であれば、飛び込みのお客様も多いため予約に頼らなくてもいい。
また、飲食に関する検索キーワードはエリアによって傾向が大きくことなる。「安い」の検索ボリュームが多いエリアもあれば、「個室」や「デート」「女子会」といったワードが人気の場合もある。
同じチェーン店であっても店舗によって訴求内容を変えなければいけない、つまりローカライズが必要となるのである。もちろんローカライズをしたからといって100発100中で成功するわけにはいかず、効果検証を繰り返しながら成果を高めていくという工程を店舗ごとにやる必要がある。そのための運用工数は膨大なものとあるが、手間をかけた分だけ効果が出やすいこともあってローカライズに力を入れているケースは多い。
●情報の管理と反映が重要
飲食店ではローカライズを意識した運用をしていくためには「共通で管理するべき情報」と「個別に最適化するべき情報」とに分けて管理していくことが重要となる。
飲食店向けの一元管理ツールも増えているが、それらは情報を管理するだけでなく、各媒体などにも情報を反映してくれる便利なものとなる。が、掲載場所や項目が多岐に渡るため、すべての個所に対して望みどおりの形で反映するのは難しいのが実情だ。そのためツールの仕様に合わせた管理をせざるを得ない。飲食店によっては店舗情報をミスなく管理していくために承認フローを設けていることもある。
そのため、情報の「管理」と「(媒体やGBPへの)反映」を切り離していくことも必要となる。「管理」についてはGoogleドキュメントを活用して複数人で更新・共有をしたり、近年ではノーコードで自社に最適化したものを簡単に構築できるkintoneを使うケースも増えている。
飲食店は会社ごとに独自の文化を持っていることが多い。そのため会社ごとに情報管理の中身やフローが異なってくるのだが、SaaSでは自社の都合に合わせたカスタマイズは難しいことが一般的だ。特に店舗数の少ない会社においては費用対効果の観点からも個別要件については叶えてもらいにくいのが実情である。
●短いスパンでPDCAサイクルを
飲食店に関する情報の「管理」と「反映」を自社で最適化していくためには「一元管理」と「ローカライズ」のバランスを取りながら、短いスパンでPDCAサイクルを回していける運用体制を構築していくことが求められる。そのためにはツールに全てを委ねて自社を変えていくのではなく、ノーコードツールなどを取り入れながら自社の最適化をしていくことが求められているのではないだろうか。(イデア・レコード・左川裕規)