米国のトランプ大統領(AFP時事) 【シリコンバレー時事】トランプ米大統領が、相互関税の対象からスマートフォンや半導体製造装置などの一部電子製品を外したことで、米国での家電価格高騰の懸念は後退しそうだ。巨大IT企業への打撃は和らぐが、サプライチェーン(部品供給網)の中国依存は維持される。米中関係は緊張が続き、経営リスクはくすぶる。
相互関税が公表された後、注目を集めた企業の筆頭は米アップル。米国向けのiPhone(アイフォーン)がほぼ中国製だからだ。米政権が当時中国に課す方針だった計54%の関税を回避するため、インド製の輸入量を増やすとも報じられた。
米ローゼンブラット証券はこの関税率をベースに、米国での販売価格が最大43%上昇する可能性があると試算。米ウェドブッシュ証券は米国で製造すると、現在1000ドル(約14万円)の端末が3500ドル(約50万円)になると分析した。11日のアップル株は、相互関税が発表された2日の終値に比べ11%安で取引を終えた。
高関税は、生成AI(人工知能)の進展にも響く恐れがある。AI半導体でシェア首位の米エヌビディアの製品は台湾積体電路製造(TSMC)頼り。米デル・テクノロジーズなどのAIサーバーもアジアに供給網を持つ。これらで構成しAI開発を支えるデータセンターは、コストが上昇しかねない分野だ。
巨大IT企業は、世界規模で複雑かつ広大な供給網を築き、製品・サービスを提供してきた。トランプ氏が急速に国内回帰の圧力をかければ、ビジネスモデルが揺らぐ可能性がある。トランプ氏が半導体への分野別関税を検討するとの報道もあり、立ち込めた霧は晴れていない。