「300円が7万円に」パチンコの“ビギナーズラック”で人生が狂った50歳男性。18歳で“爆勝ち”を経験してしまった男の末路

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2025年04月22日 16:20  日刊SPA!

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 朝から晩までパチンコやパチスロを打ち、勝ち金で生活をするパチプロ。20代ならまだしも、30代、40代となるにつれ、世間の風当たりの強さに足を洗う者も多い。気ままな稼業の代名詞とも言われる彼らは、一体どんな人生を歩んでいるのだろうか。
◆パチンコデビューはビギナーズラックで爆勝ち

「あんまり派手に勝った話なんかないし、もう30年近くも前のことだしね」と苦笑いしながらパチプロ時代の話をしてくれたのは、今年50歳になる、愛知県在住の武井憲二さん(仮名)だ。

 武井さんがハマったきっかけはいわゆる“ビギナーズラック”。パチンコにハマった者が通る王道といえよう。

「18歳の頃、地元のツレがウチに遊びに来て、ヒマだなぁ〜って話してたら『じゃあ、パチンコ行こうや』って。実は私の家の裏にはパチンコ屋があったんですが、私の親兄弟、親戚でパチンコをする人はいなくて、当時まだ高校生だった私にとって裏のパチンコ屋は近くて遠い異世界。ですから、パチンコに行こうと誘われたときはかなりドキドキしましたね」

 そこで武井さんは連チャンパチンコの名機、麻雀物語と出合う。そしてお座り一発、わずか300円で大当り。そこから怒濤の連チャンが始まったという。

「ツレがハンドルに手を添えて打ち出しを調整してくれてたらリーチになって、あっ!と思ったら『中』が揃って大当り。ジャラジャラ玉は出てきて、アタフタしてたら隣のおばちゃんが『玉抜かなきゃダメよ!』って。どうすりゃいいかわかんなくって、またアタフタしてたら、ツレが下皿の玉を抜いてくれながら隣のおばちゃんに『コイツ、今日初めてパチンコ打ってんですよ』って言ったら『おめでとう!』って。恥ずかしかったですね(苦笑)」

◆300円が7万円になるも…

 そして大当り後に保留玉で連チャン。連チャンが終わってもすぐに次の大当りが来てまた連チャン。瞬く間に武井さんの周りにドル箱タワーができた。

「知らない人が『どえらい出とるなぁ』って言いながら後ろに立つし、大当りが終わると周りがみんな覗き込んできて『また当たっとるがや〜』って。なんかもう、当たる快感とみんなに見られる優越感みたいなのがごっちゃになってアドレナリン出まくりでしたね(笑)」

 山盛りの景品を抱えながら交換所に向かい、小窓から出されたのは7万円。わずか300円が7万円になったのだから、18歳の少年にとってはたまらない。だが、素人が運だけで勝ち続けることができるほどパチンコは甘くはない。

「遊びに使ったり、またパチンコに行ったりして、7万円はすぐになくなりました。バイト代が出るとすぐにまたパチンコに行ったんですが、1か月のバイト代をものの3日で使い果たしました。それからもしばらくは、3回行って1回勝つくらいの赤字生活。親に頭を下げて小遣いをせびっていました(苦笑)」

 そんな窮状を見かねたのは、武井さんをパチンコに誘った地元の悪友だ。ある日、彼は武井さんにこんなアドバイスをした。

「デジパチばっか打ってるから負けもでかくなる。羽根モノとか打ったほうがいいんじゃないかって。それでまたそいつとパチンコ屋に行ったんですが、彼は開放台という札が差し込まれた台を私に勧めてきたんです。『これは打ち止めって言って、たくさん出た台だから、イイ台ってこと』とのことで。そこから学校が終わって夕方にホールへ行って、開放台の札台を目当てに羽根モノを打つようになりました」

 この札台作戦は功を奏し、1勝2敗の借金生活から1勝1敗1引き分けの勝てずとも負けない生活にシフトするに至ったのである。

◆研究を続けてクギが読めるようになる

 こうして精神的にも金銭的にも余裕ができ始めた武井さんは、好きこそものの上手なれと言わんばかりに、パチンコ雑誌を買ってパチンコの研究を始めることとなる。

「当時のパチンコ雑誌はクギを写真で解説していて、それを読み込みました。ですが、クギが開いているかどうかなんて、すぐにはわかんないんですよ。ちょっと広いかなぁって思ったり、実際に指をガラス越しに当てて比べたりもしましたが、よくわかんなかった。それでも店に入るとクギを見るのは日課になっていて、開放台が取れなかったら『なんとなく開いているかも』って思った台を打っていました。そんなある日、いつものようにクギを見ていたら『これは絶対に開いている』という台を見つけたんです。あのときですね、生まれて初めて『クギが読めた!』って実感できたのは」

 こうして「クギが読める」と自信を持った武井さんは、さらにパチンコにのめり込んでいくことになる。

「デジパチよりもクギの良し悪しが出玉に直結して、なおかつ玉の動きが面白い羽根モノにハマりました。当時は連チャンデジパチ全盛だったんですが、実は羽根モノも数多くリリースされていたんです。クギが読めるようになったので、いろんなホールに行ってクギを見て『ここは客付きは悪いけど、そこそこのクギだな』とか、その逆もあって『客付きはいいけど、打てる台はないな』って思うような店もあって。とにかくクギを見るだけでも楽しかったですね」

◆大学へ進学するもパチンコ三昧の日々

 こうしてプロ並みの洞察力を身につけてしまった武井さん。こうなると学校に通うのもバカらしくなってしまったのではないだろうか。

「ホールに行けばほぼ確実に打ち止めまで行けたんですが、当時、私が住んでいた辺りは2.5円交換で4000〜5000発定量だったんで、1回打ち止めして1万〜1万2000円くらい。初期投資がかさんだり、役モノで嫌われると打ち止めしても収支はプラス5000円なんてこともあったりしました。高校生にしちゃイイお金ですけど、これで学校辞めてまで……とは考えられなかったですね」

 しかし、高校を卒業して大学に進むと状況は変わる。

「今でいうFラン大学っていうんですか……。入学したのが、いわゆる地元のバカ大学だったんです(笑)。山の上にあるような大学で、来てる連中も興味があるのは車と女だけみたいなね。入学して3日目には、こんなことなら浪人してちゃんと大学受験すりゃよかったって思いました。そんなんですから、大学なんて行かずに毎日パチンコ。前の日に目星を付けておいた台を次の日の朝からクギを見て打つスタイル。相変わらず羽根モノばっか打ってたけど、そのお陰で確実にジワジワ稼ぐことができたんですよ」

◆憧れのパチプロ、田山幸憲氏

 当時は激しい連チャンを売り物にした連チャン機がホールを席巻していたのだが、武井さんはそうした台に目もくれず、ひたすらに羽根モノを打ち続ける日々を送った。

 話を聞いていて、ある人物のことが頭をよぎった。それは、パチプロとして初めて誌上でその生き様を語った、田山幸憲氏だ。

 田山氏のことは、往年のファンならご存じの方も多いだろう。池袋のホールをねぐらにし、打ち方のスタイルやリアルな実戦記、「できた!」など、独特の表現で語る実戦記を『パチンコ必勝ガイド』に連載し、数多くのファンを魅了した。筆者は武井さんに「まるで田山さんみたいですね」と聞くと、武井さんは少し照れながら「そんな大物じゃないですよ」と笑いながら、田山さんについて話してくれた。

「実はひそかに憧れていたのも事実なんですが、田山さんが羽根モノを中心に打ってたのって、私がハマッてた頃よりも4、5年前ですからね。ただ、必勝ガイドは毎月買っていたので、連載は楽しみにしていました。クギ見ながら『縦の比較、横の比較』とか、打ち止めしたときに『デキた!』とか心の中で言ってみたりね(笑)。一度、東京まで会いに行こうと思っていたんですが、ガンになられて入退院を繰り返されるようになってしまい、結局叶わずじまいでした。たぶん、実家の押し入れに何冊か単行本も残ってるんじゃないかな」

◆大学中退を機にプロとして活動することに

 結局、大学には2年間籍を置いたが、中退という道を武井さんは選ぶこととなる。

「大学中退するって親に言ったら、中退してもいいけどちゃんと働けって。実家は塗装屋をやってて、オヤジからは継ぐなら一緒に働けって言われましたが、それも断って家を出て名古屋市内のアパートを借りました。でも、働く気なんてまるでなくて、名古屋市内から実家の裏のホールにしばらくは車で通ってたんですが、それがバレて『何やってんのよ!』って母ちゃんに叱られましたね(笑)」

 しかし、皮肉なことに地元から離れたことで、武井さんはプロとして飛躍をすることとなる。

「実家から少しでも離れるために新たな店を開拓することになったわけです。地元のツレで名古屋の大学に通ってたヤツとかからいろいろ情報をもらって、甘いホールを見つけるべくいろんなホールに行ったんですが、家を出るまでは実家の裏にあるホールと数軒くらいしか知らなかったので新鮮でした。行ったことのないホールに行くときは道場破りみたいな気持ちでしたね」

 こうして武井さんは、家を出てパチプロとしての一歩を踏み出した。クギを読み、台を見極め、地元以外のホールを開拓していく日々。だが、その後も武井さんの人生は、決して“パチンコだけ”で完結するわけではなかった。

 武井さんの人生は、ここからさらに大きく変わっていくことになる。

文/谷本ススム

【谷本ススム】
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代ライター

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