息子亡きあと、20年間大事にしてきた愛車2代目「フェアレディZ」 西日本豪雨で水没するも…学生の手で復活 両親「これからも前向きに生きていける」

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2025年04月29日 07:20  まいどなニュース

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2018年7月の西日本豪雨で水没した直後のフェアレディZ

 息子の形見として大切にしていた車が、7年の時を経てよみがえった。

【写真】フェアレディZを愛した二十歳のころの山本晃司さん

 持ち主は、2018年7月の西日本豪雨で甚大な被害を受けた倉敷市真備町地区で暮らす山本晃さん(82)、富美枝さん(80)夫婦。自宅が浸水し、27年前の交通事故で亡くなった長男晃司さん=当時23歳=が残した愛車「日産フェアレディZ」も水没した。

 車はその後、復興ボランティアとの縁をきっかけに、思いがけず京都の自動車整備専門学校での修理が実現した。「Zは晃司そのもの」と語る山本さん夫婦の元に5月下旬に戻ってくる。

 エンジンの重低音を響かせ、車は動き出した。

 「息子が帰ってきたみたい」。3月下旬、日産自動車大学校京都校(京都府)に招かれた山本さん夫婦は感極まった。

 生前はアルバイトでお金をためて中古で買った車を毎晩のように自宅ガレージでいじっていたという。

 日産自動車の2代目「フェアレディZ」(1978年発売)は、山本さん夫婦の長男晃司さん(享年23歳)の愛車だ。97年の急逝から20年間、晃さんは「みすぼらしくなったらかわいそうだから」と月2回の水洗いとワックスがけを欠かさず保管。運転席に息子の写真、後部座席には遺品を置いていた。

 しかし2018年7月、状況は一変する。真備町地区一帯を襲った西日本豪雨によって自宅は1階が完全に浸水、ガレージの車も泥水にまみれた。ただ、思い出の詰まったフェアレディZを処分する気にはなれなかった。

 転機が訪れたのは翌19年の春、復興ボランティアの学生を自宅に迎えた時だった。偶然にも学生は専門学校で自動車整備士を目指す若者たちで「Zがある」と目を輝かせて車の周りに集まった。山本さん夫婦は亡き息子の姿を重ね、学校の教材として活用してもらうことを決意する。

 関係者が日産自動車大学校京都校に打診したところ快諾を得た。さらに車を送り出して2年後の21年には、有志の学生で被災前の状態に戻すプロジェクトが始動する。同校の指導教員、井上恵太さん(58)は「整備士を志す生徒たちにとって車を修理して元に戻すのは自然なこと。山本さんが大切にしてきた特別な車だったのでなおさら復活させたかった」と明かす。延べ60人余りがさびた部品の修理と交換、点検を繰り返す作業を続けること約3年半。今年2月、ついにエンジンがかかった。

 復活した「赤いZ」は学生らが5月下旬、真備町の自宅に届ける予定。山本さん夫婦は現在、雨よけの取り付けや自動車愛好家が集うスペースを設けるなどガレージの改装を進める。「晃司のおかげで、これからも前向きに生きていける」。多くの縁に感謝し、6年ぶりの“帰郷”を心待ちにしている。

(まいどなニュース/山陽新聞)

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  • 再び甦ったZに亡き息子さんも草葉の陰で喜んでいらっしゃるだろう。昔の日産車は金を掛けてでも乗り続けたくなる楽しい車が沢山有った。
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