「青柏祭の曳山行事」で披露された巨大な山車「でか山」=2019年5月、石川県七尾市 巨大な山車「でか山」が能登に戻ってくる。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産「青柏祭の曳山行事」(石川県七尾市)が、2年ぶりに開催される。昨年は能登半島地震の影響で中止されたが、今年は復興への願いと、再開に尽力した男性への思いを乗せて練り歩く。
でか山は、1000年以上の歴史を持つ青柏祭を勇壮に彩ってきた山車だ。高さ約12メートル、重さ約20トンで3基あり、七尾市中心部の鍛冶町、府中町、魚町が競うように巡行するさまは圧巻。巡行は例年5月3〜5日で、能登最大の祭りの一つとされる。
今年は再開に当たり、3基全てに「復興祈念」の幕を付ける。府中町は山車の飾りに、織田信長の居城だった清洲城の石垣修理を木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)が迅速に終わらせた場面を選び、早期再興への願いを込めた。
さらに今回は、関係者の間に特別な思いも広がる。「青柏祭でか山保存会」の会長だった高木純二さんが1月、脳梗塞のため67歳で急逝。再開に向け、陥没した道路や傾いた電柱などの修繕を市に要請するなど尽力してきた。妻敏子さん(66)は「あんなに楽しみにしていたのに」と涙ぐむ。
高木さんと小中学校が同じという現会長の丸岡俊宏さん(67)は、居酒屋で「うちのでか山が一番」と言い合い、笑ったことが忘れられない。「熱意も知識もすごい。あんなに慕われた人はいない」という亡き友をしのび、地元を活気づける使命に燃える。
大地主神社(七尾市)では、疫神を鎮める神事も執り行われる。大森重宜宮司(64)は「祭りは楽しめば楽しむほどいいものになる。山車が動けば、皆さんの心も明るくなる」と話す。「祭りが復興のシンボルになるといい」と願っていた高木さん。そのにぎわいが、能登の活力になる。

「でか山」を背に記念撮影する高木純二さん(左)と妻敏子さん=2002年5月、石川県七尾市(敏子さん提供)