天皇陛下と雅子さまは、4月25日、内閣府が主催する「第19回みどりの式典」に出席された。出迎えた内閣府の副大臣と事務次官にほほ笑まれた両陛下は、いつもの優しくやわらかなご表情だった。
「両陛下は受賞者らとのご懇談も、非常に和やかなものでした。ただこの日、式典には石破茂総理や額賀福志郎衆院議長も出席しています。むろん天皇陛下はこのような式典で表情を崩されません。しかし昨今、皇室が直面する問題を議論する自民党の方向性に、複雑な思いを抱かれているのではないかと……」(宮内庁関係者)
目下、国会で進む皇族数の確保策についての議論。2021年に政府の有識者会議がまとめた報告書をもとに、「女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する」案と、「皇統に属する男系男子の養子縁組を認める」案の2つを中心にして論戦が繰り広げられてきたが、各党の隔たりはいまだに大きい。そんななか、4月17日に開かれた第6回の協議で、養子縁組案について動きがあった。
「戦後に皇籍を離脱した旧11宮家のうち、“久邇家、東久邇家、賀陽家、竹田家の4家に、未婚の男系男子がいるとの前提で有識者会議が議論していたことを政府から説明された”と、玄葉光一郎衆院副議長が各党の出席者に対して明かしました。
国会の協議の中で、4家に未婚の男性がいることが具体的な議題に上ったのは初めてです。ただ“養子縁組”案は、男系男子による皇位継承の堅持を主張する自民党が掲げる方向性であり、その流れが補強された形であるともみられています」(全国紙政治部記者)
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そして4家の旧宮家でもっとも“皇室に近い”とされた賀陽家の動静は、かねて報じられてきた。
現当主の賀陽正憲氏(65)は、陛下とは学習院初等科以来のご学友。さらに2人の子息は愛子さまと同世代で、養子縁組の候補ばかりか、愛子さまの“お婿候補”との報道もあったほどだ。しかし、前出の宮内庁関係者はこう明かす。
「正憲氏は、将来の侍従候補と期待され2000年に宮内庁へ転じたのですが、当時皇太子だった陛下は、“旧友を部下にできない”と断られたと伝わっています。式部職に籍を置いていた正憲氏はその後、外務省に出向し、そのまま同省で公務員として定年となります。
しかしこの背景には、“雅子さまが正憲氏の侍従着任を忌避された”“式部職内での言動が陛下の激しいお怒りを買われた”という経緯もあったとされ、最終的に陛下が距離を置きたいというお考えに至ったと伺っています。
天皇ご一家がお住まいで催されていたお正月の集まりにも、その後正憲氏が顔を出すことは少なくなったとも聞きます」
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お怒りを見せることがほとんどない陛下のこうした旧友への態度に、驚いた宮内庁関係者も少なくなかったという。だが宮内庁から事実上追放された正憲氏の子息が、自民党の強行策が進められた結果、養子として皇族となる展開すらありえてしまうのだ。
神道学者で皇室研究者の高森明勅さんはこう話す。
「一般国民が養子縁組で皇族になることは、皇室の歴史でも前例がなく、これでは同じ国民でありながら門地で差別する憲法違反になってしまいます。
現状の案で制度が成立してしまえば、その対象となる旧11宮家の男系子孫、養子を受け入れる皇族方、さらに未婚の女性皇族方が拒絶されることが困難となり、事実上の強制になりかねません。当事者となる方々の人格の尊厳や人権を、ないがしろにしてはならないと考えます」
■“養子縁組”案も一時しのぎの改革案
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さらには、“結婚後の女性皇族の身分保持”についても、まるで“政略婚”を前提にした動きすら浮上しているというのだ。
「結婚した女性皇族の夫と子に皇族の身分を認めるかどうかについて、各党・会派の間で議論が分かれていました。しかしここにきて自民党は、旧11宮家に限り皇族とする案も示したのです。ただこれも、“愛子さまをはじめ女性皇族が、旧宮家の男性と結婚すれば家族内の一体感を維持できる”という意見も浮上しかねないのです」(前出・宮内庁関係者)
そして、4月3日付の『朝日新聞』の「声」欄に、皇室ジャーナリストとして長年活躍してきた久能靖さん(89)の投稿が掲載され、一部で注目を集めた。
《そもそも現在検討されている2案は、一時しのぎの改革案にすぎない》
とまで断じた内容について、久能さんに聞いた。
「皇室の危機を、国会議員だけで決めてよいのかと危機感を抱き、投稿という形をとりました。そもそも今論じられているのは、皇族数の減少を食い止めるという議論だけです。旧宮家の男系男子を対象とした養子縁組案も、戦後に皇室を離脱し、私たちと同じ国民として自由な生活を送ってきた旧皇族の子孫の方が皇室に入ることを、そもそも国民は納得できるのでしょうか」
“男系の維持”を頑迷なまでに推し進める自民党。象徴天皇制のあり方はおろか、愛子さまの結婚の自由すら奪いかねない危機。陛下の憂悶は深まる一方なのか──。
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