"粉末"の「味ぽん」がドンキでバカ売れ、担当者が語る人気の秘密

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2025年05月03日 06:21  ITmedia ビジネスオンライン

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ちょっと気になるかも? 人気の“粉末味ぽん”

 ミツカンの「無限さっぱりスパイスby味ぽん」(店頭で540円前後)が話題を呼んでいる。2月13日に先行発売したところ、わずか4日間で完売。反響の大きさから生産が追いつかず、一時的に販売を休止していたが、4月21日から再び店頭に並んだ。なぜここまで爆発的に売れたのか、ヒットの背景に迫った。


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 「無限さっぱりスパイスby味ぽん」は、顆粒(かりゅう)のしょうゆに、酢のチップや柑橘をブレンドし、「味ぽん」らしさを表現した粉末タイプのスパイス調味料だ。原料には、胡椒、ガーリック、唐辛子を加え、揚げ物や焼き物の食感はそのままに、さっぱりとした味わいが楽しめる点が特徴だ。


 従来の液体味ぽんの場合、開封後は冷蔵保存が必要だが、粉末タイプは常温保存が可能。持ち運びもしやすいため、アウトドアでも活用できる。


 先行発売は、ドン・キホーテやアピタなどを展開するPPIHグループの店舗限定で実施し、2カ月間にわたって販売する計画だった。しかし、発売直後からSNSで口コミが広がり、わずか4日間で完売した(販売数は非公表)。


 休止の間、需要に応えられるよう生産体制を見直し、4月21日より販売を再開した。ブランドを担当している吉岡真優さんは「人口や市場が減少する中、近年にないほどマーケットが動いた」と手応えを語る。


●「サクサク食感」と「さっぱり味」の両立に挑む


 開発の背景には、これまで市場で見過ごされていたニーズに着目したことがある。揚げ物や焼き物など、こってりした料理を食べる際にポン酢などの液体調味料を使うと、水分で食感が損なわれてしまう。


 多くの消費者は 「仕方のないこと」と受け止めていたが、ミツカンはこの問題に着目し、本来の食感を損なうことなく味わえる粉末タイプのポン酢開発に着手した。


 しかし、開発は想像以上に難航したという。「粉末にするというアイデアは、社内でも以前から出ては消えていた。味ぽんをただ粉末にするのではなく、食感の楽しさや付加価値をどう高めるかについて、時間をかけて議論した」と吉岡さんは振り返る。


 企画から発売まで2年以上かけて試行錯誤を重ね、単なる粉末化ではなく、より多くの料理に合うよう、胡椒やガーリック、唐辛子などのスパイスを加えることで、味ぽん特有の「さっぱり感」を粉末で表現すると同時に、「やみつき感」のある味わいを追求した。


●単なる粉末化ではない付加価値の追求


 各種スパイスの配合バランスも徹底的に検証したほか、原料の顆粒の粒度を意図的に不均一にすることで、スパイス自体の食感も楽しめるようにするなど、細部にこだわった。


 「無限さっぱりスパイスby味ぽん」という名称も、「パウダー」か「スパイス」で最後まで検討したという。「『スパイス』という響きが、味わいや調味料としての特徴を消費者に伝えるのに最適だと考えた」(吉岡さん)


 ヒットの背景には、消費者自身も気付いていなかった潜在的なインサイト(欲求や動機)を捉えた点がある。「調味料を使っても揚げ物のサクサクとした食感を保ちたいという潜在的なニーズを刺激した」と吉岡さんは分析する。


 実際に、購入した人からは「やみつきになる味が良かった」「食材が水っぽくならない」などの評価が寄せられている。


 柑橘の香りや独自のスパイスブレンドと食感で既存の粉末調味料と差別化したほか、調理の時短ニーズやアウトドアでの需要も、ヒットの後押しとなった。


 さらに、PPIHグループでの先行発売も奏功。ドン・キホーテの 「話題性のある商品展開」が若年層やトレンド感度の高い消費者を引きつけ、SNSでの拡散にもつながった。


●販売再開。しかし、すでに在庫がない店舗も


 今回の出荷量は2月よりも多くなるよう調整したが、販売再開からわずか1週間で、すでに在庫切れとなっている店舗もあるという。筆者も再開の翌日に、近所のドン・キホーテを2軒回ったが、すでに売り切れていた。


 安定的に供給できる体制をいかに構築できるかが、今後の課題だ。吉岡さんも「生産体制の強化を優先的に進めていきたい」と語る。


 当面は引き続きPPIHグループの店舗で販売するが、今後は販路の拡大も視野に入れている。また、あくまでも個人的な意見との前置きがあったが、吉岡さんは「家庭用だけでなく業務用としての展開も将来的に検討していきたい」と語った。


 「無限さっぱりスパイスby味ぽん」は、既存の「味ぽん」ブランドを活用し、新たな市場を開拓した。消費者の「当たり前」に潜むニーズを掘り起こし、戦略的な流通で話題を最大化したことにより、成熟市場でも潜在ニーズを形にできた好例といえる。


 食感を損なうことなく味わいを変える同商品は、調理の幅や食事の楽しさを広げてくれる存在になりそうだ。


(カワブチカズキ)



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