世田谷線 開通100周年! “信号待ち”をする若林踏切から招き猫電車まで、驚きのトリビア10選

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2025年05月03日 20:50  All About

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東急世田谷線は、2025年5月1日で開通100周年を迎えた。これを祝した記念車両を4月29日から走らせているほか、さまざまな記念イベントも予定している。それにちなみ、世田谷線のトリビアをまとめてみた。
1925年5月1日に三軒茶屋〜下高井戸が全通した東急世田谷線は、2025年5月1日で開通100周年を迎えた。これを記念して、記念ヘッドマークステッカーを掲出し、車内では懐かしい写真を多数飾った記念車両を4月29日から走らせているほか、さまざまな記念イベントも予定している。それにちなみ、世田谷線のトリビアをまとめてみた。

1. 記念車両「ギャラリートレイン」の走行

世田谷線開通100周年記念ヘッドマークを掲出し、車内中吊りポスターを懐かしの写真で飾った「ギャラリートレイン」を4月29日から走らせている。

初日の29日には、保坂展人世田谷区長、世田谷線開通100周年記念事業実行委員会の飯島祥夫委員長、東急電鉄代表取締役専務執行役員の伊藤篤志鉄道事業本部長、世田谷まちなか観光協会の桑島俊彦会長、大場家第16代当主で一般財団法人大場代官屋敷保存会の大場信秀理事長を招いて出発式が行われた。

来賓を乗せての貸し切り運行で、上町車庫→下高井戸→三軒茶屋を運行した後、営業運転を開始した。なお100周年記念ヘッドマークステッカーは、「招き猫電車」「ラッピング車両」以外の8編成に順次掲出する予定だ。

2. 本線が廃止となり、支線のみが生き残った「玉電」

路面電車「玉電」(玉川電気鉄道、のちに東急玉川線)は、渋谷〜二子玉川園が本線で、支線として三軒茶屋〜下高井戸(下高井戸線)、二子玉川園〜砧本村(砧線)などの路線を有していた。

しかし、国道246号の渋滞が激しくなり、時代にそぐわなくなったことから本線および砧線が廃止となった。三軒茶屋〜下高井戸は路面電車といえども道路上を走っていなかったことから存続が決まり、世田谷線と改名し、現在に至っている。

本線廃止と引き換えに、地下鉄工事が始まり、1977年に東急新玉川線として開業。その後、田園都市線と直通運転を開始し、現在では渋谷〜中央林間が田園都市線となり、玉川線の名前は消えてしまった。

3. 世田谷線の線路幅は特殊な1372mm

世田谷線は「玉電」の支線であり、「玉電」は渋谷で都電(当時は東京市電)と線路がつながっていたため、都電と同じ線路幅は1372mmとなった。

この線路幅は、路面電車のゲージとも言われ、都電や函館市電が採用、都電との直通運転を予定していた京王、京成、京急なども採用したが、京成と京急は標準軌(1435mm)に改軌した。京王のみが1372mmのままで、京王と直通することになった都営新宿線も1372mmを採り入れた。

世田谷線の終点・下高井戸では京王線と世田谷線が1372mmという珍しい線路幅の路線が並んでいるが、線路はつながっていない。

4. ヨーロッパの終着駅をイメージした三軒茶屋駅

世田谷線の三軒茶屋駅は、往年の駅からは離れた場所に移転した。現在の駅は三軒茶屋エリアのシンボルでもあるキャロットタワーの低層棟にある。

レンガ造りの外壁や駅構内のドーム状の天井はヨーロッパの終着駅を彷彿(ほうふつ)とさせ、「関東の駅百選」に選ばれている。もっとも、規模は小さく、線路1本の両側に乗車ホームと降車ホームがあるだけの簡素なものだ。

5. 警報機も遮断機もない若林踏切

三軒茶屋を発車した電車は、2つ目の若林駅の手前で環七通り(環状七号線)と交差する。交通量の大きな道路であるにもかかわらず、立体交差ではなく平面交差だ。通称「若林踏切」と呼ばれているものの、面白いことに、警報機も遮断機もない踏切で、電車は道路の信号にしたがってゆっくりと横断する。

電車は横断直前にいったん停止し、信号が青になるのを待つ場合が多い。この踏切区間は電車が道路上を走る「併用軌道」扱いで、世田谷線が路面電車である証なのだ。

6. 江ノ電の保存車両

宮の坂駅の脇には緑色の電車が1両保存されている。江ノ電601号で、平成2(1990)年に引退後、この地で静態保存されている。

実は、江ノ電で活躍する前は、東急玉川線および世田谷線で働いていた。したがって、生まれ育った地に里帰りしたともいえる。

隣接する区民センター開館時には車内へ入ることもできる。長年の野外展示のため劣化が進んでいたことから、ふるさと納税を通して資金を調達し、修復工事を行った。

7. 幸福の招き猫電車

宮の坂駅近くにある豪徳寺は、「招き猫」発祥の地だ。

それにちなみ2017年に招き猫のラッピング電車が初登場、いったんは運行終了したものの、世田谷線運行開始50周年を迎えた2019年に再登場、現在に至っている。

車内も招き猫型つり輪、床には肉球が描かれるなど遊び心満載で、見ても乗っても楽しい電車として人気を博している。

8. 塗装もまちまちな10編成

「幸福の招き猫電車」のほかにも、世田谷線の車両はラッピング車両やオレンジ、緑、青、紫、黄色などカラフルな電車がそろう。総勢10編成あり、交代で走っている。

9. 上町のLカーブ

本来なら、小田急の豪徳寺駅付近から南東に進めば最短距離で三軒茶屋に至るはず。しかし、鉄道の誘致を進めた地元の有力者は、当時の地域の中心だった上町を避けることをよしとはしなかった。それゆえ、上町を通るため、L字型の急カーブを切る線形としたのである。

今では上町は住所は世田谷区世田谷。世田谷の中心として区役所や代官屋敷、郷土資料館、それに世田谷線の上町車庫もありにぎわっている。

10. 世田谷線散策きっぷ

乗り降り自由の1日乗車券として「世田谷線散策きっぷ」がある。紙のきっぷ=380円、デジタル乗車券(Q SKIP)=360円。普通運賃は1乗車=160円なので、3回乗るだけでモトが取れるきわめておトクなきっぷだ。

世田谷の住宅地をのんびり走る世田谷線。招き猫で知られる豪徳寺、吉田松陰を祭る松陰神社、世田谷城址公園、代官屋敷、それにおしゃれなカフェも多数あるので、ぶらり散策するのも楽しい沿線だ。のんびり走る電車に乗ってゆったりした半日を過ごしてみたい。

取材協力=東急
(文:野田 隆(鉄道ガイド))

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  • 沿線に住まう宮脇俊三翁。玉電の乗車料金をしのぎにした若かりし日の安部譲二先生。遠い過去となりました。
    • イイネ!9
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