全く新しい「周期表」、ドイツチームが開発 原子から電子を除いた“高荷電イオン”にフォーカス

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2025年05月07日 08:21  ITmedia NEWS

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 ドイツのマックス・プランク原子核物理学研究所に所属する研究者らが発表した論文「Periodic table for highly charged ions」は、高荷電イオン(Highly Charged Ions、HCI)のための新しい周期表を開発した研究報告だ。


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 高荷電イオンとは、多数の電子が取り除かれた状態の原子を指す。例えば、鉄原子から26個ある電子のうち24個が取り除かれた状態などが該当する。高荷電イオンはプラズマ物理学やX線レーザー、ナノリソグラフィ、腫瘍治療、光学時計などで活用されている。


 従来のメンデレーエフの周期表は中性原子の化学的性質に基づいているが、多くの電子を失った高荷電イオンでは、電子と原子核との相互作用が大きく変わるため、別の原理で分類する必要があった。この研究では、相対論的軌道の順次電子占有に基づく高荷電イオンのための周期表を提案している。


 この周期表の提案により、3つの発見がもたらされた。1つ目は、複雑な原子の電子状態を簡単に理解できるようになったこと。2つ目は、原子時計の開発に適した特殊な光学遷移の大規模な発見をした点。3つ目は、高荷電イオンの電子エネルギー準位に関する新しいクーロン分裂を特定したことだ。


 特に注目すべきは、研究チームが700以上の高荷電イオンを用いた原子時計の候補を見つけた点だ。これらは従来の原子時計と比べて外部の電磁場による影響を受けにくく、最大で5桁も正確な時間計測が可能になると予測されている。


 Source and Image Credits: Lyu, Chunhai, Christoph H. Keitel, and Zoltan Harman. “Periodic table for highly charged ions.” arXiv preprint arXiv:2504.11237 (2025).


 ※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2



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  • …ドイツの科学は世界一〜出来ん事は無い〜(苦笑)
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