
仕事一筋で家庭を顧みず生きてきたAさんは、昨年無事に定年退職を迎えました。特別な趣味もなく、自宅で時間を持て余す日々を過ごしています。しかし静かな時間は束の間、定年退職からちょうど1年が経過したころ、Aさんは妻から離婚届を突き付けられます。Aさんは妻が離婚を考えていたなど、全く思いもよらず何が起こっているのか理解できません。
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一方で妻の側から見れば、それは「ある日突然」のことではありませんでした。妻は随分前から、この先の人生を夫と共に過ごすべきか悩んでおり、密かに離婚に向けた準備を進めていたのです。妻は「このまま一生、この人の面倒を見続けるのか」という不安に向き合いながらこの1年を過ごしてきたのでした。
妻は夫の退職金が出るタイミングを見据え、着々と水面下で準備を進めていました。離婚後の経済的な自立のために、パートから正社員になるための転職活動を始めたり、長く続けられる仕事に就くための資格取得を目指し勉強に励んだりもしていたのです。夫が家にいる時間が増えても、妻は淡々と自分の計画を進めていました。
Aさんはそんな妻の些細な態度の変化に気づかず、妻が離婚準備を進めていることに全くの無頓着でした。妻が離婚を考えるサインに気が付いていれば、違う行動もできたかもしれません。では離婚を考えている妻が見せるサインにはどのようなものがあるのでしょうか。夫婦関係修復カウンセリング専門行政書士の木下雅子さんに話を聞きました。
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ー離婚を考える妻のサインにはどのようなものがあるでしょうか
離婚を考え始めた妻がやりがちなこととして、最も顕著なのは水面下での離婚準備です。仕事を始めたり、転職活動を行ったりなど安定収入を得るための行動は要注意です。
また細かく不満を言ったり要望を伝えたりしていた妻が、急に何も言わなくなった場合も注意が必要です。夫側は「文句を言われなくなった」「理解してくれた」と受け取るかもしれませんが、「この人に何を言っても無駄だ」と妻が諦めたサインだと考えます。
何よりも会話の際に目を合わせなくなったり、感情的な交流を避けたりするようになればおかしいと考えた方がいいでしょう。夫への関心が薄れ、心の中で関係を終えようとしているサインと考えてもいいかもしれません。
ーサインを見逃さないために気を付けることはありますか
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夫が妻の離婚のサインを見逃さないためには、日常的な妻の変化に対して敏感になることが重要です。目を見て話してくれているか、などコミュニケーションの質に気を付けましょう。老後の話や将来の話がでなくなれば、もう手遅れかもしれません。
ーサインに気づいたらすべきことはなんでしょうか
サインに気づいた時点で、状況はすでにかなり進行している可能性があります。挽回できるチャンスがあるとしたら、それは「自分を改めること」に尽きます。感謝や労いを伝えたり、妻の気持ちに寄り添おうとする姿勢を見せたりするのも重要です。大げさなプレゼントや旅行を提案するよりも、日常の関わりを大切にするのもいいでしょう。
失って初めて気づくというような事態を避けるためにも、サインが出る前から妻への配慮と愛情表現に気を付けておくことをおすすめします。
◆木下雅子(きのした・まさこ)行政書士、心理カウンセラー。大阪府高槻市を拠点に「夫婦関係修復カウンセリング」を主業務として活動。「法」と「心」の両面から、お客様を支えている。
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(まいどなニュース特約・長澤 芳子)