年金改革が“骨抜き”に? 氷河期世代支援のはずが… 柱の基礎年金底上げ削除【Nスタ解説】

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2025年05月08日 20:33  TBS NEWS DIG

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TBS NEWS DIG

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今の国会では年金制度の一部を改革する法案が審査される予定になっていますが、ある部分が“骨抜き”にされる可能性が出ています。

【写真をみる】「消えた年金問題」もみくちゃにされる桜田義孝厚労委員長(2007年)

5年に一度の年金制度改革が“骨抜き”に? 

井上貴博キャスター:
年金制度改革において重要な部分である基礎年金の底上げについて、当初盛り込まれていましたが、削除されそうなんです。

TBS報道局 政治部 長田ゆり:
年金制度は5年に一度しか見直されないのですが、国民の生活に直結する大きな問題です。しかし今回の法案は、大幅な骨抜きの改革案で終わってしまいそうです。

そもそも、今回の年金制度改革での最大の目玉は「基礎年金の底上げ」でした。

厚生労働省が2024年、年金制度の“健康診断”とも言われる財政検証を発表した際に、現在、現役の平均収入が37万円に対し、年金の給付水準が6割に保たれていますが、30年後の2057年度には、約5割の水準に落ちるという試算を出しました。

井上キャスター:
インフレ等で30年後には手取りが増えるだろうと予想されている一方で、年金額は減っていくということですね。

TBS報道局 政治部 長田ゆり:
年金の給付水準が下がる中で、さらに問題なのが内訳です。年金の“1階部分”と言われる、全ての人が受け取れる基礎年金の割合が、30年間で約3割目減りするという試算が出されました。

これは経済成長が過去30年と同じ程度だった場合の収入ですが、基礎年金の手取りが約3割減少するのは、デフレが想定よりも長く続いたこと、そして、その中で年金額を下げられなかったツケが将来世代に回ってきているということになります。

基礎年金の底上げはなぜ削除された?

TBS報道局 政治部 長田ゆり:
全ての国民が受け取る基礎年金の減少は、年金制度の破綻に繋がる大きな問題です。

当初、政府が考えていた改革案は、約3割目減りする基礎年金の減少分を会社員や公務員が積み立てている厚生年金の積立金から当てる形で補い、目減りする3割分を補填するという計算になっていました。

しかし、ここで影響が出るのが、今、厚生年金を受け取っている人たちの一部で、受け取る額が減少・目減りするということが起きてしまいます。

これに対してある厚生労働省の幹部は、「次世代のために我慢して欲しいと政治家が語れるかどうかだ」と話していました。

ところが、2025年夏に参院選挙が控えているため、主に自民党の参議院議員らが「厚生年金の流用なのではないか」と国民から批判されることを恐れて、今回、大事な改革案が法案から削除されてしまったのです。

井上キャスター:
少子高齢化が進んでいる中、持続可能な年金制度に変えていくためには痛みを伴うであろうということは誰しもがわかっている。

その一方で、政治家からすると、目の前の選挙に勝つことに頭がいっぱいで耳の痛い話をしたくないということで、最終的に腰砕けになってしまうということを繰り返している気がします。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
比較的、自民党の支持者が多い自営業者の国民年金を増やすために、無党派層が多いサラリーマンの厚生年金を下げる。

ちょっとでも批判され、騒がれることを選挙前は避けたいという議員心理なんですが、そのために年金の抜本的な持続可能性がかなり低下しました。

とりわけ、今の物価高の中、国民年金の月6万円程度で生活することは不可能です。このような状況をどのように底上げしていくかが先送りになっています。

井上キャスター:
全体の制度設計をしていくためにバランスを整えなきゃいけないというのは頭ではわかりますが、厚生年金のために納めていたものが、別に使われるということで批判が出るのは、わからなくないなという感じがします。

出水キャスター:
それだけ聞くと、「私たちの取り分が減るからやめてよ」となりますが、例えば、具体的な金額や、「どうしてそれが今大事なのか」ということが国民に伝わっていないから、それすら議論できてないというところに問題がある気がします。

井上キャスター:
基礎年金の減少分は厚生年金以外で賄える可能性というのはあり得るんですか?

TBS報道局 政治部 長田ゆり:
厚労省が他に検討していた案としては、「基礎年金の納付期間を40年間から45年間に延長して財源を確保する」という案も検討されていたんですが、社会保険料の負担がそれだけ長く増えることになるので、それも見送られているという状況です。

就職氷河期世代への影響は深刻に

井上キャスター:
「基礎年金底上げ」の議論が先延ばしされることで、「就職氷河期世代」が重要になってくるということなんですか?

TBS報道局 政治部 長田ゆり:
今回の改革で一番の目的というのは、就職氷河期世代の人たちへの支援というところで「年金制度改革をやろう」という話になったんです。

この「就職氷河期世代」というのは、バブル崩壊後の就職なので正規雇用に就けなかった人が多く、それに伴って厚生年金の未加入期間が長い、もしくは入ったことがない人が多いということで、基礎年金への依存度が高い世代だと言えると思います。

ただ試算でもあった通り、基礎年金がこれから目減りしていくので、就職氷河期世代の人たちが老後を迎えるときに基礎年金だけで老後の生活を維持していくというのはなかなか難しいと思います。なので、その救済策として、今回の改革が本当はあるはずだったんです。

ある厚労省幹部はそれに対して、「“誰かが痛みを伴う”というのが年金制度だ」と話していました。世代間のせめぎ合いというのがある中で、そこをしっかりと説明できなかったということがあると思います。

政府には、▼改革に向き合う姿勢と▼国民への真摯な説明というのが、今、求められているというふうに思います。

井上キャスター:
全員が幸せになる案というのは存在しなくて、やはり誰かにツケが回ってしまう。その部分をしっかりと説明していただきたいですね。

星浩さん:
明らかに国民年金のモデルがもう古くなっているんです。農家で、近くに田んぼも畑もあるという設計だったのが、今や、国民年金だけというのは、就職氷河期の人を含めて、非正規で働いた人たちになっていますので、そこら辺の設計をもう少しきちんとやっていかないと、後々になってしわ寄せが生じるという現象が、もう起きてますね。

井上キャスター:
完全に時代に合ってないわけですよね。

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〈プロフィール〉
長田ゆり
TBS報道局政治部 自民党の政策を取材
柔道は黒帯 趣味は永田町のランチ開拓

星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身 政治記者歴30年

このニュースに関するつぶやき

  • 氷河期世代の真面目に働くオッサンやオバハンが報われんな。気の毒すぎる。せめて年金かけてきた分は天皇皇室制度宮内庁廃止して、その予算で、真面目に働いてきた人を救ってやってほしい。
    • イイネ!6
    • コメント 3件

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