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長崎市の私立高の英語教諭だった30代男性=3月末で退職=が生徒の大学受験対策などのために長時間の残業をしたのに残業代が支払われていないとして、学校法人に未払い賃金と付加金計約800万円の支払いを求める訴えを長崎地裁に起こした。男性は「生徒が合格できるよう懸命に指導してきたのに、適切な対価が支払われていないのは納得できない」と訴える。
提訴は2月25日付。訴状などによると、男性は2012年から勤務。受験対策の指導などに当たった。学期の平日は午前8時15分から職員朝礼、その後夕方まで授業などがあり、放課後も受験対策の補習指導や自習監督などを務め、退勤が午後8時40分を過ぎる日もあった。平日以外にも授業や自習監督、模試監督などの仕事があった。夏・冬休み期間にも補習指導や三者面談などがあり、夏休みには学習合宿もあった。
男性は、残業時間は長い月で休日労働も含め100時間近くに上ったと主張している。
労働基準法は、使用者は、労働者に週40時間を超えて労働させてはならないと規定。国は使用者にタイムカードやパソコンの使用記録などの客観的な方法で労働時間を把握するよう求めている。
しかし、男性によると、学校では20年1月ごろまで労働時間の管理がされておらず、20年2月以降もあらかじめ決められた退勤時刻が校内のホワイトボードに掲示されるなどしただけだったという。
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また、男性は20年2月ごろ、学校側から業務の繁閑に応じて労働時間を配分する1年単位の変形労働時間制を適用すると説明されたが、男性側は、制度導入に必要な使用者と労働者の過半数代表の書面による協定締結や、協定・就業規則の周知などがされておらず無効と訴えている。
男性によると、所定労働時間外の補習指導などについては定額の手当を受けていたものの、法定の割増賃金は受け取っていなかった。男性は24年8月、学校側に未払いの割増賃金を請求。24年12月、「割増賃金」の名目で約26万円の支払いを受けたが、同月支給の冬のボーナスは経営難を理由に前年より約31万円減らされた。
男性側は請求権が残る21年8月以降の未払い賃金に加え、学校側の対応が悪質として付加金の支払いも求めている。教え子の中には難関大に合格した生徒もおり、男性は「教育の質を落とさないためにも『定額働かせ放題』の状況を変えるべきだ」と語る。
学校法人の担当者は取材に「係争中のためコメントは差し控えたい」と答えた。【樋口岳大】
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