約4割が年金「月10万円未満」の衝撃…老後も続く“氷河期世代の貧困スパイラル”

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2025年05月19日 09:30  日刊SPA!

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現在41〜54歳の氷河期世代はまさに“受難の世代”だ。就職難から始まり、なんとか会社に潜り込めても、リストラに怯え、退職後は年金までむしり取られるのは必至。時代に翻弄され続ける彼らの実情に迫った!
◆氷河期世代を襲う年金問題

氷河期世代は「失われた30年」の間、細く険しいイバラの道を歩まされてきた。だが、今後30年もさまざまなリスクが降りかかり、これまで以上に苦境にあえぐことになるかもしれない。

最たる例が年金問題だ。直近の’23年には、平均で月5万7700円の基礎年金(国民年金)を受給できた。夫婦2人世帯では、基礎年金×2人分+夫の厚生年金が支給され、平均で月20万5060円を受け取っている(厚労省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概要』)。

だが、’23年の家計支出の平均は、65歳以上の夫婦2人世帯(無職)で月25万6521円、単身世帯で月14万9286円と、年金受給額を大きく上回る(’24年、総務省『家計調査』)。今でさえ年金だけではとても暮らしていけないのが実情だ。

◆氷河期世代の年金は約4割が月10万円未満

では、氷河期世代が65歳になったとき受け取れる年金はどれほどか。昨年、厚労省が公表した財政検証によれば、氷河期世代(現51歳の場合)の基礎年金は月6万1000円。夫婦2人世帯では月21万7000円となる見込みで、物価上昇などを反映してわずかだが増えている。だが、政府の統計分析に精通する弁護士の明石順平氏は、年金制度のカラクリをこう説明する。

「年金支給額は物価に連動して毎年改定されますが、年金が破綻しないよう、『マクロ経済スライド』によって物価が上昇しても年金の増額が抑制されています。しかも、物価上昇率が賃金上昇率を上回った場合、賃金上昇率に連動する仕組みなので、年金受給額はより少なく抑えられてしまうのです」

額面が増えても、物価上昇分を補えるほど増えない制度設計になっているのだ。

「実際、’25年度は物価上昇率が賃金上昇率を上回りましたが、賃金上昇率(=2.3%)そのまま年金額が上がるわけではない。ここからスライド調整率0.4%が差し引かれ、年金の改定率は1.9%に減じられている。『マクロ経済スライド』という名前は欺瞞そのもの。『年金実質減額スライド』と呼ぶべきです」(明石氏)

そもそも非正規雇用が多い氷河期世代は、ほかの世代と比べて年金額が少ないのに、実質減額されるのだ。しかも、前述した年金額はあくまでも平均。氷河期世代の大学新卒就職率は低く、現在も非正規雇用を余儀なくされている人も多い。経済的余裕がなく、国民年金の未納・免除率は50%を超えている。厚労省の試算では、氷河期世代の18.1%が月7万円未満、39.1%が月10万円未満の年金しか受け取れないという。

年金制度には第3号被保険者の問題もくすぶる。「3号」は会社員の妻で、年金保険料の納付が免除されたフリーライダーと言っていい。近年、国会で廃止が検討されるものの先送りが繰り返されている。

「700万人以上いる第3号被保険者の反発を恐れ、手をつけられないのでしょう。廃止になれば第1号被保険者として国民年金保険料を納付することになる。そうなれば、月1万7510円の保険料を納めなければいけない」(同)

また、仮に廃止によって年金支給が完全に打ち切られれば、月6万1000円もの収入減となる。

◆医療、介護、福祉でもリスクが降りかかる!?

高齢になるにつれ医療費も家計に重くのしかかる。今年3月、政府は高額療養費制度の自己負担額引き上げを目指したが、がん患者団体などから「国家的殺人未遂」など反対の声が上がり見送られた。氷河期世代が老後を迎える頃にはどうなっているのか。生活経済ジャーナリストの柏木理佳氏は解説する。

「生涯にかかる医療費の6割は、65歳以降に発生します。そんな高齢者が今後激増するのだから、患者負担額の引き上げは避けられないでしょう。今回見送られた高額療養費制度の引き上げが実施されれば、高収入とは言えない年収260万〜370万円の人でさえ、月額で上限5万7600円だった自己負担額が7万9200円に上がり、月2万1600円の負担増になります」

高齢化大国・日本では要介護の高齢者も増える。65歳以上の介護保険料もすでに過去最高の月6225円(全国平均)に上がっている。

「介護費用は、介護保険制度ができた’00年度から約3.7倍に急増してます。これを賄うため65歳以上の介護保険料も’00年度の月2911円から倍以上に高騰しており、厚労省によれば氷河期世代が65歳になる’40年には9000円を超える。少なく見積もっても、月3000円ほど出費が増えることになります」(柏木氏)

年金は実質減額され、公的負担は増すばかり……。氷河期世代には次々と老後マネーリスクが降りかかる。もし老後破綻に陥ったとき、最後のセーフティネットとなるのが生活保護だ。

「’24年の生活保護の申請件数は25万件超と過去最多。特に、非正規雇用や国民年金の未納が多い氷河期世代の“生活保護予備軍”は170万人という試算もあり、これは’24年の全受給者数201万人の8割強に当たる。社会保障予算では到底賄えません。生活保護要件の厳格化が予想され、セーフティネットからこぼれ落ちる氷河期世代が増える危険性がある。皮肉にも、ちょうど彼らが65歳を迎える’40年頃に、日本の社会保障制度の破綻リスクが高まるのです」(同)

実務で貧困問題にも取り組む明石氏はこう続けた。

「氷河期世代は未婚率が高く、子供がいない人も多い。経済的に頼れる人がおらず、働けなくなることが死に直結するリスクが非常に高い。万一の場合、生活保護に頼るしかないが、捕捉率は15〜20%と先進国でも突出して低く、行政が積極的とは言い難いのです」

氷河期世代のイバラの道はさらに続くということだ。

【弁護士 明石順平氏】
1984年生まれ。東京都立大学法学部を卒業、法政大学法科大学院を修了。主に労働事件、消費者被害事件を担当。ブラック企業被害対策弁護団所属

【生活経済ジャーナリスト 柏木理佳氏】
NPO法人マネー・キャリアカウンセラー協会代表。新著『共働きなのに、お金が全然、貯まりません!』(三笠出版)ほか著書多数

取材・文/週刊SPA!編集部 イラスト/神林ゆう

―[[氷河期貧困]の実態]―

このニュースに関するつぶやき

  • 働ける限り働けば良いだけ。「働かない」事と「働けない」事の違いをもっと明確にし、働けるのに働かない奴らを飼うのはやめにしないと財政がもたないよ。
    • イイネ!10
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