
外国人選手の出来が、チームの浮沈に及ぼす影響は小さくない。今季も数多くの外国人選手が試合に出場しているが、ここまでの働きぶりはどうなのか。かつて大洋ホエールズ(現・横浜DeNAベイスターズ)で活躍し、現在は野球解説やYouTubeでも活動する高木豊氏が、外国人選手(野手/投手)の評価をチームごとに4段階【◎、〇、△、×】で評価した。
(※)成績は5月18日時点。一軍での出場がない選手、出場試合数が少ない選手に対してのコメントは省略(成績のみ掲載)しているが、評価の対象。育成選手は評価の対象外。
◆巨人【野手〇/投手〇】
「トレイ・キャベッジ個人は◎です。逆方向にもわりといい当たりを飛ばしますし、けっこう足も使ってきます。単に打つだけではありません。ケガで離脱した期間がありましたが、来日1年目にしてよくやっていると思いますよ。
エリエ・ヘルナンデスは守備のミスが目立ちます。バッティングはこれから状態が上がっていくような気はしますが、相手からも研究されて苦しんでいますね。
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投手では、フォスター・グリフィンは安定感がありますよね。何日も前から登板することがわかっていたはずの開幕2戦目を体調不良で投げられなかった時は、「プロとしてどういう調整をしてきたんだ」と思いましたが、5月に入ってからはよくなりました。
カイル・ケラーは昨年ほどの勢いがありません。球種が少ないピッチャーなので相手チームも慣れてきたのかなと。あと、今年はコントロールもあまりよくないです。アルベルト・バルドナードは外国人枠の争いでケラーに負けましたし、制球難が課題です。2人は競争しているので、バルドナードの状態が上がってくるとケラーもよくなると思いますけどね。
ライデル・マルティネス個人は◎でしょう。防御率0.00で救援失敗がありませんから。肩が十分に準備できず少し慌てて出た時もあったのですが、その時も落ち着いていました」
<評価対象となった助っ人の成績>
(New/野)キャベッジ 33試合 打率.277 6本塁打 15打点 出塁率.338
OPS.807
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(野)ヘルナンデス 33試合 打率.206 1本塁打 6打点 出塁率.286 OPS.575
(投)グリフィン 4試合 3勝0敗 防御率0.90 QS率66.7
(投)ケラー 14試合 1勝0敗 1ホールド0セーブ 防御率4.97
(投)バルドナード 2試合 0勝0敗 1ホールド0セーブ 防御率6.75
(投)マルティネス 18試合 1勝0敗 2ホールド14セーブ 防御率0.00
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◆阪神【野手×/投手△】
「投手のジョン・デュプランティエ個人は◎です。野手に足を引っ張られたりしなければ、もう少し勝っていてもいい。真っすぐも変化球もすごくいいと思いますし、何よりもコントロールがよくて安心して見ていられるピッチャーです。
一方、ジェレミー・ビーズリーはボールのキレもコントロールも本来のピッチングができていません。先発から中継ぎに配置転換になり、また先発に戻るという状況がどう影響するのか。
ハビー・ゲラは本来の調子には程遠いです。あと、使われ方がちょっと酷でしたよね。間隔を詰めて投げさせたほうがいいピッチャーと開けたほうがいいピッチャーがいますが、ゲラは後者だと思うんです。三振を取ったのにファウルとジャッジされて、そこから崩れていったっていう不運もありましたけどね」
<評価対象となった助っ人の成績>
(New/野)ヘルナンデス 1試合 打率.000 0本塁打 0打点 出塁率.000 OPS.000
(New/投)デュプランティエ 5試合 1勝1敗 防御率1.00 QS率40.0
(投)ビーズリー 5試合 1勝1敗 防御率4.00 QS率0.0
(投)ゲラ 6試合 0勝1敗 1ホールド0セーブ 防御率13.50
(New/投)ネルソン 現段階で一軍での出場なし
◆DenA【野手△/投手◎】
「タイラー・オースティンは、打順に入るだけで安心感と存在感があるので〇なのですが、故障していましたから△です。今年の初本塁打がやっと出たので、これから状態を上げていってほしいと思います。
投手では、アンドレ・ジャクソンとアンソニー・ケイは毎度試合を作っていますし、安定感抜群。2人とも◎でしょう。もっと勝っていてもおかしくないですが、最初は打ってくれませんでしたからね。ケイは精神的にも落ち着いていますし、フォアボールが減ったことも安定している要因です。
トレバー・バウアーは好不調の波が激しいです。年俸から考えても勝ちを先行させて貯金を作ってもらわないといけないピッチャーですし、もう少し安定感がほしい。投げたい球を投げるのはピッチャーの特権ではありますが、あれだけ首を振るというのはプライドが邪魔をしているんじゃないかと。カーッとなったら首を振りますよね。素直に要求されるボールを投げてみることも大事です。
ローワン・ウィックは球威がありますし、大事な場面で根負けすることなく三振を取れます。出遅れていましたが、彼が帰ってきてから中継ぎ陣が心強くなりましたね。その印象を与えるだけでも全然違うし、抑えを任せてもいいくらいです」
<評価対象となった助っ人の成績>
(野)オースティン 17試合 打率.217 1本塁打 8打点 出塁率.338 OPS.688
(投)ジャクソン 7試合 3勝1敗 防御率1.24 QS率85.7
(投)ケイ 6試合 3勝1敗 防御率0.86 QS率100.0
(投)バウアー 7試合 2勝3敗 防御率3.67 QS率57.1
(投)ウィック 12試合 2勝0敗 7ホールド1セーブ 防御率0.69
(投)ディアス 現段階で一軍での出場なし
◆広島【野手〇/投手△】
「サンドロ・ファビアン個人は◎です。バットが素直に出てきますし、ヘッドの使い方がうまく、大振りしなくても飛距離が出ます。最初は様子見も含めて下位打線からスタートしましたが、今や不動の3番ですからね。守備も献身的で手を抜きません。たまに打球判断をミスして飛び込んで後ろにそらしたりしますが、よくやっていると思います。シーズンを通してどのくらいの数字を残してくれるか楽しみです。
エレウリス・モンテロは故障で離脱していた期間がありましたから評価が難しいですが、初本塁打も出ましたし、やはりパワーがあります。これから状態が上がっていくんじゃないですか。同じドミニカ出身のファビアンの活躍もいい刺激になると思います。
投手のジョハン・ドミンゲスは球威がありますし変化球も多彩なのですが、コントロールに不安があって球数が多くなりがちです。クイックができないのも厳しい。
テイラー・ハーンは実力を考えるともう少し安定して抑えてほしいのですが、コントロールを乱しての自滅もあります。いい時は大ピンチでもピシっと抑えますが、悪い時との差が激しいです。8回などを任せるピッチャーに調子の波があると困りますよね」
<評価対象となった助っ人の成績>
(New/野)ファビアン 40試合 打率.329 4本塁打 20打点 出塁率.349 OPS.815
(New/野)モンテロ 9試合 打率.188 1本塁打 5打点 出塁率.278 OPS.590
(New/投)ドミンゲス 4試合 1勝0敗 防御率2.18 QS率25.0
(投)ハーン 14試合 1勝1敗 8ホールド1セーブ 防御率5.14
◆ヤクルト【野手◎/投手☓】
「ホセ・オスナはこれまでのシーズンと変わらず一生懸命やってくれています。村上宗隆をはじめ故障者が多いなか、『自分が打たなければ』という気持ちは強いでしょうし、かかる比重は相当大きいはず。それと、オスナの場合は実績があって、シーズントータルの数字を持っています。シーズンの戦い方もわかっているでしょうし、ある程度の数字は残してくれるだろうという期待もこめて〇です。
ドミンゴ・サンタナは出だしで少しつまずきましたが、状態を上げてきたのはさすがです。サンタナもオスナと同様に実績がありますからね。
投手のピーター・ランバートは球威はあるのですが、1イニングに3暴投したり、コントロールが不安です。つかみどころがないピッチャーなんですよ。いい感じで投げているのかどうかもわかりませんし。ヤクルトは先発の台所事情が苦しいですから、もう少し安定してほしいところです。
マイク・バウマンは6回登板(投球回は5.1)して3本ホームランを打たれています。真っすぐを狙って打たれているというか、簡単に打たれてしまっているので、もう少し慎重さがほしいです。ペドロ・アビラはまだ1回先発しただけですが、初回以外は安定していましたし、球種が多彩で特に落ち球がよかった。次のピッチングに期待できます」
<評価対象となった助っ人の成績>
(野)オスナ 36試合 打率.261 2本塁打 16打点 出塁率.309 OPS.657
(野)サンタナ 36試合 打率.308 3本塁打 10打点 出塁率.404 OPS.842
(New/投)ランバート 5試合 1勝3敗 防御率3.29 QS率60.0
(New/投)バウマン 6試合 0勝1敗 0ホールド0セーブ 防御率6.75
(New/投)アビラ 1試合 0勝1敗 防御率1.50 QS率100.0
◆中日【野手△/投手△】
「ジェイソン・ボスラーは故障から戻ってきてすぐにホームランが出て、タイムリーが決勝点になるなど、いい場面での一打がありました。以降は苦しんでいますが、バッティングは悪くないと思うんです。チーム事情でファーストやサードなどポジションが固定されていませんが、やはり神経を使いますし、できれば固定してあげたほうがバッティングにも好影響を与えると思います。
オルランド・カリステは徐々に状態が上がってくるんじゃないですか。状態がひどいわけではなく、彼のペースなんだと思います。いきなりガーンと打ってそれを維持するタイプと、ぼちぼち打ちながら調子を上げていくタイプがいますが、カリステは後者だと思うので。チームにとって必要な選手になってきていますし、状態を上げていってほしいです。
投手のカイル・マラーは開幕前の評価は高かったですが、勝てていません。投げているボールは悪くないのですが、クセなどを見抜かれている可能性があるんじゃないですかね。それと、打線が点を取ってくれないのが厳しい。先制点を取って楽に投げさせてあげたいですよね。
ウンベルト・メヒアは評価が難しいピッチャーです。好投していたと思えば、突然崩れますから。真っすぐであまり空振りが取れない印象もありますし、どちらかといえば打たせて取るタイプ。なので、コントロール次第じゃないですか。
ユニオル・マルテはDeNAの度会隆輝や巨人の大城卓三に簡単にホームランを打たれたように、力任せなんです。球速は出ていますが、ボールがあまり"きていない"のか、バッターが嫌がっていません。終盤の大事なイニングを任されていますし、もう少し慎重さが必要です」
<評価対象となった助っ人の成績>
(New/野)ボスラー 24試合 打率.202 2本塁打 9打点 出塁率.239 OPS.560
(野)カリステ 33試合 打率.232 0本塁打 9打点 出塁率.276 OPS.571
(野)ロドリゲス 3試合 打率.000 0本塁打 0打点 出塁率.000 OPS.000
(投)メヒア 3試合 1勝2敗 防御率6.62 QS率33.3
(New/投)マラー 4試合 0勝2敗 防御率5.95 QS率25.0
(New/投)マルテ 16試合 0勝2敗 10ホールド1セーブ 防御率2.87
(New/投)ウォルターズ 現段階で一軍での登板なし
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【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。