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プリキュアシリーズの売上が、ここ5年で最高の数字となっています。
【画像】2024年 バンダイのプリキュアシリーズのトイホビー売り上げ
2024年度は「わんだふるぷりきゅあ!」の変身アイテムの躍動、そして「大人向け施策」の成功によりキャラクターグッズ、関連商品の売上が大きく伸びました。
いま、プリキュアは「子ども向け」と「大人向け」の両輪で、幅広い世代の心をつかむコンテンツへと成長し続けています。
バンダイナムコホールディングスおよび東映アニメーションの決算資料をもとに、現在のプリキュアの状況を見ていきたいと思います。
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2025年5月9日、バンダイナムコホールディングスの2025年3月期の決算数値が発表となりました(これは2024年4月〜2025年3月までの数字で、主に「わんだふるぷりきゅあ!」の放送時期です)。
プリキュアのトイホビー売り上げは78億円。前年の64億円から14億円増(121.9%)と大幅アップとなりました(※トイホビー売り上げは「玩具」のほか、文具、生活用品、食玩なども含みます)。通期見込み75億円に対し、78億円での着地は「予想よりも売れていた」と言えます。
これは過去5年間においては最も高い数字となり、新型コロナ禍による低迷からの完全復活を印象付けるものとなっています。
トイホビー売り上げ好調の要因の一つとして、玩具業界誌によると「変身アイテム」が好調に推移したことが挙げられています。
「わんだふるぷりきゅあ!」では「カラフルエボリューション変身ワンダフルパクト」と「PrettyHolicシャイニーキャッツパクト」の2アイテムを発売、共に好調に推移しました。
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特に「シャイニーキャッツパクト」はコスメとして実際に使用できる実用性と、そのデザイン性の高さから、子どもたちだけではなく大人のファンにも波及し一時期は入手困難になるほどの人気となりました。
近年のプリキュアの玩具は特にクリスマス商戦に弱く、それも苦戦の一要因だったのですが、今回の「変身アイテム好調」は放送終盤まで続いたようで、玩具業界誌においても「年末年始商戦でも変身アイテムが前年を大きく伸ばした」との報告があります。
また、プリキュアシリーズは期間内の金額ベースでは前年並みの実績でしたが、変身アイテムの販売数量では前年を大きく伸ばし、通期でも好調に推移したと考えています。
2024-2025年末年始商戦総括
バンダイ トイ事業部 国内営業チームマネージャー・若月泰憲氏
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『月刊トイジャーナル2025年2月号』(東京玩具人形協同協会)P24
また、前作(ひろがるスカイ!プリキュア)の変身アイテム「変身スカイミラージュ」が定価7920円と高価格帯だったのが、ワンダフルパクトは定価4730円、シャイニーキャッツパクトは定価3350円と価格設定を下げ、手にとりやすい価格にしたことも好調の要因の一つだと思われます。
一方で、高額な「液晶アイテム」や「ぬいぐるみ玩具」が期待値に届かなかったとの報告もあります。
前作に関しては「変身アイテムを中心に好調な実績を残した一方で、ぬいぐるみや液晶玩具などが期待値に届かないなど、課題も残った」と語る。
『月刊トイジャーナル2025年2月号』(東京玩具人形協同協会)P9
例えば「あつめておせわしよ キラニコトランク」は定価1万円を超える高額なアイテムとなっていて、世間的な節約志向の流れもあり伸び悩んでしまったようです。 プリキュアの高価格帯玩具の商品展開には課題も残りました。
一方、プリキュアのアニメを制作している「東映アニメーション」の決算数値も2025年5月9日に発表になりました。
プリキュアの国内版権売り上げは8億1200万円。こちらも2024年の6億6300万円から122.5%と大幅な上昇。
バンダイナムコのトイホビー同様、ここ5年でも最高の数値となっています。
この時期は「わんだふるぷりきゅあ!」に加え、2025年1月よりプリキュア初の大人向けの続編「魔法つかいプリキュア!!〜MIRAI DAYS〜」(以降まほプリ2)も放送され、その関連グッズおよびイベントなども売り上げを後押ししたようです。
プリキュア国内版権の好調の要因として、決算補足資料(PDF)では「ショップ事業、EC事業の好調」が挙げられています。
「ワンピース」、「プリキュア」シリーズにおけるショップ事業、EC事業の好調継続により、増収見込み2025年3月期 通期 決算補足資料(PDF)より
ショップ事業の好調とは、つまり「プリキュアプリティストア」を中心にした、缶バッジやアクリルスタンドなどの「キャラクターグッズ」の販売が好調に推移したことを示しています。
2024年は「わんだふるぷりきゅあ!」に加え「まほプリ2」のグッズ、イベント展開も行われ、全国各地で、描きおろしイラストを使用した多くのPOPUPストア、コンセプトカフェの開催、2024年12月には新宿バルト9での上映会イベント、さらにカラオケ店とのコラボは2つも行われるなど、怒涛(どとう)のイベント展開を見せ、数多くのグッズが市場をにぎわせました。
また、EC事業(通販)も好調だったようです。かつては全国に数店しかないショップに行かないと買えなかった数々のプリキュアグッズも、ここ数年は通販で買える様に整備されてきています。 これらが売り上げを押し上げた要因の一つとなっているものと思われます。
昨今のプリキュアの勢いを後押ししているのに「大人向け」施策があります。
先般の「まほプリ2」では多数のグッズ展開に加え、2025年5月には東京のシアターGロッソで「後夜祭」イベントも開催されました。
さらに、放送10周年の「ハピネスチャージプリキュア!」でも「ファンミーティング」イベントが2024年12月に東京で行われ、こちらも当時のファンが集結し大成功を収めました。
昨今は秋のライブイベント、冬の感謝祭イベントに加え、夏に大人をメインターゲットとしたライブハウスでのライブイベントも恒例となってきました。
イベントの他、例えば食玩に目を向けると、過去作がラインアップされたウエハース食玩が大人にも大人気です。すでに第11弾まで発売され、目当てのキャラを集めるため「大人買い」するファンも多く見られます。
これらの大人向け施策により、従来のファミリー層と、大人ファン層という異なる購買層がそれぞれ活性化していくという、理想的な形が生まれているのです。
また今後のプリキュアの売り上げの鍵を握るビッグコンテンツも始動しました。
2025年4月から展開の始まった「ぷちきゅあ」です。
プリキュアシリーズに登場した妖精を使用したキャラクターコンテンツで、YouTubeでの動画配信、おもちゃ、ぬいぐるみや食玩の多くの展開が始まっています。
「すみっコぐらし」や「ちいかわ」などのキャラクターIPの市場は大きな可能性を秘めています。
玩具、雑貨、文具などの展開にとどまらず、例えば映画「すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」は観客動員数100万人を突破、興行収入も約14億5000万円とプリキュア映画を凌ぐものとなっていて、その可能性は計り知れません。
これまでのプリキュアの購買層に加え、キャラクターグッズ好きの層や、海外勢など多くの幅広い層を取り込むことが期待されます。
「ぷちきゅあ」の今後の展開にも期待したいですよね。
2024年度のプリキュアは子ども向け、大人向けの両面で大きな成果を上げた1年でした。
ニチアサでの「子ども向けプリキュア」を大きな柱としつつ、過去のプリキュア資産を生かした「大人ファン」向けの多彩なイベント、キャラクター商品の戦略で大きな盛り上がりを見せました。
2025年「キミとアイドルプリキュア♪」では、子どもたちにプリキュア流の「推し活」を提示、「応援する事の楽しさ」を伝えます。さらにキャラクターIP「ぷちきゅあ」も加わりプリキュアは世代をつなぐコンテンツとして進化を続けています。
これからも、どんな新しい魅力を見せてくれるのか楽しみですよね。
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