効果は期待できると言うけれど… 美容先進国と言われる韓国発のスキンケア商品が、幅広い世代でトレンドとなっています。特に美容液は“高濃度”をうたった商品が多く、肌の悩みと成分のマッチングがわかりやすく提示されています。SNSなどでは、「日本のものより効果が高いのでは?」と言われることもありますが、高濃度ゆえのリスクはないのでしょうか。クリニックフォア監修医兼ナチュラルスキンクリニック院長の皮膚科医・圓山尚(えんやまたかし)先生に聞きました。
【一覧】刺激が強すぎることも? 気を付けたいスキンケアの成分■効果も期待できるが刺激も…、「肌トラブルを起こして、皮膚科を受診するケースも」
――最近はSNSの影響で韓国発の美容液が大流行しています。韓国と日本のスキンケア商品は、どこが違うのでしょうか?
「全体的な傾向として、韓国は“攻め”のスキンケア、日本は“守り”のスキンケアという印象がありますね。韓国発の美容液には特定の成分を大量に配合した、高濃度をアピールしたものが目立ちます。一方で日本のスキンケアは“赤ちゃんでも使える”といった低刺激をうたったものが多いですね」
――高濃度であれば、それだけ効果も高いのでしょうか。
「肌質にもよります。濃度が高いということはそれだけ刺激も強いわけですから、お肌が敏感な方はヒリついたりかぶれたりすることもあります。実際、韓国のスキンケア商品で肌トラブルを起こして、皮膚科を受診するケースもあります」
――特に気をつけたほうがいい美容成分はありますか?
「ビタミン系なら大丈夫だろうと思われがちですが、多く配合されていればやはり刺激も強くなります。たとえばビタミンAの一種であるレチノールは、ターンオーバーやコラーゲンの成分などさまざまな美容効果が期待できる成分でもありますが、赤みや乾燥といったトラブル例も少なくありません。一概に韓国スキンケア商品を否定するわけではありませんが、肌が敏感な方は使用前には必ずパッチテストをするなど、慎重にお使いになることをおすすめします」
――韓国発のスキンケア商品で、“塗る美容針”をうたったものも増えています。どのようなもので、どんな効果が期待できますか?
「海綿生物から採取した微細な針によって、美容成分を肌に浸透させやすくするというものですね。針の刺激によってコラーゲンの生成が促され、肌のハリを与えてくれるとも言われています。ある意味で力技というか、まさに攻めのスキンケアの発想ですね。ただ微細ではあっても針は針ですので、チクチクとした刺激はあります」
――使用する上での注意点はありますか?
「慢性的な肌の摩擦はシミや肝斑の原因になるので、擦ったり、擦り込んだりしないよう注意が必要です。それと引き換えにしても肌にハリを与えたいという希望があれば、攻めてみるのもいいのかもしれませんが…。特に若い方は、そこまでしなくていいほど肌にコラーゲンがしっかりあります」
――韓国系スキンケアは特に若い世代に人気がありますが、むしろミドル世代以上におすすめということですか?
「若い方はなるべく肌を傷めない、それこそ“守り”のスキンケアがいいと思います。一方、年齢を経てタルミやシワが気になってきたら、ある程度は高濃度のものでないと思った効果は得られないかもしれません。ただ、それでも肌が敏感な方はあまり刺激のない成分を選んだほうがいいと思います。たとえば美白成分として?気のハイロドキノンも刺激が強いので、もう少し優しいコウジ酸を選んでみるなど、選択肢は1つではないということを知っておくといいでしょう」
■医師の間では賛否両論の成分も、“攻め”の韓国か“守り”の日本か――
――韓国スキンケアの進化は目覚ましく、「最新の美容成分」をうたった商品が次々と登場します。この風潮を先生はどう見ますか?
「昔から美容やスキンケアにはトレンドがあります。最近だと、魚介から抽出したDNAの断片であるPDRNが韓国発のスキンケア商品をきっかけに何度目かのブームになっています。ただ効果については医師の間では賛否両論と言いますか、私はどちらかというとやや懐疑的です」
――賛否両論があるのに、なぜブームになるのでしょうか。
「やはり、有名な先生やインフルエンサーが発信するからでしょう。特に最近はSNSの影響が大きいですね。ブームや流行は作り出される面もあります。もちろんそれが悪いわけではありませんが、あまり影響を受けすぎず、ご自身で判断できるようにしたほうがいいのではないでしょうか」
――ブームやトレンドではなく、本質的に効果のあるものを選ぶにはどうしたらいいのでしょうか。
「昔から使われている成分を選べば、間違いはないと思います。昔からあるものは長年の使用に耐え抜き、かつエビデンスやデータが蓄積されているわけで、その上で今も生き残っているということは真実に近いと思うんですね。もちろん“最新の美容成分”が悪いわけではなく、あくまでデータが蓄積されていないというだけではありますが、安心を求めるなら古参に勝るものはありません」
――日本の“守り”のスキンケアにもメリットはあるということですね。
「国産品は日本人の肌に合わせて配合されているはずですから、肌への負担は圧倒的に少ないと言えると思いますね。もし、それでは物足りないのであれば、“攻め”と“守り”のいいとこ取りとも言える医療機関専売のドクターズコスメを検討してみてもいいと思います。医師の管理のもと肌の悩みに合わせた処方をするので、効果と安心感の両方を求めるのあれば、皮膚科の診断をおすすめします」
【監修】
圓山 尚(えんやまたかし)
ナチュラルスキンクリニック院長兼クリニックフォア監修医。金沢医科大学医学部卒業後、日本医科大学附属病院皮膚科に入局し皮膚科・皮膚外科・レーザーを中心とした診療を行う。その後、湘南美容クリニックでの勤務を経て、2019年にクリニックフォア新橋院を開院。現在はクリニックフォア監修医と永福スキンクリニック(現ナチュラルスキンクリニック)の院長を務め、”美のかかりつけ医”として活動している。
(文:児玉澄子)