SVリーグ女子の最強ルーキー3人 日本バレーボール界の将来を担う内定選手にも注目

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2025年06月02日 10:00  webスポルティーバ

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 大阪マーヴェラスの優勝で1年目のシーズンを締めくくったSVリーグ女子。男子と同じく10月の開幕から5月のファイナルまでの8カ月という長い期間で、多くの熱戦を繰り広げた。

 なかでもルーキーイヤーを華やかに駆け抜けた3人+内定選手ながら期待の大きいひとりを紹介する。
※所属は2024−25シーズン

佐藤淑乃(さとう よしの/NECレッドロケッツ川崎)

 女子のルーキーのなかで圧倒的な存在感を示したのが、NECレッドロケッツ川崎の佐藤淑乃だ。昨夏のパリ五輪を最後に引退した古賀紗理那だけでなく、これまでNECレッドロケッツ川崎を象徴する選手たちがつけてきた背番号「2」を背負う。それだけでも期待の表われだが、今季はレギュラーラウンド44試合とファイナルまでのチャンピオンシップ7試合を含む、51すべてに出場。総得点で全体3位につけた攻撃面に加え、サーブでも得点を重ねチームを勝利に導いた。

 しかし、意外にもルーキーイヤーの目ざましい活躍を佐藤は慎重に捉えている。振り返るのは、筑波大在学時から内定選手としてNECに合流した昨シーズンだ。

「試合に出られるのはピンチサーバー(リリーフサーバー)としてだったので、チームの戦力になれたか、と言えば全然。紗理那さんのすごさをただ見ていただけでした」

 2018年に日本代表へ選出され、世界選手権にも出場した。そこでもリリーフサーバーとして、サービスエースを取るなどの活躍を見せたが、佐藤にとっては「何もできなかった」と語る苦い記憶だ。その悔しさを糧に、筑波大4年時、最後の全日本インカレでは自身初の日本一という最高の形で学生生活を締めくくれたからこそ、ひとつ上のステージでも即戦力になりたい、と強く望んでいた。

 そして、さらなる成長を誓い臨んだのがSVリーグ初年度シーズンであり、攻撃面ではフロントだけでなく強烈なバックアタック、そしてディフェンス面でもサーブレシーブを担い、まさに好守の要として欠かせぬ存在として活躍し続けた。

 しかし、SVリーグのファイナルで大阪マーヴェラスに敗れ「まだまだ自分の弱さが出た」と試合直後のコートだけでなく、試合後の記者会見でも涙で言葉を詰まらせた。

 この悔しさから、きっとまだまだ強くなる佐藤は、今季の日本代表でもエース候補に名乗りを上げる。

石倉沙姫(いしくら さき/デンソーエアリービーズ)

 京都橘高から日体大を経て、デンソーエアリービーズへ。昨シーズンの終盤から内定選手として出場機会を増やしてきたが、ルーキーイヤーの今季はアウトサイドヒッターとしてレギュラーラウンド44試合、チャンピオンシップの5試合のすべてでベンチに入り、大半の試合に出場した。

 サーブレシーブから前衛、後衛を問わず攻撃参加をして、託されたトスを打つ。攻撃力の高さに加え、目を引くのはサーブだ。ジャンプフローターサーブの選手が多いなか、ジャンプサーブを武器に何度も相手の守備を崩し、開幕からの9連勝に貢献した。

 会場を沸かせるジャンプサーブは石倉の武器として鮮烈な印象を残したが、石倉は「サーブが全然入らなくて、実はサーブを打つのが怖くなってしまった時期もあった」と明かしたこともある。一度感覚を失うとなかなか取り戻せず、サーブミスを繰り返す選手も少なくないが、石倉は状況を打開するために「まず、思いきり打つことから始めた」という。うまくいかないことに落胆するだけでなく、攻めを忘れず原点に立ち返る。ミスを恐れず攻め続けた結果が、ルーキーイヤーの活躍にもつながった。

 日体大では4年時に主将も務めた。後輩からの人望も厚く、優勝した東日本インカレではMVPも受賞。苦しい状況でもトスを呼び、「つないだボールを決めるのがエースの役目」とコート上でのリーダーシップもいかんなく発揮した。

 デンソーには、京都橘高の先輩でチームの主将を務めるリベロの川畑遥奈や、ブラジル代表で日本でのプレーは2シーズン目を迎え、最多得点で全体2位にランクインしたロザマリア・モンチベレルなど、自らのプレーや振る舞いでチームを束ねるリーダーがいる。そんな選手たちとプレーをしていくなかで、石倉はどんなふうに開花していくのか注目したい。

大山遼(おおやま はるか/大阪マーヴェラス)

 大山遼は佐藤と筑波大の同期で、佐藤、石倉とともにユニバーシアード日本代表のメンバーにも選出されたミドルブロッカーだ。就実高、筑波大ではセッター対角のライトポジションに入っていた経験もあり、速さだけでなく高いトスもしっかりと叩ける。大阪マーヴェラスでは入団当初、さまざまなポジションに挑戦する選択肢を与えられていたが、大山自身が強く望みミドルブロッカーに専念。リーグ中盤から出場機会を増やし、ブロック、スパイクと攻守にわたり貢献した。

 攻撃力の高さを警戒し、大山が前衛時にはショートサーブで狙われる回数も多いが、ディフェンスも含めた器用さを随所で発揮。自らレシーブして多彩な攻撃を展開した。「得意ではない」と言いながらも難なくレシーブをしてから攻撃に入る姿は、堂々たるもの。

「自分を活かすことはもちろんだけれど、周りの攻撃を活かすためにも自分ができることをやる」と話すように、大きく崩れることのない安定感と献身的なプレーも大山の持ち味だ。

 高校、大学時代にそれぞれ日本一を経験し、SVリーグでもルーキーイヤーの今シーズン、ファイナルでNECに連勝して、頂点に立った。攻守においてレギュラーシーズン同様、ミスが少なく着実に決めるスパイク力や、劣勢もはね返すブロック力が光ったが、ファイナルではサーブで立て続けにブレイクポイントを上げ、試合序盤からチームに流れをもたらした。

「自分でもあんなにサーブを打ち続けたことはないんじゃないか、と思うぐらい決まった。ミドルは後衛になったらリベロと代わるので、サーブで1点でも多く取って代わろう、という気持ちが形につながってよかったです」

 試合後に笑顔で優勝の喜びを噛みしめるとともに、もう1つ、別の喜びも噛みしめていた。大学4年間を共に過ごした佐藤と、SVリーグの決勝という大舞台で対戦できたことだ。大学時代は大山、佐藤がともに「お互いが苦しい時に一番助けてくれる存在」と口にしてきたが、今ではライバルとしてネットを挟み対峙。自らのサーブで佐藤を狙う場面もあり、「こうして戦うライバルになったんだ、と実感した」と言い、「2人とも次のステージで戦えている、ということが何よりうれしかった」と笑みを浮かべた。

 盟友とともにさらなる成長を、どれほど見せてくれるのか期待したい。

秋本美空(あきもと みく/ヴィクトリーナ姫路)

 厳密に言えば"ルーキー"ではなく、高校在学中にSVリーグに出場した内定選手というくくりではあるが、今年1月の春高を制したあと、鮮烈なデビューを飾った秋本美空もこれからのSVリーグ、女子バレーをけん引する選手になるであろう期待を抱かせる選手のひとりだ。

 共栄学園高卒業式を終えた翌日にヴィクトリーナ姫路へ合流し、3月8日のNEC川崎戦でデビュー。途中交代で投入された直後、サーブ、スパイクでなかなか点を獲れずほろ苦いデビュー戦となったが、折れることなく終盤にかけて活躍の機会を自らの手でもぎ取った。

 185cm、待望の大型スパイカー。元日本代表で活躍した母・愛さんの存在もあり常に注目を集める存在だが、話題性だけの選手ではない。共栄学園高では、高校生のなかで屈指の高さを活かしたスパイク、ブロックで注目を集めたが、1年時にはスパイカーだけでなくセッターとしてもプレーした器用さも持つ。1年時から試合に出場し続けてきた経験を力に、主将となった3年時には頼れるキャプテンとしてチームをけん引し、春高優勝に導いた。

今季は日本代表にも選出され、ここからさらに経験を重ね、大きな成長を遂げていくことも想像に容易い。アンダーカテゴリーとは異なる"世界"でどんな武器を得て、どれだけの成長を遂げていくのか。可能性は広がるばかりだ。

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