
クックパッド初代編集長の小竹貴子が、家庭の食卓の今を見つめ、食の未来を探る連載。今回は、データから読み解く「お米」の再評価と、そこに見えてきた“朝ごはん”との意外なつながりに迫ります。
パスタにジャスミンライス、オートミール。主食のバリエーションは増えている。そんな中で今、「米」への注目が高まっているのはなぜか——。
米の価格が上がり、米の話題が増えている
ここ最近、“米”にまつわる話題を目にする機会が増えています。
米の価格高騰、政府による備蓄米の放出、そして「主食をどうするか」という日々の暮らしに直結する選択。
クックパッドにも、「米の節約法」や「米の代わりになる食材」についての問い合わせが増えてきました。
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実際、検索データを見てみると、「ジャスミンライス」「パスタ 米代用」「オートミールごはん」など“米に代わるもの”を探す動きが着実に伸びていることがわかります。食の選択肢が広がり、ライフスタイルや価値観も多様化する中で、「ごはん一択」だった時代は終わりを迎えつつあるのかもしれません。
それでもなお、日本の食卓にとって“米”はやはり特別な存在です。
献立を考えるとき、「主菜に何を合わせよう」ではなく、「ごはんに合うおかずは何か」と考える人も多いのではないでしょうか。“米じゃなくてもいい”時代に入った今もなお、「やっぱりごはんが食べたい」と感じる瞬間は、私たちの日常にしっかりと根づいています。
何でもない朝にこそ、お米が恋しくなる?
こうした“米離れ”の動きがある一方で、少し意外なデータも見えてきました。クックパッドの検索データサービス「たべみる」で分析してみると、長らく減少傾向だった米関連の検索が、この半年で上昇に転じているのです。
とくに目立つのが、米と「朝ごはん」の組み合わせ。「朝ごはん おにぎり」「朝 おかゆ」「朝食 炊き込みご飯」などに加えて、「米 塩むすび」といったシンプルなごはんメニューの検索も増えており“朝にお米を食べたい”というニーズがじわじわと高まっていることがうかがえます。
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背景にあるのは、価格や手軽さといった機能的な理由だけではなさそうです。パンやシリアル、オートミールのほうが簡単に準備できると感じる人も多いでしょう。それでも、「今日はごはんがいい」と心が向かう朝がある。
特別な日ではなく、なんてことのない朝にこそ、ごはんが恋しくなる——そんな気分に寄り添う選択をする人が、今、増えているのかもしれません。
「朝×ごはん」が伸びている、しかし朝食を食べる人は減少傾向
一方で、日本人全体の朝食習慣には減少傾向が続いています。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によれば、20〜40代を中心に朝食欠食が顕著で、令和5年度の調査では、20〜30代男性の約28〜30%、女性の約20〜30%が「朝食をほとんど食べない」と回答しています。
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こうしたデータからは、忙しさや生活時間の変化が、私たちの「食のリズム」に確実に影響を与えていることが見えてきます。
それでも、「朝にごはんが食べたい」という検索は増えている。この矛盾に見えるような現象こそが、現代の食卓の複雑さや揺らぎを映し出しているのかもしれません。
クックパッドで人気の“朝×ごはん”レシピ
クックパッドで検索されているレシピを見てみると、朝に「少しだけごはんを食べたい」という気持ちがリアルに感じられます。
それは「がっつり定食」ではなく、「手間はかけずに、ちょっと落ち着く」朝のひと皿。ごはんは食卓の“主役”というより、“支え役”のような存在として選ばれている印象です。
朝食に♪簡単☆とろける♡卵チーズご飯☆
卵とチーズでかさ増ししながら、少ないごはんでもしっかり満足できるアイデアレシピ。 チーズのとろみと卵のやさしさが、朝の気分にぴったりです。
朝は絶対これ♪具だくさん味噌汁♪米節約
「ごはんはほんの少し、そのぶん具材で満足感を」。 にんじんや豆腐、大根などをたっぷり入れて、米を節約しながら食べごたえはしっかり。
簡単朝食♪おかかマヨ醤油で☆炊き込みご飯
冷凍ごはんをチンして、調味料を混ぜるだけ。 冷凍ストックを活用して、手軽なのに“ちゃんと感”のある朝ごはんに。
注目される“ごはんのかたち”と、これからの食卓
「やっぱり米がいちばん落ち着くよね」という声は、今も根強くあります。
「手に入りづらい」「値上がりしている」と聞くと、むしろ気になってしまう。それだけ、米は暮らしの中で特別な位置を占めているのでしょう。
こうした注目も、家庭に十分なお米が行き渡るようになれば、いずれ落ち着いていくはずです。それでも今回、「ごはんをどう食べるか」に工夫が集まり、朝食という日常の中で米を取り入れる動きが見えてきたことには、大きな意味があります。
ごはんを主食とする文化の中で、いまは量も食べ方も自由に選べる時代。だからこそ、米を通じて「日々の食事で何を大切にしたいのか」を見つめ直すことができる。
今回の動きが、そのきっかけとして、これからの暮らしに静かに根づいていくことを願っています。