香港民主化デモから6年 急増する中国本土から移住した「新香港人」。「中国との一体化」が進む香港の今【news23】

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2025年07月05日 14:18  TBS NEWS DIG

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2019年、香港民主化デモが起きて以降、自由が失われることをおそれ、約50万人の香港人が海外へ逃れました。一方、今、中国本土から香港への移住が急増。彼らは「新香港人」と呼ばれています。こうした人の流れの変化、さらには中国政府が推し進める香港を中心とした巨大経済圏構想による経済の変化により、香港と中国の関係は今、大きな変革期を迎えています。「中国化する香港」に対して、香港の人々は何を想うのか。現場を取材しました。

【写真を見る】NY・東京に次ぐ“経済圏構想”で進む橋や鉄道などの建設

民主化デモから6年 香港の今

3年前、北京から香港に移住したアレンさん。香港のIT企業に勤務しています。

北京出身 アレンさん(33)
「香港は働く人にとっての天国だという言葉があります。税金が安い上に給料が高いですから」 

今、彼のように中国本土から香港に移住する人が急増しています。

きっかけは2019年、香港市民が民主化を求め起こしたデモでした。

警察は催涙ガスを使い、市民を抑え込もうとするなど香港の混乱は約半年間続きました。

翌年、中国政府が主導し「香港国家安全維持法」を施行。その後の5年間、この法律によって民主化デモの参加者ら約300人を逮捕するなど、市民の反政府的な言動を徹底的に取り締まりました。

50万人が脱出も…“新香港人”中国本土から香港へ

そして今、街は日常を取り戻したかに見えますが、自由が失われることを恐れた約50万人の香港の人々がイギリスやカナダなど海外へ逃れているのです。

香港で移民手続きのサポートをしてきた羅さんは…

香港移民サポート会社 羅立光 社長
「私の友人の会社では社員200人のうち、50人が海外へ移住してしまいました」

香港から逃れたのはITや金融関係などの仕事につく高い専門性を持つ人々。

危機感を強めた香港政府は、ビザの緩和によって世界中から人材を呼び込む制度を始めました。

その後、2年間で約7万人が香港にやってきましたが、そのほとんどが中国本土からの人々でした。

北京出身 アレンさん(33)
「香港は中国の一部ですし、中国と文化も似ているのであらゆる面で便利です」

「香港は中国の一部」と言い切るアレンさん。彼のように香港民主化デモ以降、増え続ける中国本土からの移住者たちは「新香港人」と呼ばれます。

中国政府が主導 NY、東京に次ぐ“経済圏構想”

人の動きだけではなく、経済面でも中国と香港の一体化は進んでいます。

香港・マカオ・中国本土を繋ぐ55キロにも及ぶ橋。かつて車で4時間かかった香港・中国間をわずか45分で結びます。

中国 習近平 国家主席
「『広東・香港・マカオ グレーターベイエリア』の建設に積極的に参加しよう」

主導しているのは中国政府。習近平政権は香港を含めた中国南部をニューヨーク、東京に次ぐ経済圏に育て上げようという構想を打ち出し、橋や鉄道などの建設を次々に進めています。

北京出身 アレンさん(33)
「交通がとても便利になりました。私の友人には中国の深センにある自宅から香港に毎日通勤している人がいるくらいです」

「一体化」…香港の魅力はどうなる?

着々と進む中国との一体化により、香港で生まれ育った人々の中国に対する向き合い方にも変化が生まれています。

日曜日の朝。電車に乗った人たちがある場所へと向かっています。

記者
「大勢の人たちが地下鉄から下りてきました。この人たちはみな香港側から中国に向かう人たちです」

中国南部の巨大都市・深セン。数年前から香港住民の間では、深センのショッピングモールで週末を過ごすことがブームになっているのです。

深センを訪れた香港住民
「2週に1度は深センに来ます」
「買い物をして食事をするついでにリラックスするためマッサージをします。3割くらい深センの方が安いです」

物価が高い香港に比べ、安くて質の高いサービスが受けられるとあって、香港住民は今、中国に引き寄せられているのです。

さらに、深センの高層ビル群の対岸の香港側では、これまで何もなかった湿地帯に中国・香港両政府が主導する巨大な研究開発拠点の建設が進んでいました。

ファーウェイなど中国を代表する大企業が集まる深セン市と、香港北部を一体化させようという計画です。

中国化が進む香港。受け止め方はさまざまです。近所の住民は…

近所の香港住民  
「深センに近いこのエリアが発展することで、香港の仕事も増えるでしょう」
「中国が良いと香港も良くなるので発展を支えます。私たちは中国人ですから」

一方、「あきらめ」とも取れる声も聞こえてきます。

香港住民(30代)
「中国と一体化することはしょうがないです。97年に返還されたのですから。嫌なら香港を出ていくしかありません」
「(Q.香港の魅力は失われていくと思いますか?)そう思います。香港はどんどん中国になっていくと思います」

30年にわたり香港の人の流れを見てきた羅さんは、中国化が進む香港をこう表現しました。

香港移民サポート会社 羅立光 社長
「今の香港の課題は、いかに香港らしさを維持するかです。例えるなら中年男性が人生の転機で迷い、新しい道を探しているような状態です」

民主化デモから6年。

かつて「中国でありながら中国でない」ことが魅力だった香港。急速に進む中国との一体化により、今、大きな岐路に立たされています。

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このニュースに関するつぶやき

  • 一党独裁の分かりやす過ぎる不自由で格差の激しい監視社会の深化。自由と民主主義の死。香港も「大きな北朝鮮化」に飲み込まれるだけ。恐ろしい。
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