シャアの誕生からララァとの出会いまで……『ジークアクス』の次に触れたいガンダム漫画『THE ORIGIN』

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2025年07月07日 08:00  リアルサウンド

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機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)公式Xより@G_GQuuuuuuX

 6月24日、無事最終回を迎えた春アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』(以下、ジークアクス)。その熱はとどまるところを知らず、“令和のガンダムブーム”とも呼べるほどの広がりを見せている。


 そこで今回は、『ジークアクス』の次に触れるべき作品として、漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(以下、THE ORIGIN)の魅力を紹介したい。


 同作は『月刊ガンダムエース』で2001年から2011年にかけて連載された作品。作者は初代アニメ『機動戦士ガンダム』(以下、ファースト)でキャラクターデザインとアニメーションディレクターを務めた安彦良和だ。


 基本的な設定は『ファースト』を踏襲しており、ジオン公国と地球連邦が戦争の真っただ中にある宇宙世紀0079から物語が始まる。アムロ・レイが新型モビルスーツ・ガンダムに乗り、戦乱に巻き込まれていくという大まかな筋書きも変わらないが、細かい設定変更のほか、さまざまなオリジナルエピソードが追加されている。いわば同作は、『ファースト』の物語を安彦独自の視点で再解釈した作品といえるだろう。



 なかでも大きな見どころは、本編よりも前の時系列を描いた長大な過去編。ジオン・ズム・ダイクンの死からザビ家の台頭、モビルスーツの開発を経てコロニー落としやルウム戦役までが描かれている。そしてそのなかで、シャア・アズナブルことキャスバル・レム・ダイクンの人物描写が掘り下げられていく。


 『ファースト』でもシャアの過去は断片的にしか描かれておらず、その心境や行動原理は視聴者の想像に委ねられていたが、同作では「シャアがいかにして誕生したのか」が丁寧に描写されている。


 父を失った後のキャスバルは、ランバ・ラルの手引きによって妹のアルテイシアとともに地球へと脱出。そこで自分にそっくりな見た目をもつ「シャア・アズナブル」という青年と出会う。そしてその後キャスバルはジオンの士官学校に入学することに成功し、ガルマ・ザビと出会って自身の野心と復讐心を解き放っていくのだった。


 オリジナル展開ではあるものの、シャアのことをもっと知りたいというファンの心理に刺さる逸話が満載なので、『ジークアクス』で興味をもった人にはうってつけではないだろうか。ちなみに士官学校に通っていた頃のエピソードでは、あの特徴的な仮面を装着するようになったきっかけも描かれている。


■安彦良和の考えた「ニュータイプ」論とは

 同作ではシャアだけでなく、ララァについても『ファースト』以上に詳細な過去が描かれている。


 同作のララァは一年戦争が始まる前、ジャブローのカジノでイカサマの道具としてニュータイプ能力を使わされていた過去をもつ。そんな彼女はシャアとの出会いをきっかけに、外の世界へと連れ出されるのだった。


 また、同作のララァは“恋する乙女”としての一面が強調されており、シャアはさながら“白馬の王子様”といった立ち位置だ。『ファースト』とは異なるキャラクター像なので、好みは分かれるかもしれないが、その愛らしさは一見の価値がある。


 そのほか『ジークアクス』の主要人物だったキシリアや、最終話にちらっと出てきたアルテイシアやランバ・ラルについての掘り下げも行われているので、興味深く読めるはずだ。


 その一方、作者の安彦は2020年に「朝日新聞デジタルマガジン&」に掲載されたインタビューにて同作に言及し、「ニュータイプ」という概念を捉えなおすという執筆動機があったことを明かしていた。※1


 ニュータイプといえば『ガンダム』シリーズの中核にある概念で、基本的には人類の革新、新たな未来の可能性として提示されてきた。しかし安彦は決してニュータイプ思想を楽観的に信奉しておらず、むしろその危険性を直視する形で描き出している。


 『ジークアクス』から興味をもった人はもちろん、『ガンダム』ファンにもさまざまな示唆を与えてくれる『THE ORIGIN』。同シリーズの他作品を楽しむ上でも、大いに役立つはずなので、ぜひ一度触れてみてほしい。


※1 「『僕はニュータイプを決して支持しない』 ガンダムは歴史そのもの、続編に興味はない 安彦良和のTHE ORIGIN(後編)」(https://www.asahi.com/and/m/article/15795274)



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