
もともとはフルタイムで就業していたAさんは、出産を機に退職していました。それから5年間は育児専念期間として、しっかり育児に専念していたAさんですが、仕事復帰に向けた就職活動を開始します。
【写真】長期目線で青い鳥探し 20代に浸透する「ゆる転職活動」
しかも、子育て期間も子育てだけに専念していたわけではありません。Aさんは夜中に子供が寝静まった後、必死に勉強して簿記2級の資格を取得していたのです。地域のPTA活動では会計係を務め、年間予算の策定から決算報告まで責任を持ってやり遂げました。
Aさんは自信を持って履歴書と職務経歴書を書き上げ、希望の求人へと送付する日々を過ごします。しかし、なかなか面接までたどり着くことができず、30社からのお断りメールをもらったあたりから、現実が重くのしかかってきます。
なんとか書類選考を突破したとしても、面接官から「このブランク期間、何してた?」と聞かれると、簿記の件を説明するも現場経験のなさを指摘され、返す言葉もありませんでした。
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育児や介護などで生まれたブランクは、再就職時のネックになるのでしょうか。キャリアカウンセラーの七野綾音さんに話を聞きました。
ブランク期間はマイナス要因に見られがちなので工夫が必要
ー企業側は応募者のブランク期間をどのように評価しますか?
基本的に企業は理由を問わず、応募者のブランク期間をマイナス要因として捉える傾向にあります。
採用担当者は、毎日多くの応募書類に目を通します。その中で、まず履歴書を見て「年齢」と「職務経験年数」のバランスを無意識にチェックします。その際に5年という空白期間があると、「同年代の他の応募者に比べて、実務経験が少ない」と判断され、書類の中身をじっくり読む前に、候補から外されてしまうケースもあります。
Aさんのようにブランクの期間に簿記2級の資格を取得しても、まず書類上で「ブランクあり」というフィルターにかけられ、素晴らしい努力やポテンシャルを見てもらうステージにすら立てていない可能性が高いのです。ただ、工夫と誠実な表現でこの壁を乗り越えた方も、実際にいらっしゃいます。
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ー空白期間の理由によって企業の受け止めに違いはありますか?
育児や介護といったやむを得ない理由であっても、ブランク自体が不利に働きやすいという現実はまだまだあります。育児や介護が理由の場合、「今はもう仕事に集中できる環境なのか」という点に懸念を抱かれる場合もあります。
一方で、こうした経験を通して得られた視野の広さや調整力、多様な立場への理解力を評価してくれる企業も存在します。
どの理由であれ、単に「空白期間の説明」にとどまらず、「なぜその期間が必要だったのか」「その経験から何を得たのか」「今の自分にどう活かされているのか」「応募先企業でどのように活かすのか」まで書類上で明確に、かつ説得力をもって丁寧に伝えることが、転職市場の土俵に乗る鍵になります。
ーブランクを乗り越えて再就職に成功した人に共通する特徴はありますか?
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ブランクを乗り越えて成功する方には、「採用担当者の視点」を意識して、書類の作り方を根本から変えているという共通点が見られます。ブランクが生まれた理由を正直に説明し、その間に努力したことをまとめ、最後に、どのように企業に貢献できるのかをわかりやすく言語化しています。
ブランクを隠すべき弱点とせず、必要な期間であったと前向きに捉え、未来への意欲を伝えることができれば道は開けるでしょう。事実、そうして再就職を成功させた方はたくさんいます。
ブランクを隠すべき弱点とせず、必要な期間であったと前向きに捉え、未来への意欲を伝えることができれば道は開けるでしょう。
◆七野綾音(しちのあやね)キャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント
やりがいを実感しながら自分らしく働く大人を増やして、「大人って楽しそう!働くのって面白そう!」と子ども達が思える社会を目指すキャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
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