
高齢化が進む中、医療現場を支える看護師の人手不足は深刻な課題となっています。
全国の看護師を対象にした意識調査では、「1年以内に退職を考えたことがある」と答えた人が20.0%にのぼり、およそ5人に1人が離職を検討している実態が明らかになりました。退職を考えた理由としては、患者からのハラスメントや職場の人間関係によるストレスを訴える声が多く寄せられています。
この調査は、看護師向けの求人・転職サービスを展開するレバウェル株式会社が、全国の看護師442名を対象に実施したものです。
退職を考え始めた時期をたずねたところ、「入職後3年以上」(56.1%)が最も多く、「入職後1年以上3年未満」(23.8%)が続きます。また、「入職後1年未満」(20%)も5人に1人にのぼり、入職後3年以内のフォローアップの重要性がうかがえる調査結果となりました。
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看護師が退職を考える理由で最も多かったのは「人間関係」(34.2%)、次いで「業務負担の大きさ」(26.0%)が並びます。人間関係の悩みや過労によるストレスを理由にあげる人が多く、退職に至る本音が浮き彫りとなりました。
一方で、看護師が職場に伝えた退職理由をたずねたところ、最も多かったのは「転居や家庭の事情」(33.3%)でした。次いで「その他」(20.1%)や「スキルアップ・キャリアチェンジ」(19.5%)など、いずれも無難で当たり障りのない理由が並びます。
この結果から、看護師の本音と、職場に伝える退職理由との間にはギャップがあることがわかりました。調査を実施した同社は、建前の理由だけを信じて対策を講じても看護師の離職を防ぐことは難しく、退職に至る背景や本当の要因に目を向け、職場の実態を正しく理解することが欠かせないと述べています。
患者による暴言・暴力(ペイシェントハラスメント、以下「ペイハラ」)は、看護師にとって大きな心理的負担です。「ペイハラを理由に退職を考えたことがあるか」との質問では、4人に1人が「ある」と答えています。
また、ペイハラ対策で有効だと思うのは「患者・家族に対する事前注意喚起の強化」(23.1%)をあげる人が最も多く、患者や家族の立場を尊重しつつ看護師が安心して働ける環境の整備を望む調査結果となりました。
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少子高齢化が進むなか、看護師の確保と定着は、医療の維持を左右する喫緊の社会課題となっています。調査を行った同社は、特に5・6月は新人看護師が現場に加わる時期で、定着支援に取り組むうえで重要なタイミングであり、看護師が長く働き続けられる環境をつくるには、現場の実態を正確に把握し、その背景にある課題に即した対策を講じることが不可欠であると述べています。
【出典】
レバウェル株式会社/看護師の定着支援に向けた実態調査