
「生きたくて生きているわけじゃない、死ねるなら死にたいように見えた」
そのような猫が保護された後、ふわふわのモフモフになり、人と寄り添い暮らしている。名前は「まーや」くん。保護したのは、猫のイラストレーターとして知られる、あきみさん だ。
ねずみとりで皮膚が欠損――「どうすればいいか分からなかった」
まーやくんは、まだ2歳前後の男の子。外で暮らしていた頃、毛はところどころ生えておらず、体は汚れて痩せていた。警戒心が強く、人が近づいても触れることはできなかった。
あきみさんは当時、ペット不可の家に住んでいた。「仮に病院に連れて行けても、その後どうすればいいのか」と何度も悩んだという。
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そんななか、役所から捕獲器を借り、近所の“優しいおばちゃん”と出会う。おばちゃんは、「この子(まーやくん)はトカゲやミミズを食べて生きてきた」と教えてくれた。おばちゃんから虫取り網を貸してもらい、捕獲を試みるも失敗。最後は捕獲器を使い、なんとかまーやくんを捕獲することができた。
そして、病院で告げられたのは衝撃の診断だった。皮膚がごっそりなくなっていた原因は 、毛が抜けていたからでも病気でもなく、ねずみとりにかかったからだった。さらにお腹には寄生虫もいた。
生きることを諦めかけた猫が、モフモフの家猫に
保護当初のまーやくんは、人を警戒し、まるで生きることを拒むように見えた。しかし今では毛も生えそろい、撫でられるのが大好きな“甘えん坊”になった。
「人に捨てられ、人に殺されかけた過去が嘘のように、ほのぼのとした家猫に変わりました」とあきみさんは語る。
「猫生が変わる」――あきみさんが守りたい命
あきみさんは、まーやくんのような外猫に特別な思いを抱いている。
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「まーやは偶然、人の目に留まって助かった。でも、同じように過酷な環境で人の目に留まらず命を落とす猫もたくさんいます」
現在も仲間と共に多頭飼育崩壊の現場でTNR(野良猫の不妊去勢手術)を手伝うなど、できる範囲で立場の弱い猫を守り続けている。
「猫の絵を描く人すべてが猫を愛しているわけじゃない」
イラストレーターの活動も、まーやくんとつながっている。帰国後、企業案件などで人物のイラストを描いていたあきみさんは、猫のイラストも競合の多い中で「大好きな猫を描こう」と決めた。これまで750匹以上の猫を描いてきたという。
「ただ単に猫の絵を“売れるから”という理由で描く人には負けたくない。命を守ってきた自分だからこそ描ける絵があると思っています」
「保護猫を迎える選択肢を知ってほしい」
「ペットを迎えたいなら、売り買いされる動物ではなく、保護動物を家族にしてほしい」
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あきみさんの活動の根底には、そのような強い思いがある。過酷な野良猫の命を変えるのは、人の心と行動だ。まーやくんが証明してくれた――小さな命の「猫生」は変えられると。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)