英国のUniversity of the West of ScotlandやオーストラリアのUniversity of Adelaideに所属する研究者らが発表した論文「Were Our Grandmothers Right? Soup as Medicine-A Systematic Review of Preliminary Evidence for Managing Acute Respiratory Tract Infections」は、急性呼吸器感染症に対するスープの治療効果について体系的な文献レビューをした研究報告だ。
研究チームは2024年2月までに発表された1万598件の論文を検索し、最終的に4つの研究(合計342人)を分析対象とした。これらの研究は北米とアジアで実施され、子どもから高齢者まで幅広い年齢層の風邪やインフルエンザ様症状を持つ患者が含まれていた。
分析の結果、スープを摂取した群では症状の重症度が軽減し、病気の期間が1〜2.5日短縮することが明らかになった。特に鼻づまり、のどの痛み、咳などの症状に改善が見られた。さらに、2つの研究では炎症性バイオマーカーであるインターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、C反応性蛋白(CRP)の減少も確認できた。
研究で使用したスープは主に鶏肉ベースで、にんじん、たまねぎ、セロリなどの野菜や、パセリ、コリアンダー、ミントなどのハーブが加えられていた。ある研究では中国伝統医学に基づく薬膳スープも検討され、朝鮮人参、生姜、シナモンなどを使用していた。対照群には介入なし、または代替飲料(水やお茶など)を与えた。
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スープが呼吸器症状を改善するメカニズムとして、研究者らは複数の要因を挙げている。まず、温かい液体が粘液の排出を促進し、鼻の通りを良くする。水分補給により脱水を防ぎ、体の回復を助ける。さらに、鶏肉のタンパク質や野菜に含まれる栄養素が免疫機能をサポートする。
研究者らは、スープが従来の治療法を補完する安全で文化的に受け入れられやすい介入方法として有望であると結論づけている。特に医療資源が限られた地域では、低コストで実施可能な健康増進策として価値があるという。
Source and Image Credits: Lucas, S.; Leach, M.J.; Kimble, R.; Cheyne, J. Were Our Grandmothers Right? Soup as Medicine-A Systematic Review of Preliminary Evidence for Managing Acute Respiratory Tract Infections. Nutrients 2025, 17, 2247. https://doi.org/10.3390/nu17132247
※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2
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