本田真凜とのアイスダンスは「僕が足を引っ張りすぎだった(笑)」 宇野昌磨が明かす初挑戦の舞台裏

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2025年07月27日 07:21  webスポルティーバ

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宇野昌磨『IceBrave2』インタビュー中編(全3回)

 7月18日、宇野昌磨は東京ミッドタウン日比谷にある「LEXUS MEETS」で、アイスショー『Ice Brave2』についてインタビューを受けている。

「すごくカッコいい写真!」「悪そう。たくらんでいるみたい?」「視線をズラすのもいいね!」。撮影では、スタッフたちがはしゃぐ声が聞こえた。フォトグラファーがシャッターを切るたび、パソコンに映し出される写真データに一喜一憂していた。長い前髪が垂れると、すかさずメイクやスタイリストが直しに入った。

 上品な照明が灯るなか異なるカットで撮影し、ポーズを変えながら、彼はファインダーに収まった。白い肌は艶めいていた。

 宇野にとって、『Ice Brave』は現役引退後の大きな挑戦だった。そのタイトルどおり、勇敢さを示す最たるものがアイスダンスだったと言えるかもしれない。プロデューサーとして、演者として、ひとつのスペクタクルに仕上げ、「みんなを驚かせ、楽しませたい」という真剣なチャレンジだった。

 そして本田真凜とのアイスダンスは、ショーを彩る目玉になっているーー。

【体感したアイスダンスの難しさ】

ーー6月、7月に開催された『Ice Brave』公演前のインタビューで、宇野さんは「積み上げた先にショーがあって、そういうショーは自然に感情も乗るはずで、来てもらったファンの方にも感動してもらえる」という話をしていました。その点、アイスダンスへの挑戦はエモーショナルだったし、ショーを象徴していたように思えます。初回公演から、驚くようなレベルの高さでした。アイスダンス挑戦を振り返ってもらえますか?

宇野昌磨(以下同) 最初は、想像よりできないって感じでした。これは皆さんに伝える必要はないことなんでけど、アイスダンスがどれだけ難しいか、わかりづらいところで(苦笑)。シングルだったら滑れるし、回れるんです。でも、ふたりで組むことがどれだけ難しいか......。ちょっと取り組んだだけって思われるのは悲しかったので、これは自分が想像しているよりもいいものを目指さないとって。最初は頑張んなきゃって気持ちだけでした。

ーー高橋大輔さんがアイスダンスに転向した時、インタビューのなかで「単独だったらツイズル(多回転の片足ターン)は難しくないですけど、誰かと合わせるのが難しい」と力説していました。

 そのとおりで。どう調整し合わせるか、本当に難しい。千秋楽のツイズルが一番ズレちゃいました。僕が最初5周しちゃったんで、それで全部ズレてしまって......。

ーー初回の完成度の高さは驚きでした。

 初回と千秋楽を取材してもらったんですよね? 初回はそれまで練習してきたから、「練習以上を目指すのはやめよう、練習以下でも十分いいから」って気持ちでした。練習以上できなくても、みなさんにいいねって言われるものをつくってきた自信があったのですごく落ち着いてツイズルもやれていたんです。けど、千秋楽は振付師の(宮本)賢二先生にも、「(ふたりとも)もう少し近くで、ここで追いかけるように滑ったら」と指導してもらって、そういうのを全部意識したらわからなくなりました(笑)。

ーー不思議なものですね。

 そうなんです! 千秋楽は、朝の練習で直して、めっちゃよくなったんですよ。(本田)真凜とも近く滑れているし、ふたりで「これ、やろう!」ってなりました。それで本番は回りすぎるミスって(苦笑)。あれこそ、アイスダンスの難しさですね。近い距離で、タイミングを合わせると、それだけで"すごいように"見える。言い方はおかしいですけど、ふたりがピッタリ回るってこんなにすごいことなんだなって思いました。

【とにかくふたりで手をつないで...】

ーーそもそも、アイスダンスをどうやって始めたんですか?

 まったくの初心者だったんで、とにかくふたりで手をつないで滑りながら。(高橋)大ちゃんとかうまい人や、世界一のアイスダンサーの演技とかを見てって感じです。シングルは自分の体の中心に軸があるじゃないですか? でも、ふたりの間、ど真ん中に軸があると、外でのスピンも相当なスピードが必要になるんですよ。

 体感で言うと、とんでもなく速い。外側から見ると、そうでもないんですけど(笑)。それが最初は戸惑って難しかったです。ただ、僕はできないことをできるようになるところに成長を感じられるし、その瞬間は好きなんだなってあらためて思いました。

ーー現役時代から、あえて苦境に入って、そこでひっくり返す活躍を見てきました。もしかすると、自分を苦しめることでパワーが出るとか?

 いやいや(笑)。スケート以外はつらくなったらすぐやめます。まあ、スケートでも感じてきたのは、初心者からあとは成長の度合いも大きいんですけど、そのあとは一定の壁にぶち当たるもので。苦しい期間があるっていうのはどの界隈でも一緒のはずで、それは(大好きな)ゲームをやっていても思いますね(笑)。

ーーカップルを組んだ本田真凜さんが、半年ほどアイスダンスをやっていたことはアドバンテージになったのでは?

 アドバンテージだったはずですけど、僕が足を引っ張りすぎだったんで(笑)。とにかく覚えられないし、どこにいればいいかもわからない。ふたりで滑るっていうのが難しくて。近い距離で邪魔にならないようにって考えると、どこにいてほしいの、どこにいないほうがいいのっていろいろ考えて、マジでわかんなくて(笑)。

ーー高橋さんはアイスダンスで肉体改造していましたが、宇野さんも体が少し大きくなったように見えました。

 とくにトレーニングはしていないんですが、リフトをやっていたら自然に大きくなった感じですかね。リフトは危なくないものを選びましたが、アイスダンスっぽいものを見せたい気持ちも強かったので。ただ、演目がすごく多いし、かなり疲れている時にやるので、危なくないものにはしていました。初挑戦のアイスダンスの演目としては、内容的にも満足できるものだったかなと。ただ、次は『Ice Brave』の「2」ということで、「1」よりも明らかに成長したところは見せたいです。

後編につづく(7月28日公開)

【プロフィール】
宇野昌磨 うの・しょうま/プロフィギュアスケーター。1997年12月17日、愛知県生まれ。現役時代には全日本選手権優勝6度、世界選手権連覇、2018年平昌五輪銀メダル、2022年北京五輪銅メダルなど華々しい成績を残す。2024年に現役引退し、現在はアイスショー出演などプロスケーターとして活躍している。2025年6月〜7月に自身が初めて企画プロデュースしたアイスショー『Ice Brave』を名古屋、新潟、福岡の3都市で開催。同年11月〜2026年1月には『Ice Brave2』を京都、東京、山梨、島根、宮城で開催予定。

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