“迷宮化”が進む新宿駅 人々がまともに歩けるのはいつなのか

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2025年08月21日 08:21  ITmedia ビジネスオンライン

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複雑すぎた新宿駅の動線、どうなる?

 JR東日本をはじめ、地下鉄・私鉄が行き交う新宿駅は、世界で最も利用者数が多い駅としてギネス世界記録に認定されている。複数の路線が乗り入れ、駅の構造が極めて複雑であることから、「迷宮」とも呼ばれてきた。


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 こうした不便さを解消するために、新宿駅では数十年にもわたり工事が続けられ、姿を変え続けてきた。


 少し前には、JRの東口と西口を結ぶ工事が進められ、改札内外の構造が大きく刷新されたばかりだ。さらに最近では、新宿西口エリアでの再開発も始まり、小田急百貨店の建物が姿を消す一方で、その地下では通路の動線が頻繁に切り替えられている。


 新宿駅は、一体どのように生まれ変わるのか。本稿では、その再開発後の姿を考察していきたい。


●新宿駅が抱えていた課題


 不便さを解消するための対応として、新宿駅では長年にわたって大規模な再整備が進められてきた。


 まず、2012年1月には駅周辺地域が「特定都市再生緊急整備地域」に指定され、その後の2018年3月には、東京都と新宿区によって「新宿グランドターミナル」を柱とする再整備の方針が発表された。この方針では、老朽化した駅ビルの建て替えを機に、駅本体や駅前広場、駅ビルを整備し、誰もが利用しやすいターミナルを目指している。


 現在の新宿駅は、駅ビルの老朽化だけでなく、駅そのものの構造が分かりにくいという課題を抱えている。乗り換え経路が複雑で、歩行者が一部の場所に集中し、人の流れが交錯して移動がスムーズにいかない。駅の入口も見つけづらく、分かりにくさが常に付きまとう。


 さらに、鉄道や幹線道路、駅前広場を横断できる場所が限られており、駅と街、あるいは街と街の間の移動が難しい。加えて、駅前広場は車中心の空間となっており、歩行者のためのスペースが不足している。


 こうした数々の課題を解決するために打ち出されたのが、「新宿グランドターミナル」計画なのである。


●「新宿グランドターミナル」計画で、西口はこう変わる


 新宿西口の地上エリアは、車にとっては便利な一方で、歩行者には不便で移動しづらい場所となっている。わずかな距離を移動するだけでも、大きく遠回りを強いられることが少なくない。


 こうした状況を改善するため、線路上の空間にデッキが整備される予定だ。周辺の建物とも接続することで、歩行者が行き交い、ゆとりを持って過ごせる空間が新たに整備される。


 さらに、地下に光を取り込むため、広場の中心に大きな吹き抜け(ボイド)が設けられる。これにより、地下空間にも自然光が届き、明るく開放的な雰囲気が生まれる。


 バスやタクシー乗り場は、このボイドの南北に配置され、人と公共交通がスムーズに接続できるようになる予定だ。また、西口駐車場の出入口を移設し、駅前広場に流入する車両を減らす。これに加えて、荷さばき車が利用できる新たな駐車場出入口を整備しつつ、一般車の乗降スペースも確保することで、交通の円滑化と利便性の両立を図る。


 一方、地上部では歩行者を優先する広場が整備される。建物の敷地に歩行者空間が設けられ、広場と建物が向かい合う配置となることで、視認性や開放感が高まる。


 工事により導線が目まぐるしく変わっている西口地下エリアも、大きく生まれ変わる。西口の地下広場は、東西を結ぶ地下通路と接続され、歩行者がよりスムーズに行き来できるようになる。その実現のため、これまで地上と地下をつないでいたループ状の自動車ルートは撤去される予定だ。


●縦と横の動線の整備が最終目標


 もちろん、再整備の対象となるのは西口エリアにとどまらない。「新宿グランドターミナル」計画は、地上から地下まで新宿駅全体を生まれ変わらせる取り組みである。


 最も重視されているのが、「人の動線」の改善だ。縦横にスムーズな移動を実現し、地上・地下ともに東西方向の移動がより便利になるよう設計されている。加えて、地下では鉄道各線の乗り換えが、現在よりも格段にスムーズに行えるよう計画が進められている。


 また、地上デッキの整備により、JR・小田急・京王の乗り換えが格段に容易になる。JRと小田急はデッキ階に新たな改札を設け、京王も現在地下2階にあるホームを北側へ移し、同じく改札を新設する計画だ。このホーム移転と改札新設によって、東京メトロ丸ノ内線方面への接続が便利になるほか、都営大江戸線の新宿西口駅や西武新宿駅との乗り換えもスムーズになる。


 このように、新宿駅周辺の各エリアに複数の動線が整備されることで、東西方向の行き来や各路線間の乗り換えが、これまで以上に快適になる。


●しかし、完成は2040年代……


 新宿駅西口エリアの工事は、2029年度に完了する予定だ。そのころには、西口エリアの複雑な導線も大きく改善されている見込みである。東西を結ぶデッキや駅前広場の一部は2035年度に完成する計画となっている。


 一方で、新宿駅周辺地区の土地区画整理事業が完了するのは約20年後の2046年度とされており、百貨店をはじめとする建物の建て替えも2040年代にかけて段階的に行われる見通しだ。


 つまり、西口エリアについては数年の辛抱で利便性が高まるが、駅全体の完成までにはまだ時間がかかる。工期が遅れる可能性も報じられていることから、新宿駅全体の動線が完全に整理されるのは、相当先になりそうだ。


(小林拓矢)



このニュースに関するつぶやき

  • なんでどこも地下ばかりなんだろ ホームの上に渡り通路作ってくれれば東西南北の横断楽になるんだけど…
    • イイネ!18
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