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2025年09月20日 15:10 ITmedia PC USER
PCやスマートフォンで取り扱うデータの容量は、年々増加/肥大化する傾向にある。例えばスマホのカメラでは、保存容量が大きくなる4K/60fps超の動画撮影や、センサーの情報を加工せずに保存する「RAW撮影」に対応するモデルが珍しくなくなった。レンズ交換式カメラやアクションカムなども高画質/高解像度対応モデルが増えたため、旅行先でカメラ内からPCにデータを移動したり、それをさらにバックアップしたりしたいというニーズも多い。
だが、こうしたデータを保存しようと思うと悩ましいのはストレージの「容量」と「データ転送速度」だ。容量と価格、また選択肢の多さから外付けHDDを選ぶ人が多いだろうが、大容量のデータが増えてくるとデータを読み書きする“遅さ”が目立つようになる。高解像度の写真/動画の保存先としては不向きになりつつある。
転送速度を重視するなら「外付けSSD」が候補になるが、これも既製品は割高な場合が多く、欲しい容量と性能を満たすものを選ぼうとすると極端に選択肢が狭くなりがちだ。
そんなときに検討したいのが、内蔵用SSDを外付けするための「SSDケース(エンクロージャー)」だ。この記事では、TerraMaster(テラマスター)製のUSB4(USB 40Gbps)対応SSDケース「D1 SSD Plus」(直販価格1万8990円)を、高速な内蔵SSDと組み合わせて使ってみよう。
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●“圧倒的金属感”がすごい 本当にSSDケース?
D1 SSD Plusは、Type 2280(幅22×長さ80mm)サイズのPCI Express接続M.2 SSDを収納できるSSDケースだ。接続インタフェースはUSB4で、同規格の要件を満たすThunderbolt 4/5対応デバイスやThunderbolt 3対応デバイスにも接続可能だ。また、旧バージョンのUSBとの下位互換性も確保しているので、読み書き速度は大きく低下するものの、USB4やThunderbolt 3/4/5に対応しないデバイスでも使える。
USB4の最大通信速度(理論値)は、規格の別名からも分かる通り40Gbpsだ。これはPCI Express 3.0 x4接続のM.2 SSDの性能を引き出すのにちょうどいいスペックとなっている。新品の流通量がより多いPCI Express 4.0 x4接続のM.2 SSDも利用可能だが、その性能は少し生かしきれない。
ただ、いずれにしてもPCI Express接続のSSDは発熱量がそれなりに大きい。それを十分に冷やすべく、D1 SSD Plusはヒートシンクを兼ねるアルミニウムボディーを採用している。箱から出してみると、圧倒的な“金属感”で驚いてしまった。
高速なM.2 NVMe SSDは、かなり発熱する。しっかりと冷却できないと、本来の性能を発揮できない。自作PC向けのマザーボードでも、SSD用M.2スロットに大型ヒートシンクを付属(装着)しているケースが多いのだが、それと同じことを外付けケースで行っていると考えればいい。
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D1 SSD PlusはSSDの取り付けも簡単で、ネジを1本緩めるだけでケースの内部にアクセスできる。そして一般的なPCと同様に1本のネジでSSDを固定して、ケースを元通りにするだけで“外付けSSD”が完成する。
最近の自作PC向けマザーボードのミドル〜上位モデルで採用例の多い、ツールレス固定でないのは少々残念だが、製品の性格上SSDモジュールを頻繁に入れ替えることもないはずなので、使い勝手を損ねるようなポイントになならないだろう。
SSDとD1 SSD Plusが接触する面には、サーマルパッドも貼り付けられている。これにより、SSDからの発熱を効率よくボディーに逃がしてくれる。
パッケージの内容物は、本体以外にUSB4ケーブル、キャリングポーチ、プラスドライバー、そして取り扱い説明書となる。M.2 SSDさえ用意すれば、追加の工具なしで組み立て可能だ。
●「Samsung 980 PRO」と組み合わせてパフォーマンスチェック!
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USB4による高速転送に対応するD1 SSD Plusだが、本当に“高速”なのかは気になる。というのも、SSDケースは百花繚乱(りょうらん)状態で、高速なSSDを搭載したとしてもUSB規格がうたう理論上の最高速度からほど遠いパフォーマンスしか発揮できない製品もあるからだ。
ということで、本製品のパフォーマンスをベンチマークテストを通してチェックしていく。今回はSamsung Electronics(サムスン電子)製のPCI Express 4.0 x4接続のM.2 SSD「Samsung 980 PRO」の1TBモデルを用意し、それを装着してテストを行った。Samsung 980 PRO(1TB)の公称スペックは、シーケンシャルリードが毎秒7000MB、シーケンシャルライトが毎秒5000MBとなる。このスペックはPCI Express 4.0 x4接続時のもで、PCI Express 3.0 x4相当のUSB4接続ではこのSSDのポテンシャルは引き出せない。しかし、見方を変えれば、SSDがボトルネックになることもない。
また、今回は比較対象としてUSB 3.2 Gen 2x2(USB 20Gbps)接続のASUS JAPAN製SSDケース「TUF Gaming A2」で同じSSDを装着した際のベンチマークテスト結果も掲載する。理論的には「最大でD1 SSD Plusのさらに半分の速度」となるはずのものだ。
計測には富士通クライアントコンピューティング(FCCL)製のノートPC「LIFEBOOK WH2/H1」(Core i7-1360P/32GBメモリ)を使用し、ベンチマークアプリには「CrystalDiskMark 9.0.1」を使用した。CrystalDiskMark 9.0.1のプロファイルは「NVMe SSD」で、テストデータは「デフォルト(ランダム)」「全て 0x00(0Fill)」の2パターンで計測を行っている。
結果は以下の通りだ。
読み出し速度については、D1 SSD PlusはUSB4の理論最高速度に近い結果となった。外付けストレージから毎秒4000MB近い速度でデータ転送ができるのは、従来の外付けHDDやポータブルSSDのと比べるととんでもなく高速だ。
反面、書き込み速度は控え目だ。理論的にはより遅くなるはずのTUF Gaming A2よりも比さらに遅い。何度か測定してもでも半分近い速度で、設定を変えずに何度か計測を行ってみても同じようなスコアしか出ない。これは今回レビューに使ったPCの設定だと思われるが、後日設定を変えて改めて計測する。
とはいえ、現状の書き込み速度でも、一般的な外付けHDDの約5倍、ポータブルSSDと同等かそれ以上に高速なので、大容量データの置き場として十分に有用といえる。
●安価に「そこそこ速い外付けSSD」を作るには良い選択肢
D1 SSD Plusは、USB Type-C端子を備え、高速転送可能なUSB4に対応していることが強みだ。最大40Gbps(PCI Express 3.0 x4相当)の転送速度を考慮に入れれば、入れられるM.2 SSDの選択肢も豊富で“お買い得”なものも少なくないので、「SSD込み3万円以内でそこそこ速い外付けSSDが手に入る」と考えると、コストパフォーマンスは悪くない。大容量ファイルのやりとりを快適にしたいと考えている人には、良い選択肢となる。
また、その上でD1 SSD Plusが「ケース」であるという点に注目すると、後から中身を交換すれば、より大容量の外付けSSDに“変身”させることも可能だ。
今時点で必要十分な容量のSSDと組み合わせつつ、将来的に足りなくなってきたときにアップグレードの選択肢を選べる点は、D1 SSD Plusの強みだろう。
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