「命にゆだねよう」と決めたあの日 生存率25%、612gで生まれた息子が二十歳に 母が綴った“奇跡の成長記録”

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2025年09月27日 18:40  まいどなニュース

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23週6日、612gという小ささで生まれた息子さん/tetu.momさん提供

20年前、妊娠23週6日で、わずか612gという小さな体で生まれた男の子がいました。生存率は25%ほどと告げられたその命は、今年、二十歳を迎えました。その成長の軌跡をまとめた動画がInstagramに投稿され、「命ほど尊いものないですね」「生命力の大きさをとても感じる」などのコメントとともに、5万件を超える「いいね」が寄せられ、大きな感動を呼んでいます。

【写真9枚】数々の困難を乗り越えた20年…成長していく息子さんの様子を見る

この動画を投稿したのは、男の子の母親で、アカウント名「超未熟児ママの記録|鉄心の20年」(@tetu.mom)さん。次々に訪れた試練を乗り越えてきた我が子への思いと、この投稿に込めた願いについて話を聞きました。

突然の破水、迫られた“命の選択”

20年前、妊娠23週2日という早すぎるタイミングでの突然の破水からすべては始まりました。

「羊水がほとんどなくなり、赤ちゃんの心臓が弱っているという状況に直面しました。しかし、かかりつけの先生からは、『生まれても生存率は25%程度、肺は未熟で障害が残る可能性も高い』と説明を受けました。先生は必死に転院先を探してくれましたが、都内では受け入れてくれる病院は見つからず…。『お腹に留めれば感染のリスクもあるし、赤ちゃんは苦しい。でも少し大きくなれば生存率は少し上がるかもしれない』そう言われ、私たちは難しすぎる選択を迫られました」

「今産むか」「このまま様子をみるか」。どちらを選んでも後悔するのではないか、涙が止まらなかったと言います。

「悩んで、悩んで、結論は――『転院先が見つからないなら、お腹の中で様子をみよう。それが運命かもしれない』そう決断しました。それが、私たちがあの時できた、精一杯の決断でした」

“命にゆだねる”という決断の末、転院先が見つかり、2005年6月に帝王切開で息子さんを出産しました。23週6日、612gという小ささで、仮死状態での誕生でした。

8カ月の入院生活、試練を乗り越えた日々

こうして始まった息子さんの8カ月にも及ぶ入院生活。それは、次々と訪れる試練に心を痛めながらも、我が子の生命力に希望を見出す日々だったといいます。

「生後1週間ほどでミルクの注入が始まったもののうまく消化できなかったり、肺がなかなか成熟しなかったり…。生後1カ月を前に、おしっこが出なくて血圧が低くなってしまった時は一番心配でした。生後2カ月ではついに呼吸チューブが抜けたものの、少し呼吸が苦しくなってしまい夜には鼻にサポートの機械をつけることに…。それでも、この頃には体重が増えて1000gを超えていて、とても希望を感じました。その都度、私たちの不安や心配を乗り越えていく姿に、生きる力を感じたのです」

入院中は、毎日面会に通ったという投稿者さん。

「手足を動かす様子、目を開ける瞬間、小さな声、泣いているような表情。そうした一つひとつの姿が、当たり前のようでいて、決して当たり前ではない『普通のこと』でした。表情豊かに色んな顔を見せてくれることが成長の確認となり、私たちの希望につながっていったのです」

退院後、他の子と比べては「ただ成長が遅いだけなのか、それとも別の問題があるのか」と不安になることも多かったと言います。 1歳8カ月で歩いた時の感動は、今でも忘れられないそう。

「比べてしまうことは、正直しょっちゅうありました。『ただ成長が遅いだけなのか、それとも別の問題があるのか』と不安になることも多かったです。それでも、本人はいつも一生懸命。だから私たちにできることは、見守りながら、できる努力は一緒にして、できないことは受け入れること。その気持ちで、諦めずに応援し続けてきました」

奇跡は…特別な瞬間ではなく、“今ここにある命”

数々の困難を乗り越えた20年間。そこには、忘れられない「奇跡の瞬間」があったのではないでしょうか。しかし、投稿者さんは「特定の瞬間というより、『今ここに生きている』こと自体が奇跡です」と語ります。 

「正直に言うと、『この瞬間が奇跡だ』と言える一番の出来事はありません。ただ、眼が見えなくなる可能性、肺の未成熟によって酸素吸入が必要になる可能性、運動機能に障害が残る可能性など、いくつもの『かもしれない』と言われてきた中で、それらをひとつも抱えずに成長できたこと。普通に小学校に通い、日常生活を送れるようになったこと。そのすべてが奇跡の積み重ねだと思っています。だから『瞬間』というより、『今ここに生きている』ということ自体が、私にとって最大の奇跡です」(tetu.momさん)

息子さんご自身は、大変な状況を乗り越えて生まれてきたことを、どのように受け止めているのでしょうか。

「息子には幼い頃から『とても小さく生まれた』ことを伝えてきました。そのため本人も知っていますが、特に困ったことはなく、言われなければ気づかれないレベルだと感じているようです」

現在は離れて暮らす息子さんの「二十歳」という大きな節目に、Instagramで発信しようと思ったきっかけ。そこには、かつての投稿者さん自身の経験がありました。

「実は私自身、息子が生まれたばかりの頃に『小さく生まれた赤ちゃんの成長記録』を公開しているホームページを探し、そこで大きな励ましをいただいた経験があります。『この子もきっと大きくなれるかもしれない』と希望を持てたことが、あの時の支えでした。だから今度は私が、同じように不安の中にいる方に、息子の成長が少しでも希望や勇気につながればと思い、発信を決めました」

最後に、当時と同じように今、不安の中にいる親御さんへ、自身の経験を元にしたメッセージを贈ります。 

「息子が生まれた当時、私も不安と心配の中で過ごしていました。今、不安の中にいる親御さんに私が伝えられることは、子どもは1日1日確実に成長していくということです。先を急いでしまいがちで、他の子と比べてしまうこともあると思いますが、医療の力と本人の生きる力は本当にすごいです。焦らず、子どもと一緒に少しずつ前に進むことを信じて、見守ってあげてほしいと思います」

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