



たまたま来ていた遠い親戚の男の子にぬいぐるみを取り上げられ、取り戻そうとした拍子に手が当たってしまいました。男の子が大泣きするなか、母はひたすら頭を下げて相手の親子に謝っています。騒ぎに気付いた父がやってきました。


父は私を物置に閉じ込め、外からカギをかけました。「親戚が大勢集まっているのになんてことを……。ここでずっと反省していろ!」そんな、叩いてなんかいないのに……! 物置の暗がりのなかで、幼い私はシクシクと泣きつづけました。



幼い私は、まだ何も知らなかったのです。大きくなったら家族で一緒にお店をして、2人の兄と並んでお寿司を握って……。みんなで仲良くお寿司屋さんができると思っていました。兄たちは跡継ぎを期待されているのに、私だけダメだなんて思いもしませんでした。まるで「お前だけ家族じゃない」と言われたようなショックを受けたのです。
しかも私に手を差し伸べてくれると思った母は、父に叱られて物置の前から去ってしまいました。結局は父の言いなりで、私なんかよりも父に従うことの方が大事なのです。あのとき味わった絶望を、私は今でも忘れることができません。
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