アラビア半島・ネフド砂漠南端の岩山で多数のラクダ岩絵が見つかった壁面(ドローンで撮影して合成。輪郭を白線や青線で表示。左端の白い人物像は大きさ比較用)(サウジアラビア・サハウト岩絵考古学プロジェクト提供) アラビア半島北部、ネフド砂漠の南端付近にある岩山の壁面で、約1万2000年前に石で線を刻んで描かれたと推定されるラクダの岩絵が多数見つかった。岩絵は砂地の地面から高さ34〜39メートルの位置にある。この地域を往来した狩猟採集民が道しるべや近くに水場があることを示す目印にしたほか、縄張りを主張する意味があったかもしれないという。
サウジアラビアの文化遺産委員会やドイツ・マックスプランク研究所などの国際研究チームが1日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表した。
当時は最終氷期の寒冷で乾燥した気候から湿潤な気候に移行しつつあった時代。岩山の近くには、雨が多い季節だけ出現したとみられる細長い三日月形の湖の跡があった。
ラクダの岩絵は実物大で、上下2段に多数並んでいるが、足場となる段差が狭く、岩絵を描くのは危険を伴ったと考えられる。段差はもろくなっており、研究チームは詳細な観察、撮影にドローンを使った。
岩山の下の地面を掘削すると石器が見つかり、年代を推定できた。石器の特徴から、地中海東部沿岸のレバント地方と交流があったとみられる。ネフド砂漠の南端には同様の岩絵が残る場所が点在し、ラクダが最も多いが、野生のアイベックス(ヤギ類)やオーロックス(ウシ類)などの岩絵も見られた。

アラビア半島・ネフド砂漠南端の岩山で見つかったラクダ岩絵。約1万2000年前に狩猟採集民が描いたとみられる(サウジアラビア・サハウト岩絵考古学プロジェクト提供)

アラビア半島・ネフド砂漠南端の岩山。高さ34〜39メートルの位置(上の白い四角)で約1万2000年前のラクダ岩絵が多数見つかった(サウジアラビア・サハウト岩絵考古学プロジェクト提供)