“スクープ”はこうして生まれる 「文春砲」のリアルな舞台裏 週刊文春デスクに聞く1週間ルーティン

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2025年10月04日 08:01  TBS NEWS DIG

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世間を揺るがすスクープを次々と放つ週刊誌『週刊文春』。そのスキャンダルの大きさや社会的衝撃の威力から、通称“文春砲”とも呼ばれるスクープ記事の裏には、どんな日常や人間模様があるのか。今回、同誌デスクのK氏に、貴重な話を聞くことができた。

【写真で見る】ドラマストリーム『スクープのたまご』に登場する「週刊千石」編集部のセット

1週間のルーティンやネタ探しの工夫、験担ぎまで——週刊誌の現場を探ると見えてきたのは、意外にも一般的な会社員の姿や、特殊な現場ならではの作法など。スクープの裏側で奔走する編集部の、リアルな現場をお届けする。

 「人から生まれるネタ」――誘いは断らないのが鉄則

今回話を聞いたK氏は、同誌編集部歴12年。「歴史小説がすごく好きで、もともと文芸編集者志望でしたが、入社後すぐに週刊文春に配属され、気づけば5年がたっていました」と、新入社員からの数年間を同誌編集部で過ごし、その後、月刊誌『文藝春秋』へ。しかし、3年がたち週刊誌の世界に戻ったという。

「『事実は小説より奇なり』の言葉通り、現実の方が面白いなと思ったんです。文芸誌よりも、結果私はこっちのほうが向いていたかなと思います」

そんなK氏が守り続けている“ポリシー”は、人からの誘いを「絶対に断らない」こと。「ネタは人と会って話をすることで生まれることが多い。若い頃は、出会いよりもネタを求めて合コンにも行きました」と、“断らない”マイルールを徹底してきた。

そうしたアンテナを常に張り続けることで、友人から得た特大スクープもある。「もう10年来になる仲の良い友達が、ある時、当時渦中の人物だった方の昔の知り合いをたまたま知っていたんです」と、思わぬ“情報源”に遭遇。「妙に鮮明だった」という知り合いづてのエピソードの数々に、「嘘でしょ?!」と驚いたという。

「それですぐに後輩に裏を取りに行ってもらったら、その情報はやはり合っていました。プライベートの友達から、そうしたつながりを見つけたり、ネタが取れたりすることも、往々にしてあります」と振り返る

 木曜スタート、火曜締め切り 『週刊文春』デスクの1週間

デスクの視点から、K氏に1週間の業務を説明してもらうと、そこには1週間で誌面を作り上げる週刊誌ならではの、タイトな流れが見えてくる。

「デスクの基本的な役割は、現場から原稿を受けて、その原稿を整えて記事として入稿することです。ただ、それに至るまでに、企画出しや、実際に企画が通ったらどう進めるかなどのディレクションもしていく。うちの編集部ではデスクも企画を出さなければいけないので、自分でも企画を探しながら、日々過ごしています」

編集部全体としての1週間の流れはこうだ。「木曜日に雑誌が出るので、基本は木曜日スタート、火曜日が校了です。木曜に企画会議をして、それぞれ企画を出し合い、それから現場は月曜までが取材。残りの時間で原稿を仕上げてもらい、火曜日に校了、水曜は休みという流れです」

スクープの“卵”である企画を出し合う会議で、デスクや記者が持ち寄らなければいけない企画の本数は、1人5本。K氏の班だけでも、所属する6人の企画の本数を合わせると30本。各デスクを筆頭とする班は複数あるため、週イチの編集会議で出される企画数は、優に100本を超える。

「みんなのプランを見て、『これは多分大きなネタになるから、取材班は大きめでやろうか』『じゃあ、取材は誰を書き手として、誰をキャップとして、その下に誰々をつけよう』と、編成の話し合いもして、それが終わったら、各人にその週の仕事を発注していきます」

K氏自らが取材に出向くこともあるほか、デスクとして進捗状況を管理。仮タイトル決めは週末中に行い、編集長に提出し、週明けには最終の見出しが決まる。原稿はリモートで書く人も多く、校了前日の月曜の編集部は「静まり返っていることも多い」とK氏。

それに加え、「紙だけでなく、『週刊文春電子版』というネット版も出しているので、電子版で先に出したほうがいい記事の場合は、即座に原稿を書いて出すという作業も、随時発生します」とも。

実は普通の会社員? “保秘徹底”の特殊な環境も

華やかなスクープの裏で、週刊誌特有のタイトな動きはあるものの、編集部員の働き方は意外にも“普通”。K氏は「よその会社の方と話していても、うちが特別に飛び抜けていると思ったことはないです」と、特権意識などもない。

オフィスをのぞかせてもらうと、デスクは固定で、日本の一般的な整然としたオフィスと、特に変わった様子はない。K氏がいる報道担当の「特集班」と、連載などを担当する「セクション班」、カラーグラビアを担当する「グラビア班」は、仕切りなどはなく、席が分かれている。

スクープを追う編集部ならではの「特殊」な仕事環境もある。K氏は、「記者同士が机を並べていても、隣の人が何をしているか知らないということも、よくあります。他の人が担当しているものは、記事が出てから知るというのがざらですね」と実情を明かす。

オフィスを見渡しても、一般的な編集部の壁面などに貼り付けられている「台割り」(印刷物を作成する際にページごとの内容や配置を示す設計図)は、見当たらない。「うちは保秘徹底なので、台割りも皆が見られるところにはない。進捗状況も、人の目に触れるような所には書かず、デスクが頭の中で管理できてればいいというスタンスです」と、情報管理を徹底している。

スクープは神頼み? 週刊誌記者の宿命とは

同誌編集部に所属して13年目。K氏にとって、この仕事をする上で心がけてきたことや、譲れない信条を聞くと、「立場の弱い人に寄り添うこと」と、よどみない答えが返ってきた。

「大きな組織や伝統、絶対的な権力者に事実関係を握りつぶされて、声が上げられないような立場の弱い人の声を聞いて『それっておかしいじゃないか?』と投げかけるのが、この仕事の根本にあるものだと思います。昔から正義感が強かったというより、仕事を通して、自分は実はこういう人間だったんだ、と思ったというほうが近いかもしれないです」

週刊誌記者になるための適性を聞くと、「“人”に興味がある人。結局はそこだと思います。週刊誌が新聞と違うのは、人にフォーカスした記事だというところ。事件の“構図”ではなく、事件の裏にある『どうしてこの人がここに至ってしまったんだろう』という所に興味を持てる人が、向いてると思いますね」と、週刊誌の存在意義にも触れる。

10月7日(火)に放送を開始するドラマストリーム『スクープのたまご』(TBS系)では、今回話を聞いた週刊誌編集部の舞台裏と同じように、“スクープ”が生み出されていくさまを、リアルに映し出す。

原作は、大崎梢さんの同名小説。主人公で入社2年目の信田日向子(演=奥山葵)が「週刊千石」の新人記者として、奮闘しながらも成長していく様子が描かれる。スクープの裏側で必死にもがく姿は、K氏の話とも重なる点が多い。

食事や飲み会などの誘いを断らないというマイルールのほかにも、「実は、初詣やお参りに行くと、『絶対にスクープが取れますように』とお祈りしています」とも明かしてくれたK氏。

「実際のところは貧乏性でもあるんです(笑)毎週木曜に企画を5本出さなければいけないので、とにかくそれに必死です」と、“宿命”を背負いながら、今日もスクープを追い続けている。

このニュースに関するつぶやき

  • 『たくさん宣伝してあげるからウチに文春砲を撃たないで!』っていう必死さを感じるな��(����)🤣🤣
    • イイネ!4
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