※画像はイメージです。画像生成にAIを利用しています 夏休みともなれば、世間のお父さんお母さんは、子供を連れて出かける機会が多くなります。行き先々によっても違いますが、人が多く集まるところには子供達に見せたくないモノや場面があることも少なくありません。
今回取材したエピソードは、遠方旅行には欠かせない我が国が誇る夢の超特急”新幹線”の中でおきた困惑シーンです。
◆さあ、初めての新幹線旅行!
東京から大阪へ。九月の連休を利用して、原田さん(仮名・37歳)は息子と一緒に、第二子出産のために先に帰省している妻の元へ新幹線で会いに行ったそうです。息子にとっては初めての新幹線ということもあり、胸が高鳴っていたようです。
原田さんもその期待に応えるべく、始発駅の品川駅でお弁当や、子供が大好きなお菓子を買い込み、準備万端でホームに並んでいたといいます。
「早く乗りたいね!窓から富士山見えるかな?パパ」
「見えるといいね、楽しみだね。でも、まずは席を探そうね」
他愛もない父子の会話がしばし続き、ようやく時間になりドアが開くと、迷うことなく3人席の窓側と真ん中席を目指します。原田さんは窓側に息子を座らせ、自分は中央の席へ。
発車を今か今かと待ちわびていると、発車時刻ギリギリに中年男性が慌ただしく乗り込んできたのでした。
◆ノートパソコンに映し出されたのは……
乗車してきた男性は、見るからにきちんとした身なりのサラリーマン風で、原田さんの隣の通路側の席に座るや否や、テキパキとテーブルを出してノートパソコンを広げたそうです。
「連休なのに、車内でパソコンを使って仕事なんて頭が下がりました。自分にはきっと無理ですね。動く車内では気が散りますし……」
しかし、その男性の行動は原田さんの想像とは全く違うものだったと言います。
ノートパソコンの画面に映し出されたのは、なんと水着姿の、それもかなりきわどい格好をした女性の動画だったのです。原田さんは思わず二度見してしまったといいます。
最初は気のせいかと思いましたが、目をこらして見ると、間違いなくグラビア動画、それもかなり際どい動画が次々と流れていたとのことで、原田さんは困惑してしまったそうです。
◆息子の視線と父の決意
しばらくは「見なければいい」と自分に言い聞かせ、男性の行動を放置していた原田さん。しかし、車窓からの景色に夢中になっていた息子の様子が気になり、そちらに目をやると、息子も男性のノートパソコンに気づいてしまったようでした。
チラチラと、何度も画面を盗み見ている始末です。幼いながらに、何か見てはいけないものが目に入り込んでくる、という状況に、正直戸惑っているようでした。原田さんは、必死に息子さんの気持ちをそらそうと試みたといいます。
「ねえ、大阪に着いたら何が食べたい?」
「ぼく、たこやきとお好み焼きが食べたい!」
息子と会話することで、男性の画面から注意をそらそうとしましたが、長くは続きませんでした。そして、ついに堪忍袋の緒が切れた瞬間が訪れます。男性が鑑賞している動画に、ぼかしが入っているものの、明らかに成人向けと言っても過言ではない映像が増えてきたのです。原田さんは、意を決して男性に声をかけました。
「すみません、子供もいるので露骨な動画は遠慮してもらえないでしょうかね?」
◆最後まで続く困惑、そして解放
原田さんの勇気ある一言に対し、男性は全く聞く耳を持たなかったそうです。顔を上げてニヤッと笑った後、冷たく言い放ちました。
「イヤホンもしているし、法律に触れた内容ではないですよ。観なかったらいいんじゃないですか?」
その言葉に、原田さんはただただ唖然としてしまったそうです。
「法律に触れないなら何をしたっていいって、それは少しおかしいですよね。明らかにあれはアダルトムービーでした。でも、あの”ニヤリ”とした不気味な笑顔を思い出すと、下手に口論となって息子に危害が及ぶようなことがあってはいけないと思い、関わりをもつことをやめました」
それ以降も、さまざまな動画が繰り広げられ、原田さんと息子さんはひたすら我慢を強いられる新幹線乗車となったそうです。
男性は京都で下車し、原田さん親子はようやくホッと胸をなでおろすことができたといいます。しかし、新大阪までの十数分間だけしか、安らぎの時間は手に入りませんでした。公共の場でのモラルについて、改めて考えさせられる出来事だったように思います。
<TEXT/八木正規>
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営