人間を雇うより、どれだけ安上がり? サイゼにすかいらーくも導入「配膳ロボット」の人件費効果を計算してみた

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2025年10月09日 06:00  ITmedia ビジネスオンライン

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人力に頼っていたサイゼでも、導入が始まりつつある

 すかいらーくを筆頭に、外食大手では配膳ロボットの導入が当たり前となった。人件費削減も目的の一つだが、そもそも人が足りていない状況であり、各社は労働力として活用している。焼肉業界では各社が導入し、カフェ、居酒屋と外食ではもはや当たり前の存在になりつつある。各社の導入状況と費用対効果を調べてみた。


【画像】すかいらーくやサイゼのロボット(計4枚)


●すかいらーくは7割の店舗で「猫型ロボット」を導入


 ガストやしゃぶ葉などを運営するすかいらーくホールディングス(HD)は、2021年8月に配膳ロボットの導入を開始し、現在は約2100店舗に展開。グループ全体のおよそ7割を占め、ガストではほぼ全店に導入済みだ。


 同社は2021年に新株発行で428億円を調達し、その資金を配膳ロボットやセルフレジなどのDXに充てた。配膳ロボットには中国メーカーの「BellaBot」を導入している。事業者向けECでは300万円超で販売されているものだ。


 配膳ロボットは労働力を補完しながら、「外食=きつい」というイメージの低減につながり、シニア採用が増える効果もあったという。同じファミレス業界ではゼンショー系のココスとオリーブの丘、九州地盤のジョイフルでも導入事例がある。


●ロボ導入が早かったサイゼだが……


 サイゼリヤでは、2021年2月に一部店舗でソフトバンクロボティクスの配膳ロボット「Servi」を導入した。すかいらーくよりも導入時期が早いものの、一部店舗にとどまっており実際の店舗で見かける機会は少ない。全店への導入を途中で止めたという報道も出ている。


 サイゼリヤは作業のマニュアル化を徹底しており、従業員による皿の持ち手や歩くときのルートなども決めている。時速5キロ以上の早歩きが基本であり、ロボット導入の効果が小さかったとみられる。コロナ禍辺りから国内事業の赤字を海外事業の利益で補う状況が続いたため、DXの余力もなかったのだろう。直近では国内事業の業績も改善し、新たに導入する店舗も見られ、人員確保が難しい店舗では導入が進むかもしれない。


●食べ放題業態でもロボット導入が進む


 「焼肉きんぐ」は2021年1月に配膳ロボットの導入を進めた。タッチパネルで注文するテーブルバイキング制で、飲み物も含め全料理を店員が配膳する形式のチェーン店だ。客は席を離れる必要がないため、子連れなどファミリー層を中心に支持されている。


 運営元の物語コーポレーションはテーブルバイキング制との相性が良いとして配膳ロボットを導入した。同じ系列のしゃぶしゃぶチェーン「ゆず庵」にも導入し、店員とロボットを併用している。同社が採用したのもサイゼリヤと同じServiだ。


 その他、焼肉きんぐでは「Keenbot T8」も採用。ロボットのAIカメラでトレイを認識する「物体認識機能」もあるという。1店舗当たり最大で7台を導入し、ロボット同士の連携も行う。2024年3月時点でKeenbot T8を500台以上導入し、開発元のソフトバンクロボティクスと包括的業務提携契約を締結している。


 ServiとKeenbot T8は両者とも35キロほどだが、前者は最大搭載重量が30キロであるのに対し、後者は15キロで少ない。また、後者の方が幅は10センチ小さい。Keenbot T8の方が身軽な印象だ。同業では牛角や安楽亭の店舗でも配膳ロボットの実績がある。


 なお、焼肉きんぐでは回転寿司のような「特急レーン」を一部店舗で導入している。2021年から導入を始め、2024年2月時点で13店舗まで広がっている。導入店舗では席の配置も回転寿司店と似たような構図になっているのが特徴だ。


 食べ放題形式では、ファミレスよりも配膳数が多くなる。焼肉きんぐは土日だと予約が取れないほどの盛況ぶりで、移動速度の遅い配膳ロボットよりも特急レーンの方がより効率的と考えられる。


●店員「0.5人分」の労働力で計算すると……


 配膳ロボットは、ここまで触れた業態以外にフルサービス型のカフェや居酒屋などでも導入が進む。例えば、ラーメン店では幸楽苑や北陸地盤の8番らーめんで実績があるが、日高屋や餃子の王将など狭い都市部の店舗では導入実績がない。郊外型店舗など比較的広い店が中心となりそうだ。


 配膳ロボットは従業員数で0.5人分に相当すると言われている。配膳と下げ膳しかできないため1人分ではないが、負担が減る分、従業員は他席への配膳や他業務に従事できる。他メディアの取材によると、すかいらーくHDでは導入によりスタッフの歩行数が4割減ったという。


 コストが1台300万円・耐用年数5年と想定すると、1カ月当たりの費用は5万円だ。電気代を含んでも、1日につき2000円弱のコストで0.5人の従業員を働かせている計算になる。もし0.5人の従業員を1日雇った場合、時給1200円・営業時間12時間と仮定して7200円であり、月に15万円ほどの人件費削減効果を期待できる。


 理想論に過ぎないが、社会保障費分も考慮すると人件費より安いことは明らかである。資金に余力のある大手を中心に、ロボットを活用した自動化は今後も進みそうだ。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



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