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2025年9月14日、アメリカのマサチューセッツ州サマービルで、少し風変わりな選挙が行われました。候補者はなんと、地域住民が飼う猫たち。「Cat Mayor Election(ネコ市長選挙)」と名づけられたこのユーモラスなイベントの背後には、地域の人々の絆を深めたいという温かい思いがありました。
数カ月前、サマービルでは地域の自転車専用道「Community Path」がちょっとした話題になっていました。
きっかけは、住民マロリー・ビセットさんの愛猫ベリー(3歳)。ベリーは自由気ままに外を歩く猫で、よくCommunity Path沿いを散歩していたため、通行人たちに迷い猫と勘違いされることがたびたびありました。
誤解を解くため、飼い主のビセットさんは「この子は地域の“自転車道市長”です」と書かれたポスターを掲示。するとそれがきっかけで、「うちの猫だって市長に立候補できるはず」と他の飼い主たちが次々と声を上げ、思わぬ“選挙ブーム”が巻き起こりました。
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この冗談半分のやり取りは、やがて本格的な地域アートプロジェクトへと発展。なんと70匹以上の猫たちが「候補者」として名乗りを上げ、Community Path沿いには手作りの選挙ポスターがずらりと並びました。
なかには犬やカメ、鳥、モルモット、さらにはヘビといった“異種候補”の姿もあり、街のいたるところで笑いと話題が絶えませんでした。選挙期間中はSNSでも盛り上がりを見せ、地域住民たちはお気に入りの候補に投票したり、応援コメントを投稿したりと、熱気に包まれました。
その一方で、人気候補ベリーのポスターが盗まれる事件が起きるなど、ちょっとした“選挙スキャンダル”まで発生。それでも、最後まで明るく楽しい雰囲気のまま選挙戦は続きました。
投票が締め切られたのは9月5日。そして9月14日、ついに結果が発表されました。見事6000票以上を獲得して“自転車道市長”の座に就いたのは、9歳の黒猫ミネルヴァ(Minerva)でした。
彼女のポスターには、ただ一言「Crime.(犯罪)」という挑発的なスローガンのみが掲げられていました。しかもミネルヴァは完全な室内飼いで、Community Pathに出たことは一度もないのだとか。それでも、そのミステリアスな存在感と独特のユーモアが住民の心をつかみ、圧倒的な支持を集めました。
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飼い主は冗談まじりに「ミネルヴァ本人は外に出ないけど、彼女の“手下たち”が代わりに道を見張っているの」とコメント。この発言もSNSで話題となり、イベントの人気に拍車をかけました。
今回の猫市長選を主催したのは、サマービルの自転車道「Community Path」を管理するボランティア団体「Community Path Coalition(コミュニティ・パス・コアリション)」です。
同団体によると、このイベントの目的は“地域の公共スペースへの関心を高め、住民同士を楽しくつなぐこと”でした。
結果として、この猫市長選は地域の人々に笑いと会話をもたらし、Community Pathへの愛着を再確認するきっかけとなりました。メディアでは「この選挙は、住民を楽しく、軽やかに結びつけた」と報じられました。
ユーモアを通じて人と人がつながる──その小さな出来事が、サマービルという街の温かさを象徴する物語となりました。ミネルヴァの勝利は、政治でもニュースでもない「日常の中にある幸せ」を思い出させてくれたのです。
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