
ある日私が実家を訪れると、ユウカも来ていました。リビングには毛糸や手芸雑誌が置かれています。母は最近マフラーを編みはじめました。趣味を楽しむだけでなく、地域の集まりに顔を出して交流を広げているようです。
占い師に心酔していた頃とは違って、母の表情はずいぶん穏やかです。前世の因果とか起きるかもしれない災いとか、そういう類のことはもう考えていない様子です。今は目の前にある日常やそのなかで出会う人々を大切にしているのでしょう。
電話占いに注ぎ込んだ大金は決して戻らないけれど……。母の表情には、以前のような寂しさはもうありません。ふと電話占いを頼りそうになったときは、私たちの顔を思い浮かべてくれるそうです。母の穏やかな笑顔を見て、私たちは心底ホッとしました。
最近の母は私たちの勧めもあり、趣味を楽しんだり新しい交流の場に出かけたりしています。電話越しでないリアルな繋がりが、きっと母の心を少しずつ満たしてくれるはず。もちろん私たちもそのための努力は惜しみません。これからも力を合わせて母を支えていきたいと思います。
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