最高裁=東京都千代田区 自動車事故で死亡した男性が加入していた人身傷害保険の請求権が相続財産に当たるかどうかが争われた訴訟の上告審判決が30日、最高裁第1小法廷(堺徹裁判長)であった。同小法廷は保険約款条項などから「相続財産に属する」と判断し、三井住友海上火災保険側の上告を棄却した。保険金の支払いを命じた一、二審判決が確定した。
損害保険各社は同様の約款を設けているとみられ、損保業界の保険金支払い判断に影響を及ぼす可能性がある。
判決などによると、男性は2020年1月、自動車で自損事故を起こし死亡。加入していた人身傷害保険の保険金支払い対象となったが、男性の子らはいずれも相続を放棄した。男性の母が相続人として、保険金3000万円の支払いを求めて提訴したが、訴訟中に死亡した。男性の兄ら2人が承継し、それぞれ1500万円を請求していた。
同小法廷は、三井住友海上の約款では保険金は被った損害によって生じた不足分への支払いが目的だと指摘。「保険金の請求権は被保険者に発生し、相続財産に属すると解するのが相当」と結論付けた。
東京地裁は23年2月、兄らの訴えを認め、同社に計約2200万円の支払いを命令。二審東京高裁も同年10月、一審判決を支持し、同社側控訴を棄却していた。
同社は判決を受け、「真摯(しんし)に受け止め、今後も公正かつ適切な保険金支払いに努める」とコメントした。