男性受刑者の死亡を巡る訴訟の判決で、記者会見する男性の母親=30日午後、東京都千代田区 川越少年刑務所さいたま拘置支所(さいたま市)に収容されていた男性受刑者=当時(23)=が入院後に死亡したのは、拘置支所が適切な医療をしなかったためだとして、遺族らが国に計約7700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、東京地裁であった。森健二裁判長は死亡との因果関係は否定したが、「医療は著しく不適切だった」として150万円の賠償を命じた。
判決によると、男性は強盗致傷罪などで服役中の2020年3月、外部の医師の診断で精巣がんと判明した。摘出手術を受けたが、全身に転移したため刑の執行が停止され、民間の病院に入院後の21年7月に死亡した。がんが判明する2カ月前の拘置支所での診察が適切だったかどうかが争われた。
森裁判長は、男性が陰嚢(いんのう)の腫れを訴えた20年1月の診察時、拘置支所の医師は速やかにエコー検査をすることが強く求められる状況だったと指摘。「わずかな注意をすればエコー検査の必要性を容易に認識できた」として、不適切な医療行為だったと判断した。
判決後に都内で記者会見した男性の母(50)は「刑務所に入っている人が今後ちゃんとした医療が受けられるようになれば」と語った。
川越少年刑務所の話 判決内容を精査し、関係機関と協議して適切に対応する。