 捕獲されたホッキョククジラ=2017年9月、米アラスカ州カクトビック(EPA時事)
捕獲されたホッキョククジラ=2017年9月、米アラスカ州カクトビック(EPA時事) 哺乳類で最も長寿とみられるホッキョククジラは、細胞核に2本ある鎖状のDNAが両方切断された場合に備え、修復するたんぱく質が非常に多いことが分かった。2本鎖の切断はがん化につながるため、小まめな修復が長寿の秘訣(ひけつ)と考えられる。米ロチェスター大などの研究チームが主役のたんぱく質「CIRBP」を特定し、30日、英科学誌ネイチャー電子版に発表した。
        
    
         CIRBPを生み出す遺伝子をショウジョウバエで多く働かせたところ、通常より寿命が延びたほか、強いX線を照射してDNAの2本鎖を切断する実験で生存率が大幅に向上した。CIRBPはヒトにもあるが、構成するアミノ酸が一部異なる。研究チームはヒトの細胞で働きを高める方法がないか、検討しているという。
        
    
         ホッキョククジラは北極海やその周辺に生息し、動物プランクトンなどを口内の「ひげ板」でこし取って食べる。体重80トン以上に成長する個体があり、寿命は最長200歳超と推定されている。膨大な数の細胞の分裂・増殖を長年続けているのに、なぜ損傷したDNAによるがんが多発しないのか、謎だった。
        
    
         研究チームは米アラスカ州北部沿岸で捕獲された個体から皮膚などの線維芽細胞を採取し、他の哺乳類に比べてCIRBPが非常に多いことを発見した。
        
    
         鎖状のDNAは2本に同じ遺伝子の配列があり、片方が切れた場合はもう一方の配列で簡単に修復できる。しかし、2本とも切れた場合は遺伝子の働きに異常が生じ、がん化のリスクが高まる。
        
        
        
    
         この場合、細胞ごと死滅させて除去する方法もあり、この仕組みをつかさどる「p53」はがん抑制遺伝子として知られる。寿命がヒト並みに長いゾウでは、p53が活発に働いていることが近年判明した。