撮影させてくれた2人2025年の渋谷ハロウィンは、大粒の雨に見舞われた。
毎年厳重な警備が敷かれる渋谷ハロウィン。渋谷区が定めた今年のスローガンは「禁止だよ! 迷惑ハロウィーン」。渋谷駅前スクランブル交差点には例年通り多くの警備員と警察官を配置し、ハチ公像は背の高い覆いで囲うという対策が施された。
雨天と厳重な警備体制。そんな2025年10月31日の渋谷駅周辺には、どのような人が顔を出していたのか。その様子の一部を紹介していきたい。
◆去年と同様の「宮下公園大迂回ルート」
筆者がJR渋谷駅に到着したのは、20時30分頃のこと。ハチ公口から直接スクランブル交差点に出よう……と考えたが、今年もハチ公口には通行規制がかかっていた。完全閉鎖というわけではないものの、駅を出ようとする利用者は例外なく高架橋の向こう側へ誘導された。直接ハチ公広場の方向に行くことができない、ということだ。
そして、ここからは去年と同様の「宮下公園大迂回ルート」である。高架下をくぐるには宮下公園まで歩くしかなく、そこからマラソンの折り返し地点のように反転してスクランブル交差点を目指す……という手順だ。
その上、今年はかなり強い雨が降っている。多くの人が窮屈そうに傘を差していた。「多くの人」というのは、渋谷を訪れた人の中には傘ではなくレインウェアで対処していた場合も少なくなかったための表現である。
モンベルやコロンビアのレインウェア上下を着て傘は差していない、という姿の外国人旅行者が至る所に。彼らにとっては、渋谷ハロウィンの散策はトレッキング感覚だったのかもしれない。
◆今年は「ライトコスプレイヤー」が大半
それでも仮装をして歩く人は、やはり外国人旅行者を中心に数多くいたことはここに記載しておく必要がある。
傘を差しながら、あるいは透明のレインコートを着ながらも気合いの入った仮装をしている人も頻繁に見かけることができた。その場で立ち止まって写真撮影を始め、警察官に見つかって移動を促される――という光景もあちこちで繰り広げられている。ハロウィン当日のスクランブル交差点周辺や渋谷センター街では、滞留を作らせないため歩道での立ち止まりが禁止されている。
そうした事情もあったので、今回撮影できたコスプレイヤーの写真はかなり限られてしまった。それでも、当日の渋谷の様子を伝えるには十分な量は撮影できたはずだ。
「ガチ」のコスプレイヤーもいれば、簡単な仮面や装飾のついたカチューシャのみで済ませる外国人旅行者・就労者も。より正確に書けば、今年の渋谷ハロウィンはちょっとしたパーツを身に着けるだけで済ませる「ライトコスプレイヤー」が大半だった。
◆ライブ配信を行うYouTuberも!
2018年の渋谷ハロウィンは、「軽トラがひっくり返されたハロウィン」として全国的な話題になってしまった。
そこから2019年、2020年と時を経ると、今度は渋谷ハロウィンが「動画配信者がチャンネル登録者数を増やす絶好の機会」と見なされ、様々な配信者がハチ公前に訪れるようになった。
その中には「迷惑系」と呼ばれる配信者も。今でも「渋谷ハロウィン=迷惑系YouTuber」というイメージを持っている人もいるだろう。
が、YouTubeが迷惑系配信者に対して厳格な規約を導入するようになると、そうした人が視聴回数やチャンネル登録者数目当てに渋谷で騒動を起こすということはなくなった。いや、そもそも迷惑系配信者が渋谷ハロウィンに出没することがなくなったと表現するべきか。
今年の渋谷ハロウィンに顔を出していた動画配信者は、いずれも周囲の人々や環境に対してフレンドリーな配信活動を行うタイプの人ばかりだったと言える。今回筆者が出くわしたのは、YouTubeにチャンネルを持つ「渋沢内閣若手チャンネル」さん。モナリザのコスプレをしながらライブ配信を行っていた。
彼は日本人に対しては丁寧な日本語で、外国人に対しては明るい英語で話しかける爽やかな好青年である。渋谷ハロウィンは軽トラ横転騒動から毎年のように「今年も荒れるのか?」ということばかりが話題になってしまうが、実際は本来の意味で「明るく楽しい」チャンネルとその運営者が、渋谷の様子を配信し続けてくれたのだ。
◆雨に濡れる“DJポリス”
22時に差しかかる頃、雨足は一層強くなった。
もはや傘だけでは身を守ることができないほどで、筆者の背負っていたバックパックも仲間でずぶ濡れ。そのような状況のため、雨宿りのできる渋谷マークシティはあたかもコスプレ撮影会場のような状態になっていた。
しかし、そこへ一時避難できるのはあくまでの一般人のみ。警察官や警備員は、雨宿りなどできるはずもない。見た目にも頼りない透明のレインコートを着て、大雨の最中の職務を遂行していた。
毎年恒例の“DJポリス”まで雨に濡れている。スクランブル交差点にも去年までと同様、大勢の警察官が交通整理を実施していた。この献身ぶりに対して、筆者は尊敬と感謝の念を抱かずにはいられない。
区の発表によると、渋谷ハロウィンを訪れた人の数は去年より大幅に減ったという。やはり雨が大きく影響したようだ。が、それでも良い意味での賑わいが2025年の渋谷ハロウィンにはあったことを、ここで強調しておきたい。
<取材・文・撮影/澤田真一>
【澤田真一】
ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジー、ガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー』