RPA(ロボットによる業務自動化)や人材育成ツールを手掛けるFCE<9564.T>が、AI(人工知能)エージェントの領域に参入した。既存事業で積み上げたコンサルティングのノウハウも駆使し、成長市場を取り込む構え。このほど専門部署も立ち上げ、次世代プラットフォーム「AI OMNI AGENT(オムニエージェント)」を投入した。
        
    
        (イメ−ジ:123RF)
ジーニーと強力連携
 同社はRPAで顧客の業務効率改善を支援する「RPA Robo−Pat DX(RPAロボパット)」を展開。顧客自身が必要に応じて機能を設計できる操作性や手軽な料金、さらには追加の費用負担なしで運用をサポートする伴走型のサービスが支持され契約社数を順調に伸ばしている。また、社員研修を支える人材育成プラットフォーム「Smart Boarding(スマートボーディング)」も好調だ。
        
    
         こうした中、一段の収益拡大へ向けてAIエージェントを新たな柱に打ち立てる。AIエージェントはプログラミングで定められた業務をこなす自動化ソフトとは異なり、学習を通じて人間の指示がなくても自ら考え、必要な作業を実行するテクノロジー。ジーニー<6562.T>グループとの資本・業務提携を通じ、同社の傘下でAI事業を手掛けるJAPAN AI社(東京都新宿区)から技術提供を受ける。
        
    
         AI OMNI AGENTは人間のように「理解」「判断」「実行」のプロセスをこなす「AI社員」というコンセプト。営業から人事、経理まで幅広い部門で必要とされるタスクを身に着ける。AIエージェントは100種類以上の標準搭載されているほか、必要に応じて専門知識のいらないノーコードで独自に作成することもできる。
        
    
         このほど発足したFCEの「AIソリューション事業本部」を統括する尾上幸裕取締役兼上級執行役員は、「AIエージェントで先行するジーニーグループの技術力はもちろん、人材投資を含めたAI分野に対する同社の本気度や、こちらの戦略に素早く対応できる柔軟性が資本・業務提携にまで踏み込む決め手となった」と話す。AI OMNI AGENTはまず中堅以上の企業をターゲットに、顧客への試験導入を始めていく。
        
        
        
    
        AI市場で早期に事業立ち上げへ
 日本企業のAI導入率は昨年末時点で13%程度に達したとみられている。野村総合研究所はこの割合が2030年には過半を超え、市場規模はおよそ3.5兆円に膨らむと予想している。高成長が期待される市場は大きな商機を秘める。
        
    
         一方で現状はバブル的な要素もあり、必ずしもサービス価格が適正ではない例も目立つ。また、用途に応じて複数の課金ツールを使い分けることで費用負担が重くなるケースもみられるが、AI OMNI AGENTは上位プランでも1社当たりのIDが月額20万円(社員IDは別料金)と導入しやすく、多様な目的に対応するプラットフォーム。FCEは既存サービスで培ったコンサル力も活かし、潜在する顧客のAI代行ニーズを洗い出す段階からサポートできる点も強みだ。
        
    
         AIソリューション事業本部の数値目標は詰めの段階にあるが、尾上取締役は「AI市場の拡大は大きなチャンスと捉えており、できるだけ早期に事業を立ち上げられるよう、リソースを積極的に投下していく」としている。また同社は、「プロンプト」と呼ばれる、生成AIを活用するための指示や命令文をテンプレート化し、社内・チームで共有する「FCEプロンプトゲート」のサービスも展開している。