ほんの数ミリなのに気になる“ささくれ” 空気が乾燥する冬。気づけば指先に“ささくれ”ができていて、地味な痛みにイライラすることも増えてきた。さらに、水仕事などで“ひび割れ”や“あかぎれ”までできてしまうと、痛みだけでなく不便さも倍増。冬でも美しく、健康な手肌を守るには? トラブルの原因やケアについて、クリニックフォア監修医兼ナチュラルスキンクリニック院長の皮膚科医・圓山尚先生に聞いた。
【一覧】インフルかも…?飲んでいい薬はコレ!■引っ張ってはいけない“ささくれ”、悪化で「指から脇の下のリンパ節に向かって赤い線が…」
――この季節、気がつくと“ささくれ”ができていて。なぜいきなりできるのでしょう? 原因は?
「原因は2つあります。1つは、手に繰り返し摩擦などの物理的刺激が加わることで、皮膚が硬くなり、めくれてしまうこと。もう1つは乾燥です。冬のシーズンだけでなく、頻繁に手を洗ったりアルコール消毒をこまめに行ったりすることで手は水分や皮脂が奪われて乾燥し、ささくれができる原因となります」
――ささくれができたときはどのような対処がいいのでしょうか? つい引っ張ってしまうこともあります。
「僕もたまにやってしまうのですが(笑)、無理に引っ張って剥がすのは良くありません。ただし、そのまま放置してしまうと何かに引っかかった拍子などに余計にめくれてしまうこともあります。そのため、ささくれの根元をハサミで切り、ワセリンやハンドクリームなどの保湿クリームを塗って、絆創膏で保護するのがおすすめです。ただ、絆創膏は防水タイプでないと、手を洗った際などに濡れてふやけてしまい、雑菌が繁殖する原因になるため、防水タイプの絆創膏をお持ちでない場合は保湿クリームで保護するだけでもいいでしょう」
――たかがささくれ…と簡単に考えてしまいがちですが、場合によっては悪化することもあるのでしょうか?
「傷口からばい菌が入り込むことで爪の周りに炎症が起き、爪周囲炎(そうしゅういえん)へと悪化することがあります。爪の周囲の痛み、発赤、腫れがみられ、症状が進行すると指の横に黄緑色のような膿のかたまりができ、スマートフォンをタップできなくなるほど指がパンパンに腫れてしまうことがあります。さらに悪化すると、リンパ管炎へ進行する可能性もあります。指から脇の下のリンパ節に向かって赤い線が現れるのが特徴で、高熱やだるさなどの全身症状が伴い、リンパ節が腫れて痛みを感じることがあります」
――それは驚きますね。ひどくなってしまった時は、皮膚科ではどのような治療をするのですか?
「膿がたまっている場合には、切開して膿を出して、塗り薬や抗生剤を処方します」
――寒くなるとささくれだけでなく、あかぎれ、ひび割れなどもできます。それぞれ原因は違いますか?
「どちらも乾燥が原因です。植物の葉っぱをイメージしていただくとわかりやすいのですが、水分を蓄えた瑞々しい葉は曲げてもしなりますが、乾燥して茶色くなった葉は柔軟性がなく、曲げるとバラバラに崩れてしまいますよね。皮膚でも同じことが起きるんです。人間の皮膚は本来水分を保てる構造になっていますが、乾燥する季節は肌表面の水分が蒸発し、皮膚の柔軟性が失われます。その状態で刺激を受けると、炎症を起こして亀裂が生じ、ひび割れとなってしまいます。さらに乾燥が進むと、亀裂が深くなり、あかぎれとなります」
――あかぎれやひび割れ、できやすい人とできにくい人がいるように思いますが。
「あかぎれやひび割れの原因には、遺伝的要因と環境的要因があります。遺伝的要因では、アトピー素因を持つ方や、乾燥肌の人はなりやすいと言われています。環境的要因では、手を洗う機会や水仕事が多い方がなりやすく、特に洗剤をよく使う飲食関係の方、アルコール消毒をこまめに行う医療従事者の方などは、手の水分や皮脂が奪われやすく、乾燥が進むことで症状が現れやすくなります」
――どのようにケアしたらよいのでしょう?
「皮膚の表面で、うるおいを閉じ込めてバリア機能を果たしているのが皮脂なのですが、乾燥すると皮脂が失われがちになるので、クリームなどを塗って保湿し、できるだけ乾燥させないことが大切です。どうしても頻繁に手洗いや消毒をしなければいけないときは、手袋を使うことをおすすめします」
――あかぎれやひび割れでは、あまり皮膚科を受診するイメージがないのですが。受診してもよいのでしょうか?
「もちろん受診していただけます。あかぎれやひび割れは、小さな傷から細菌が入りこむと炎症を起こすこともありますので、通院時間を取れず後回しにしてしまう際には、待ち時間なく自宅でも受診ができるオンライン診療の活用もおすすめです。症状に応じて、保湿剤やステロイド外用薬など炎症を抑える薬を処方します。患部に強い痛みを感じる、炎症で腫れがひどいといった状態の場合は、医療機関での受診をおすすめします」
――これから手肌トラブルが増える季節。最後に注意点やケアのアドバイスをお願いします。
「乾燥しがちな今の季節、大切なのはとにかく保湿です。とくにお風呂上りは皮脂が洗い流れて肌の表面の水分が蒸発しやすい状態になっているので、お風呂から上がったらすぐにクリームなどで保湿すると良いでしょう」
【監修】
圓山 尚(えんやまたかし)
ナチュラルスキンクリニック院長兼クリニックフォア監修医。金沢医科大学医学部卒業後、日本医科大学附属病院皮膚科に入局し皮膚科・皮膚外科・レーザーを中心とした診療を行う。その後、湘南美容クリニックでの勤務を経て、2019年にクリニックフォア新橋院を開院。現在はクリニックフォア監修医と永福スキンクリニック(現ナチュラルスキンクリニック)の院長を務め、”美のかかりつけ医”として活動している。
(文:河上いつ子)