ヘルムート・マルコ(レッドブル・モータースポーツ・アドバイザー) レッドブル・レーシングが、この2025年の終わりに大きな変化を迎えるかもしれない。レッドブルでモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコが82歳でついにF1とチームから離れる可能性がある。
また、マックス・フェルスタッペンのレースエンジニアであるジャンピエロ・ランビアーゼは、ミルトン・キーンズでの仕事は続けるものの、来季2026年はグランプリへの遠征を行わなくなる予定だ。ランビアーゼはこの変更を個人的な理由で要求していた。
■誤った批判が誹謗中傷の火種に
レッドブルの組織におけるマルコの役割は、約30年前に確立された。故ディートリッヒ・マテシッツに、モータースポーツへの投資を促した立役者となったのだ。オーストリアの富豪であるマテシッツの存命中、マルコの地位は“聖域”のようなものであり、マルコに対するマテシッツの信頼と信念は決して揺るがなかった。
前チーム代表のクリスチャン・ホーナーは、マルコをレッドブルと現在レーシングブルズの名で戦っているチームから追い出そうと懸命に努力したが、ホーナーの試みは失敗に終わり、今年7月初めにレッドブルの新経営陣によって解雇されたのはホーナーのほうだった。
ホーナーはレッドブルのタイ人株主に対して影響力を持っていたため、彼がチームのCEO最高経営責任者兼代表を務めた期間はマルコの地位が著しく低下していたが、ホーナーが解雇されると、マルコは同社の若手ドライバープログラムの実権を握り、ホーナーに奪われた地位を取り戻した。
しかし新たにチーム代表に就いたローレン・メキースが、マルコが望むままに行動し発言することに満足しているように見えたのに対し、上層部のオリバー・ミンツラフは、しばしば会社と“目覚めた世代”をトラブルに巻き込むマルコの振る舞いに辟易していた。
カタールGPの終盤、マルコはアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)に対し、驚くべき攻撃をした。メルセデスのルーキードライバーが、フェルスタッペンとチャンピオンシップを争うランド・ノリス(マクラーレン)を故意に先行させたという、間違った批判を行ったのだ。
アントネッリは実際には自分のポジションを守ろうとするなかでコースアウトしたにすぎなかったが、後に誤りを認め撤回されることとなったマルコの発言も手伝い、一部のソーシャルメディアでアントネッリに対する誹謗中傷が目立つこととなった。
レッドブルの情報筋によると、これがミンツラフと会社のトップの経営陣にとっての転機となり、マルコはシーズン最後のグランプリ前に契約は更新されないことを告げられたという。
マルコは明言はしなかったが、アブダビGP後に自身の地位について「疑いの余地はない。話し合いをして、どうするか考える」と述べ、シーズン終了後にレッドブル・レーシングを離れる可能性を示唆した。
80歳を超えるマルコは、自身の将来を自分でコントロールしているかのように見せ、議論されているのは「複雑に絡み合ったさまざまなことだ。ひと晩考えてから判断するべきだろう」と語った。
しかしメキースは、マルコの将来について次のように示唆した。「ヘルムートは今年、我々が状況を好転させるのに信じられないほど協力的だった。彼と経営陣にとって、この1年でかなり難しい決断がいくつかあったのは明らかだし、もちろん常にそうだった」
「F1は静的な環境ではない。常に組織を調整していく。それは技術面にもスポーツ面にも当てはまる。運営方法の改善を常に検討するのはごく普通のことだ」と述べ、さらに「ヘルムートに限って言っているわけではないが、一般的に我々は常に互いに挑戦し合い、どんなに小さな協力体制であっても次のステップを模索する環境にあると言える」と警告した。
しかしながら、この件に関するメキースの最後の言葉は、すでにマルコへ別れを告げるようにも聞こえた。
「シーズン中盤は難しい状況に見えたが、ヘルムートには感謝しかない。彼が我々に与えてくれたサポートによって、その状況をうまく機能させることができた」と締めくくったのだ。
[オートスポーツweb 2025年12月09日]